救う者と救われるもの 第十九話

「失礼します、叔父上」
考え事をしていたルーク達もすぐに陛下の部屋の前にたどり着き、部屋の前にいた兵士に入室の許可をとってもらい陛下の私室に入る。挨拶をされた陛下は心配そうな顔でルークに近付き両肩を掴む。
「ルーク、無事でよかった・・・外殻大地の降下に関しては聞いてはいたが、まさか魔界から障気が消えているとは思わなかった。中和装置を積んでタルタロスで地核に飛び込んだかと思ったが、タルタロスを持っていないルーク達ではそれも叶わぬ。もしや超振動で障気を中和したのではと思っていたのだが・・・無事でよかった・・・」
頭を下げて身を案じた声が滲み出て来た事に、陛下の肩を同じように掴みルークは申し訳なさそうに顔を上げさせる。
「すみません・・・心配をかけてしまって。ローレライの協力のおかげで無事、超振動を使っても死ぬ事なく俺はこの場にいれています。このことを報告しなかったのはローレライからの協力が可能だというのを前にバチカルに来た時には知らなくて・・・」
「・・・うむ。何はともあれ、ルークが無事でよかった。これでナタリアも悲しまずに済むな」
ルークの顔と声から深い事情があると察した陛下は安心した事で頬を緩ませ、笑顔になる。ナタリアと出て質問をしようかと一瞬口をだそうか戸惑うルーク。
「陛下、よろしいでしょうか?」
その間にジューダスが待っていたように声を上げ、陛下の視線を持っていく。ルークは出鼻をくじかれた形ではあるが後で聞こうとジューダスの質問に注目する。
「うむ、どうした?」
「外殻大地の降下を終えた今、残る問題はヴァンと残る六神将達になります。我々はこれから急いでベルケンドに向かいますが、ベルケンドに異変が起きているかどうかの報告はないでしょうか?」
ヴァンと聞きルークとシンク達も自然と表情が真面目に引き締まる。これで終わりではない、むしろヴァンが心変わりをしない限りは終わりなど訪れない。
その質問は避けては通れない障壁、固唾を飲んで五人が答えを待つ中陛下はあっさり答える。
「あぁ、心配することはない。ヴァンは既に捕縛してある」
「・・・え?」
キョトンとした声がルークから出るが、呆然としているのはシンク達も同様。信じられないというのが五人全員の共通した物だ。
「陛下・・・それは本当の事なのですか?捕縛したというのは・・・」
たまらずジューダスが抑え切れず疑問を口にする。不自然でない程度の隔離だけをジューダスは頼んだ、それは外殻大地の降下を優先したかったからであったが、隔離に留めた一因はヴァン達を止められる程の実力を持った人員が限られていたからだ。それこそルーク達か、かつて共に旅をしたティア達くらいしか人員はすぐに思い浮かばない。
自分達がヴァン達を止める、過去を知らないティア達を巻き込まないように身を張ろうとしていた矢先に陛下の言葉。



無理があったのでは?多大な犠牲が生じたのでは?様々な考えに至っている五人の顔に、陛下ははっとしたように表情を変えて声を出す。
「あぁすまない。・・・思い返せばルーク達は聞いてはいなかったな、ナタリア達の事を」
「「「「?」」」」
そこで何故ナタリアの名が?核心を得ない言い方にルーク達の眉間にシワが寄っていく。






・・・望んだ物、だが望んで手に入らなかった物。それを過去としてまでルークは孤独になろうと、改善を目指し戻って来た。その悲しい決断に到らなければならなかったルーク。
「ヴァン達はナタリア達が捕らえた。ルーク、お前と同じくエルドラントでヴァン達を倒したあの時の彼らがな」
だからこそ、その事実と言葉を受け止めるにはルークの心があまりにも混乱していた。



「え・・・?」







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