救う者と救われるもの 第十八話

爆発するかのように一気に第七音素の光がレムの塔の頂上から空に広がる。






超振動が使われた・・・その事実に1番最初に気付いたのは、アルビオールにて障気で紫に染め上がっていた空にいたシンク達だった。
「・・・ねぇ、見て!空が!」
「うん・・・分かるよ。一気に空が・・・青く染まった」
外の景色を絶えず見ていたフローリアンが景色の変化に気付き立ち上がりながら声を上げ、その声にシンクがゆっくり自らの目で見えた事実をフローリアンに述べる。
紫の空間が一転して何もない澄み切った透明な空間に一気に変化した。一瞬の間に起きた出来事にフローリアンは何事かを理解出来ずに空の青さに驚いていたが、シンクはこれこそが超振動が使われた結果なのだと理解していた為成功を確信していた。
「・・・ルーク、成功した、ですか?」
「あぁこの空がその証拠さ、障気の中和には成功したよ」
だからこそアリエッタの恐る恐るといった確認にシンクは断言する、ルークの大願が成就したと。その言葉にフローリアン・アリエッタともに、プルプル震えながら下を向き跳ね上がるように飛び上がる。
「「やったぁ~っ(やりましたっ)!」」
同時に出された喜びの声とともに、最高の笑顔を二人は覗かせる。シンクはそんな二人を見て、満更でもないという笑みを口元に浮かばせる。
「終わったんですよね、ルークさん達!なら今からすぐに迎えに行きましょう!」
世紀の一瞬に二人に感化されたのか、ノエルもそれは嬉しそうに顔を綻ばせ後ろを振り向きながら行こうと言う。聞いてはいるものの既に操縦桿をレムの塔の方に向けているノエルだったが、二人は即座に
「「うん(はい)!」」
と答えを返す。聞くまでもなかった質問の答えをいただくと、ノエルは一気にアルビオールを加速させレムの塔ヘ進路を取った。










・・・光も収まり障気の中和を成し遂げた二人のいる頂上、ルークは力を使い終えた瞬間糸の切れた人形のように床ヘと腰からへたりこむ。そしてそのまま寝そべると、自らの左手を顔の前に持ってくる。
「・・・透けなかった。って事は乖離はしてない、んだよな?」
自問するように出た言葉にローレライが答える。
『あぁそうだ。自信を持っていい、お前は乖離に脅かされいつ死ぬかを怯える事はないんだ』
「そっか・・・ありがとう、ローレライ・・・」
前置きがあったとはいっても、実際に自分の体が消える心配が無くなった事にルークは感謝せずにいられず右手を左手に持って行き、祈るように目を閉じる。
・・・数秒程そんな時間が経つと、ルークは手を解いて目を開けると上体を起こす。
「・・・これで外殻大地の降下も終えたし、障気の中和も終わった。後はヴァン師匠を止めれば・・・」
「あぁ、そこで惑星の危険は去る・・・後はモースが預言を考え直して見れるようになればいいが、それはバチカルに戻った時に判断するしかない」
「うん・・・」
立ったままルークの上からジューダスが出した二つの問題に直面し、ルークは声を落とす。二人からすればまだ捨て置けないのがヴァンとモース、特にヴァンに関してはほぼ隔離のような扱いを取っていたためになによりも早く解決したい問題へと今は成り代わっていた。
「・・・とりあえずバチカルに一度戻るぞ。陛下に障気を中和したことを報告してからヴァン達を止めに行く。そうすれば後は・・・預言を廃止する事をキムラスカ・マルクト・ダアトの三国協議の元で話し合うだけだ」
「・・・後少しだな」
近くなった終焉を前に、ルークは立ち上がりローレライの鍵を引き抜き鞘に納める。
「だが今日は流石に急ぎすぎた。ノエル達が迎えに来たらケセドニア辺りに飛んでもらって休むぞ。無理をさせたからな、ノエルには」
「うん、そうしよう」
だが急いでバチカルに向かうというのは強行軍で疲れが出るであろうノエルを考えれば、疲れが出ても全くおかしくない。自然と遠く大地が下りてくる空を見上げながら、ジューダスの提案にルークは賛成を返した。



環境が違うせいか、遠く覗く青空を見ても前ほど生きているという実感を感じれない。不思議な思いをしながらアルビオールが到着するまでの間、ルークはジューダスと共に空を眺め佇んでいた。










交錯を免れていた面々



互いに知らぬ、互いに思わぬ行為を行って来た



かけらを補い合うようはめられてきたパズルは、接触の時に近付く。






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