救う者と救われるもの 第十八話

ルークから見ればそのジューダスの行動は大きな励みだった。確かにジューダスは超振動を使えない・・・だがルークには隣に温もりを感じ取る事が出来る。ティア達と比較するわけではないが、ルークは自分を想ってくれるその行動に確かに救われていた。
(ホントにありがとう、ジューダス・・・俺、ジューダスがいなかったらここまで出来なかったかもしれない。感謝してもしきれない・・・)
真面目に引き締めたはずの口元が緩むのをルークは一生懸命に抑えている。



・・・最高の時を作る時に不謹慎かもしれない、だがそれでも二人の間に産まれた縁はこの緊迫した空気の中でもそれを凌駕するような強い物へと成長していった。現に二人の雰囲気は程よく和らぎ、いい意味で緊張がなくなっている。



・・・覚悟は決まった。自らの顔を崩さない内にと添えられたジューダスの右手を一緒に持ち上げるように、左手でルークはローレライの鍵を引き上げる。
「ローレライ!俺に・・・第七音素をくれ!」
レプリカの人達を犠牲にした時の悲しみを込めた声ではなく、確固とした力強い声でローレライに力を貸してくれと言いながら、高く持ち上げたローレライの鍵をレムの塔へと突き刺すように勢いよく下ろす。






‘ガッ!’
「うぁぁぁぁぁぁっ!」
レムの塔に突き刺さったローレライの鍵を中心として第七音素の光が強く、強く収束していく。力の制御をしているルークは叫び声を上げながら、超振動を使う。



「・・・よし、いいぞ。ルーク、ローレライ。第七音素はどんどん集まっている」
ルークと同じく光の中心にいるジューダスは落ち着き払った声で経過の順調さを述べる。



・・・以前のレムの塔ではコンタミネーション現象によりローレライの鍵の一部でもある第七音素の拡散効果がある宝珠を取り込んでいたため、上手く第七音素を集める事が出来ずアッシュに手を貸してもらわなければ自らも乖離して死ぬ所まで行った。

しかしそれはローレライの鍵を未完成の状態で使ったからだ。本来の完成した状態で使ったなら宝珠の拡散効果で集めた第七音素も消える事なく、ルークも・・・一人で障気を中和し、その場で乖離していたに違いない。

そして乖離の問題と、大量の第七音素の問題もローレライが解決している。ローレライがルークとともにあることにより大気の中の第七音素を収束させ、超振動の力の助けとしている。ルークの乖離に関しても自らが身をていして第七音素でルークを防護している為、乖離で体が透けるようになるようまで体内の第七音素を使っていない。



・・・ルーク達の行動は今の状況になるべくしてなったとはいえ、万全の今の状況に実際置かれたジューダスは手を添えながら更に万全にすべく声を出す。
「集中を切らすな、ルーク・・・後少しだ、お前の求めた物は・・・」
励ましの言葉はかけてはいるが、ジューダスはルークの顔を見ずに手元だけを見ている。言葉をかけたとてルークの顔は変わらないだろうし、ルークも失敗する気は更々ない。ジューダスなりに最後にやれる手助けが、この一言だった。






・・・全てがこの瞬間の為に来たと言っても、二人には過言ではなかった。タタル渓谷からありえない出会いに始まり、アクゼリュスでは死ぬ運命であった住民とシンク・アリエッタを救う事が出来た。しかしその行動は誰よりも先駆け行動して、ヴァン達すら動けない状況を作りこの世界に生きる全ての生命を救う為の物の一端だ。

外殻大地降下と障気中和、そして予想してはいなかったが予想よりも早い地核からのローレライの解放。ルークが障気を中和した瞬間、預言とヴァンの計画は意味を成さなくなってしまう。第七音素が使えなくなる世界はすぐ近くにきつつある、ローレライを音譜帯に帰せば預言は詠めなくなるしレプリカも作られる事はなくなるのだから。



集めた第七音素が徐々に光を収め、小さく形を成していく。その光が二人を包み込む程度に収縮してきた。
『ルーク!今だ、第七音素は我の力で十分に集まった!力を・・・解き放て!!』
「!・・・よぉしっ!行くぞ!ジューダス!!」
「あぁっ!行けっ!!」
ローレライの声がルークに届き、最大限の気合いを入れた声がジューダスにかけられる。ジューダスがルークに激を持って送り出すように声を張り上げる。



瞬間、溜めに溜めた第七音素がルークを介して世界に解き放たれた。








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