救う者と救われるもの 第十八話

「・・・今ここには僕とお前とローレライしかいない。後はローレライの鍵を持って超振動を使い、障気を中和するだけだ」
「うん・・・それに時間もかけられない。後少ししたら外殻大地は魔界に落ちるんだから・・・」
「外殻大地、か。フン、今思えば神の眼を用いて作ったミクトランの外殻大地も、形を保っていたとしてもいずれは終わっていたのかもな・・・」
「え?何ジューダス?」
「いや、いかな技術があっても超エネルギーがあっても人の作った技術は時を経て役割を遂げれば朽ちゆく物なのだと考えていたんだ」
ごまかしではないが自らの世界で作られた外殻大地の在り方を思い、ジューダスはしみじみそう考えずにはいられなかった。



外殻大地の発想は惑星の生命の危機に瀕して、大地を空に上げて廃れた地上から離れようという共通した状況があった。ただこことジューダスのいた世界で違うのは、ここは純粋な技術を持ってしての科学による外殻大地形成、ジューダスの世界は神の眼という膨大なエネルギーを核として発展した科学を持っての外殻大地形成。純粋な科学を持ってして作られた物には時が招く劣化現象を引き起こすが、膨大なエネルギーを頼りとした技術にはエネルギーが無くなった後の代換品がない限りその技術は廃れ行くのが命運になる。

外殻大地形成に核を成した神の眼とはいえ、所詮はエネルギーなのだ。ただ使い続ければいずれは神の眼も一般的に使われていたレンズのように消耗品として消え去っていただろう。

ミクトランが神の眼を無限のエネルギーだと考えていたかどうか、もはや真実は定かではない。だがいかに膨大なエネルギーがあるとは言え世界に無限に形を保つ物などない。

ジューダスはそう思えば、地上を毛嫌いしていた天上人もどうあがいても地上に戻らざるを得なかっただろうと、天地戦争の結末が逆転していたとしても永い時を経ればそうなっていたと感じずにはいられなかった。



「・・・うん。確かにそうだな。でも役割を終えたっていうなら誰かがそれを片付けなきゃいけない・・・でも俺はヴァン師匠のやろうとしている事には賛成出来ないから、無事に超振動を使って魔界にただの大地として降下させる。これからは創世歴時代の産物としてじゃなく、この星の一部に戻すんだ」
横にいたルークはジューダスの話に決心をしたようにローレライの鍵を取り出し、目の前に掲げる。
「・・・ローレライ、俺に力を貸してくれ。新たな未来を作る為に、これからの世界の為に」
『あぁ、我も力を貸そう。預言を変えてくれたルーク、お前達の為にも』
指輪の中からローレライもルークの強い意志に力強く答える。そんな答えを聞いたルークは一度目をゆっくりと閉じ、目を開けるとジューダスに振り向く。
「じゃあジューダス、俺やるよ」
ふっと向けられたその笑顔に、悲壮さはない。だが覚悟を決めたというには十分だと、ジューダスは感じ取った。
そうジューダスに告げたルークはローレライの鍵を持ちながら塔の中央へと足を運ぶ。その後ろ姿を見てジューダスが取った行動は・・・



「・・・ジューダス?」
中央に位置を取ったルーク、だがすぐにジューダスが自分の右横に来た事に疑問を持って視線をやる。
「僕は超振動は使えんが最後までお前の隣にはいてやれる。アッシュのように力は貸してはやれんが、これくらいはさせろ」
左手に持ったローレライの鍵をジューダスは握られた柄の部分の下を右手で掴み、共に鍵をにぎりしめる。まさかそのような行動を取るなどと思っていなかったルークはジューダスの真剣な横顔を見て、固まるばかりだ。
ジューダスからしてみれば自らの性格もあり、自らが関わる事には自ら力を奮う事を信条としている。例え自らの役割はないものと言っても、ただルーク一人が力を使う状況に自分も何かしたいという気持ちに歯止めが聞かなかったが故の行動だった。もっとも当人のジューダスは、
(・・・僕らしくもない。勢いに任せて行動するなんて・・・)
言い出した自分が不思議になる程考えがなかった事に内心反省をしていた。だがジューダスがもう一つ不思議になるのは、反省をしてはいても後悔の念が全く感じ取れない事だ。
「・・・やりにくいというなら手は離すが」
だが超振動を使うのは外ならないルークなので、ジューダスは邪魔になるなら仕方ないと遠慮がちに話し掛ける。
「・・・いや、ありがとう。このままでいいよ」
返って来た返事は間を空けての了承。ルークは真顔になり、落ち着いた様子を取り戻す。








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