救う者と救われるもの 第十七話

「出て来て下さい」
三人に賛辞を送り、ジェイドは入口に顔を向けて合図を出す。するとそこから扉を開けて現れたのは、多数のキムラスカ兵士。
「上手く行きましたので捕縛をお願いします」
「はっ!」
先頭に立った兵士がジェイドの頼みに淀みなく了解し、ただちに入って来た兵士数人でヴァンとリグレットの体を縄で縛りに入る。
その様子を見ながらティアは兵士達の横を通り、ジェイド達三人の横につく。
「・・・これで兄さんと教官を捕らえる事は出来ました。後残りはラルゴとディストですね」
「そうですね、恐らくそろそろアニスが来るはずですが・・・」
二人は確認を取り合いガイもナタリアも、緊迫感のある引き締まった表情で話を聞く。アニスの事をジェイドが口に出す、すると再び入口の扉が勢いよく開いた。
「みんな!無事!?」
「えぇ、無事ですよ」
扉が開くなり疾走で焦りながら入室してきたアニスの声に、ジェイドが柔らかく笑みを持って返す。
「よかったぁ・・・なら、次の段階に移行ですね!・・・今六神将が使ってるタルタロスはこのベルケンドから少し離れた陸地にありました。ここからもそんなに離れてないから案内しますんで、早く行こっ!大佐!」
「えぇ、そんなにのんびりもしていられませんしね。ではキムラスカ兵士の皆さん、二人を引き連れて私達に付いて来て下さい」
「はっ!」
まだ段階があるから次に行こうと、察するに偵察してからこちらに来たのだろうアニスの声にジェイドはその移行に賛成し、キムラスカ兵士にヴァン達を連れてくように言う。兵士も元気よく返事を返すと、数人でヴァン達を抱え上げる。
「さ、行きましょう」
その一声を合図にジェイドを先頭にベルケンドの研究室を後にしていく。そしてその場に残されたのは、今この場で起きた事を何一つ知らされていなかったスピノザと研究員の呆然とした顔であった。









・・・そしてベルケンドから出たジェイド達。横にアニスを従え向かった先はタルタロス。だがジェイド達はどう人員を多く見ても二十人足らず。そんな状況で神託の盾兵士が下手をすれば三桁以上いて、尚且つラルゴ・ディストの二人の六神将がいる中に入る。アッシュが味方だと言っても、こちらに二人人質がいると言っても状況は不利と言わざるを得ない。

だがためらいを見せずにタルタロスに入る入口まで近寄るジェイド達。そこまで行くと、唐突に階段が降りてくる。
「ご無事でしたか、カーティス大佐」
その入口から姿を現した人物はラルゴやディスト、ましてやアッシュでもない。そこにはマルクト軍人が着る青い軍服を着た、フリングス少将がいた。いや、正確には彼の隣にもう一人。
「ナタリア様もご無事で何よりです」
階段をフリングス少将とともに下りて来てナタリアに声をかけたのは、対象的な赤を基調としたキムラスカの軍服を着た女軍人、セシル少将だ。
「いえ、大事なのはこれからです。六神将が乗っていると思われるタルタロスのある場所は見当がついているのでしょう。早く行きましょう!」
「はい、それではタルタロスを向かわせますので中にお入り下さい」
「分かりましたわ!」
息巻くナタリアにフリングスが階段を登って入ってもらおうと、横にはけて手をエスコートするように差し出す。ナタリアの意気揚々とした声と同時に、ジェイド達も続々と階段を登っていく。









・・・何故ここにタルタロスとセシル・フリングス両少将がいるのか?それはピオニー陛下が援軍で、フリングス少将とマルクト兵を今六神将が使っているタルタロスではないマルクト所有のタルタロスに乗せて送って来たからだ。

そんなピオニー陛下からの気遣いにインゴベルト陛下も誰かにジェイド達の共をさせたいと言った時、周りにいたナタリア達は満場一致でセシル少将を共にと願った。これは正直いらぬ節介かもしれないが、それでも本来だったら結ばれる事が確約されていた二人。前とは違うにせよ出会いを作りたいというのはナタリア達の共通の思いだった。



そしてベルケンドに着くまで、ぎこちないながらも二人は軍人としての会話を主として話を進めていた。



良縁だと信じて疑わない二人が再び揃っている。タルタロスを進める為に隣合って指示を出す二人の姿を見たナタリア達はこの光景を守りたいと思いながら、残りの六神将を止める決意を強く固めていった。





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