救う者と救われるもの 第十七話
「・・・ねぇ兄さん。これから行くアクゼリュスはセフィロトがあるわよね?兄さん、兄さんはセフィロトを・・・壊したりしないわよね?」
部屋に二人きりの状況で言い出し難そうに、だが直球で。ティアから出て来た言葉にヴァンは不信感を露骨に表していると察知し、上がりかけた眉を落とし落ち着いた顔で優しく諭す。
「何を言っているのだ、ティアよ。私がそのような事をするはずがないだろう。以前の事ならお前の勘違いだ。それにアクゼリュスのセフィロトを壊そうとするなら、ダアト式封呪で封じられた扉を開けねばならない。お前もそれを知っているだろう、ティア?」
「・・・えぇ」
「ダアト式譜術を使える導師はどこにいるのか、私よりもティアの方が知っているだろう」
「・・・イオン様ならバチカルにいるから、確かに安全ね・・・」
二重の意味でも、と含みを入れた一言にヴァンは内心でほくそ笑む。そんなものには意味がない、リグレット達がレプリカの導師をさらってくればいいことなのだよ、と。
「そんなに私が信じられないのか、ティアよ」
自分を信じたいのか、まだ気持ちが揺らいでいるティアに畳み掛けるようにヴァンは肩を掴み真摯な瞳で言の葉を紡いでいく。
「信じられないならアクゼリュスでの救援活動で潔白を証明してみせよう。そして私の行動を見てから誤解だったと思ってくれればそれでいい。私もすぐに誤解が解けるとは思ってはいないからな」
「・・・」
気まずそうに顔を押し下げたティア、動揺を見たヴァンはこれでいいと口元が緩みそうになるのを抑える。どうせ最初から破るつもりの約束である、非難の声なら崩落させた大地を見ながらでも聞いてやろうと、そうヴァンはティアだけを救い出した後の事を考えていた。
「とりあえずはここから出よう。潔白の証明にはアクゼリュスに行かねば話にならんからな」
「えぇ・・・」
ここで話を終わらせ、信じる気持ちと不信の相反した気持ちが燻ったティアに時間を与える。どうせ自分はボロを出す気はないのだから迷わせるだけ迷わせればいいと、ヴァンは行くと告げ力無い返事を聞くと先に部屋を後にする。
ヴァンの後に部屋をそのまま暗い表情でティアが出て来る。するとそこにはリグレットがヴァンの横で不機嫌そうに腕組みをした状態で待っていた。ジェイド達三人は、その後ろで待機している。
「ティア、これからお前は任務に向かうのだろう。なのに何故お前は神託の盾の総長で上司でもある閣下に時間を取って、任務の遅れに繋がるような行動を取った?」
「・・・申し訳ありません、教官」
開口一番飛んで来たのは教官としての叱咤と、任務の妨げになる行動の指摘。ティアも言い訳をする気はないので、ただ頭を下げ謝るばかりだ。
「リグレット、必要以上に責めるな。私はティアの不安を取り除いただけだ。非があるとすれば、時間を取った私にもある」
「閣下・・・わかりました。だがティア。以後は気をつけろ、任務に私情を持ち込む事のないようにな」
ヴァンがその様子を見て自分にも責任があるんだと、擁護の言葉を放つ。リグレットはヴァンからの言葉に渋々ではあるが、まだたしなめようと開きかけた口を了承で返す。だが注意を促す事は忘れずに、教官としての言葉を送るとリグレットは毅然としながら入口の方に振り返る。
「さぁ行くか、ティア」
ヴァンもここから出る為の状況になったということで、ティアに声をかけると入口へと向きを返る。
「・・・兄さん、教官。すみません」
あまりにもか細く、誰にも聞こえていないそのティアの謝罪の声。ティアに背を向けた二人にもその声は届かなかった。
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部屋に二人きりの状況で言い出し難そうに、だが直球で。ティアから出て来た言葉にヴァンは不信感を露骨に表していると察知し、上がりかけた眉を落とし落ち着いた顔で優しく諭す。
「何を言っているのだ、ティアよ。私がそのような事をするはずがないだろう。以前の事ならお前の勘違いだ。それにアクゼリュスのセフィロトを壊そうとするなら、ダアト式封呪で封じられた扉を開けねばならない。お前もそれを知っているだろう、ティア?」
「・・・えぇ」
「ダアト式譜術を使える導師はどこにいるのか、私よりもティアの方が知っているだろう」
「・・・イオン様ならバチカルにいるから、確かに安全ね・・・」
二重の意味でも、と含みを入れた一言にヴァンは内心でほくそ笑む。そんなものには意味がない、リグレット達がレプリカの導師をさらってくればいいことなのだよ、と。
「そんなに私が信じられないのか、ティアよ」
自分を信じたいのか、まだ気持ちが揺らいでいるティアに畳み掛けるようにヴァンは肩を掴み真摯な瞳で言の葉を紡いでいく。
「信じられないならアクゼリュスでの救援活動で潔白を証明してみせよう。そして私の行動を見てから誤解だったと思ってくれればそれでいい。私もすぐに誤解が解けるとは思ってはいないからな」
「・・・」
気まずそうに顔を押し下げたティア、動揺を見たヴァンはこれでいいと口元が緩みそうになるのを抑える。どうせ最初から破るつもりの約束である、非難の声なら崩落させた大地を見ながらでも聞いてやろうと、そうヴァンはティアだけを救い出した後の事を考えていた。
「とりあえずはここから出よう。潔白の証明にはアクゼリュスに行かねば話にならんからな」
「えぇ・・・」
ここで話を終わらせ、信じる気持ちと不信の相反した気持ちが燻ったティアに時間を与える。どうせ自分はボロを出す気はないのだから迷わせるだけ迷わせればいいと、ヴァンは行くと告げ力無い返事を聞くと先に部屋を後にする。
ヴァンの後に部屋をそのまま暗い表情でティアが出て来る。するとそこにはリグレットがヴァンの横で不機嫌そうに腕組みをした状態で待っていた。ジェイド達三人は、その後ろで待機している。
「ティア、これからお前は任務に向かうのだろう。なのに何故お前は神託の盾の総長で上司でもある閣下に時間を取って、任務の遅れに繋がるような行動を取った?」
「・・・申し訳ありません、教官」
開口一番飛んで来たのは教官としての叱咤と、任務の妨げになる行動の指摘。ティアも言い訳をする気はないので、ただ頭を下げ謝るばかりだ。
「リグレット、必要以上に責めるな。私はティアの不安を取り除いただけだ。非があるとすれば、時間を取った私にもある」
「閣下・・・わかりました。だがティア。以後は気をつけろ、任務に私情を持ち込む事のないようにな」
ヴァンがその様子を見て自分にも責任があるんだと、擁護の言葉を放つ。リグレットはヴァンからの言葉に渋々ではあるが、まだたしなめようと開きかけた口を了承で返す。だが注意を促す事は忘れずに、教官としての言葉を送るとリグレットは毅然としながら入口の方に振り返る。
「さぁ行くか、ティア」
ヴァンもここから出る為の状況になったということで、ティアに声をかけると入口へと向きを返る。
「・・・兄さん、教官。すみません」
あまりにもか細く、誰にも聞こえていないそのティアの謝罪の声。ティアに背を向けた二人にもその声は届かなかった。
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