救う者と救われるもの 第十六話

「・・・何ですって?導師、ジェイド達がヴァンを捕らえに?何故、そのような事を・・・」
「ジェイドの話ではヴァンを野放しに出来ないからとのことです。少なくても外殻大地降下が始まればヴァンは事が知らない内に進んでいると知り、行動を起こしてしまうかもしれないと。ヴァンは目論見が外れればどのような行動を取るのか分からないから、まだベルケンドにいる内に自分達でヴァンを捕らえようとの事だそうです」
「まぁ、確かにそうですね・・・ヴァンならなりふり構わず流れを自分に呼び込む為になんでもしそうですが・・・」
ルーク達が万全であろう体勢を取っていても、それでも一抹の不安は残る。その不安はやはりというか、ヴァンなのだ。付き合いが浅い訳でもないディストはそれこそ望みを叶える為なら手段を選ばない人物だと知っている。でなければ人類を全て殺し、レプリカに人類をすげ替えるなどという計画など最初から立てていない。
「だからこそです。ジェイド達は何も知らない今の内にヴァンを捕らえようとしているのです」
「・・・妥当ではありますね。ヴァンは外殻大地降下が終わったならベルケンドから逃げるでしょう。ですが・・・捕らえるだけで済みますかね?あの、ヴァンが」
脳裏に浮かぶのはジェイドとヴァンが対峙する場面。ヴァンは敵意といった物に鈍い訳ではない、神託の盾総長という地位は伊達で就いている訳ではないのだ。無傷に保ったまま縛り上げる事など出来るのか、戦う事になれば殺さず終われるのか?
「やれるかどうかではなく、やるしかない。ジェイド達はそう意気込んでいました。それに彼らもルークという人と同じで、ヴァンを救いたいと・・・そう言っていました」
顔を落とし深刻に話すイオンを見て、余程固い決意を持ってジェイド達がヴァンを捕らえるといったのだろうとディストは察知する。
「だから僕は・・・彼らを信じます」
曇りなき瞳でディストを見据え、イオンは信じると強く宣言する。
「成程・・・でしたら私もここで待ちます。彼らの行く末を知りたいですし、ジューダスにはまだ聞きたい事もありますしね」
イオンの目を見てディストはダアトで待つと、決意を表す。結末がどうなるかなど予想できる物ではない、ただ知りたいのだ、これからの世界の行く末を誰が左右するのか。
そしてここまで状況を変えたジューダスを信じたくもあった。そして信じた後に何故自分にあぁ言ったのか、それを問う為に再び会いたい気持ちが強くディストはイオン達と共に傍観者になることを改めて明らかにした。








運命の糸は思いがけず見えぬ所で繋がる



そして終末の鐘が鳴らされる時が近づく



戦いの始まりは鐘の鳴らし手を選ぶ





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