救う者と救われるもの 第十六話
「彼らの旅にジューダスという人物はいなかったそうなんです」
「・・・待って下さい、導師。それはありえないでしょう。彼は、ジューダスは誰よりもルークの仲間に見えました。あのような人物が以前からの関わりを持っていないと?」
訳が分からない、イオンに話を聞く程ディストはハンマーで頭を打ちひしがれていくような衝撃が襲い来る。それほど親密な仲に見えた二人の様子が、時間が経っていない浅い物にディストには見えなかったからだ。
「・・・嘘ではない」
するとその声を否定する声がイオンからではなく、モースから暗く顔色が優れない表情で届いた。
「ローレライから見せられた過去にあのジューダスという者の姿はなかった。それこそ影も形もな」
「そんな・・・ならば何故ジューダスはルークの側に・・・?」
「・・・それを一番聞きたがっていたのはジェイド達なんです」
モースの言葉にディストはまた頭を抱えたくなるが、表情に影を落としたイオンの言葉にその行動も出来ずイオンに目を向ける。
「ジェイド達は行く先行く先で彼らの話を聞く度に肩を落としたり、溜息を吐いたり、驚いていました。グランコクマからバチカルに行く間にそれらの事も含め今までの話を聞いたところ、彼らの行動は大きく前を逸脱しているそうなんです。それで予測出来ない彼らの行動に、ジェイドもどうすればいいのかと結構悩んでいたそうです」
「!・・・あの、ジェイドが・・・!」
更なる驚愕を覚えるディスト。ジェイドが悩むという姿を見た回数は零に等しいディストは、その悩ませるという行動にいたったジューダスに敬意すら感じていた。
「ジューダス・・・あなたは一体何者なんですか・・・」
ここまで自分を揺るがせてくれた人物はケテルブルクの幼なじみ達、そしてネビリム以外にはジューダスが初めてだ。興味の対象が狭い所にしかなかったディストにとって、謎に包まれているジューダスという存在は興味を持てば持つ程魅力的なものだ。そして自分の行動を人道的に説いて、ある意味では親身に見える苦しそうに痛ましい顔で自分を押し止めてくれた。
・・・ディストはまだ自覚はしてはいない、これは新たに外に興味を持ち始めていることを表していた。
「・・・あの、ディスト?よろしいですか?」
「・・・あっ、はい。すみません導師」
考え事に集中していたらしい、ディストはイオンの自らを呼ぶ声にはっとして軽く頭を下げて謝罪する。
「いえ。それよりもディストはこれからヴァンの元に行く気はないんですよね?」
「はい、そうですが・・・安心してください、私はヴァンに協力する気はありませんよ。彼らが外殻大地を下ろしきるまではね」
掛値なしに本音だった。今この状態でルーク達と対峙しようにも、自分が使い物にならない事は明白。更にルーク達、正確にはジューダスに反目したくないと思っているディストははっきりと目下の目標になっている外殻大地降下を邪魔する気にはなれなかった。
「そうですか・・・ならよかった・・・」
「ん・・・?どうしたんですか、導師?」
明らかに胸を撫で下ろしたイオンに不審な目を向ける。本音を話した自分としては疑いが来ないようにと裏をなく話したが、あからさまな安堵に何か裏があるとしか思えない。
「・・・そうですね。今からでは間に合わないでしょうし、お話させていただきます」
「?」
指摘に気まずそうな顔をしたが、間を空けて考えに整理がついたようでイオンは意を決したように真面目な顔になる。ディストは何故そう真剣になるのかわからず、首を傾げる。
「近日中・・・もしかしたらもう終わってるかもしれません。少なく見て今日から前後したいつかにジェイド達はヴァンを捕らえにベルケンドに行きます」
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「・・・待って下さい、導師。それはありえないでしょう。彼は、ジューダスは誰よりもルークの仲間に見えました。あのような人物が以前からの関わりを持っていないと?」
訳が分からない、イオンに話を聞く程ディストはハンマーで頭を打ちひしがれていくような衝撃が襲い来る。それほど親密な仲に見えた二人の様子が、時間が経っていない浅い物にディストには見えなかったからだ。
「・・・嘘ではない」
するとその声を否定する声がイオンからではなく、モースから暗く顔色が優れない表情で届いた。
「ローレライから見せられた過去にあのジューダスという者の姿はなかった。それこそ影も形もな」
「そんな・・・ならば何故ジューダスはルークの側に・・・?」
「・・・それを一番聞きたがっていたのはジェイド達なんです」
モースの言葉にディストはまた頭を抱えたくなるが、表情に影を落としたイオンの言葉にその行動も出来ずイオンに目を向ける。
「ジェイド達は行く先行く先で彼らの話を聞く度に肩を落としたり、溜息を吐いたり、驚いていました。グランコクマからバチカルに行く間にそれらの事も含め今までの話を聞いたところ、彼らの行動は大きく前を逸脱しているそうなんです。それで予測出来ない彼らの行動に、ジェイドもどうすればいいのかと結構悩んでいたそうです」
「!・・・あの、ジェイドが・・・!」
更なる驚愕を覚えるディスト。ジェイドが悩むという姿を見た回数は零に等しいディストは、その悩ませるという行動にいたったジューダスに敬意すら感じていた。
「ジューダス・・・あなたは一体何者なんですか・・・」
ここまで自分を揺るがせてくれた人物はケテルブルクの幼なじみ達、そしてネビリム以外にはジューダスが初めてだ。興味の対象が狭い所にしかなかったディストにとって、謎に包まれているジューダスという存在は興味を持てば持つ程魅力的なものだ。そして自分の行動を人道的に説いて、ある意味では親身に見える苦しそうに痛ましい顔で自分を押し止めてくれた。
・・・ディストはまだ自覚はしてはいない、これは新たに外に興味を持ち始めていることを表していた。
「・・・あの、ディスト?よろしいですか?」
「・・・あっ、はい。すみません導師」
考え事に集中していたらしい、ディストはイオンの自らを呼ぶ声にはっとして軽く頭を下げて謝罪する。
「いえ。それよりもディストはこれからヴァンの元に行く気はないんですよね?」
「はい、そうですが・・・安心してください、私はヴァンに協力する気はありませんよ。彼らが外殻大地を下ろしきるまではね」
掛値なしに本音だった。今この状態でルーク達と対峙しようにも、自分が使い物にならない事は明白。更にルーク達、正確にはジューダスに反目したくないと思っているディストははっきりと目下の目標になっている外殻大地降下を邪魔する気にはなれなかった。
「そうですか・・・ならよかった・・・」
「ん・・・?どうしたんですか、導師?」
明らかに胸を撫で下ろしたイオンに不審な目を向ける。本音を話した自分としては疑いが来ないようにと裏をなく話したが、あからさまな安堵に何か裏があるとしか思えない。
「・・・そうですね。今からでは間に合わないでしょうし、お話させていただきます」
「?」
指摘に気まずそうな顔をしたが、間を空けて考えに整理がついたようでイオンは意を決したように真面目な顔になる。ディストは何故そう真剣になるのかわからず、首を傾げる。
「近日中・・・もしかしたらもう終わってるかもしれません。少なく見て今日から前後したいつかにジェイド達はヴァンを捕らえにベルケンドに行きます」
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