救う者と救われるもの 第十六話

そしてイオンの部屋に来た三人、表情は再会してから入室するまでと全く変わらない。
「さて・・・まずは私からお話させていただきましょう」
ディストが自分から話すと、眼鏡に手をかける。それからディストは自分がここでのルーク達との始終を話す。





「・・・そうですか。彼らはロニール雪山に行って・・・」
「えぇ、放心していた私は彼らを見送る事は出来ませんでしたが・・・導師。何故貴方は私の話をすんなり受け入れているのですか?」
話し終わり、イオンの反応に疑問を持ったディストはたまらず質問する。レプリカ技術におけるディストの目的がネビリムの復活、むろんイオンが知っているはずがない。純粋に驚きディストに止めてほしいというのが、ディストの考えるイオンの反応だったから。
「・・・僕はジェイド達に聞いたんです、貴方がレプリカ技術を用いていた理由とその結末を」
「・・・ジェイド?そこで何故ジェイドが出て来るのですか?ジェイドはルーク達とはなんの関係もないはずですが・・・」
出て来たジェイドという名に、ディストは首を傾げる。シンクから離反の理由は聞いてはいた、ルーク達が預言をルーク達なりに覆そうとしているのは理解できた。だがジェイドにルークとの関わりを影も形も感じる事は出来ない、実際に本当に関わっていない物から何か感じる事が出来ないのは当然の事だが、それでも何か二人の間に裏があるのかとディストには疑念が起きていた。
「そのことについてはバチカルで僕が聞いた彼らの話をお話いたします。ルークという方はジェイド達が戻って来ているという事を知らないようですからね」
「戻って来ている・・・?」
妙な表現に興味が尽きないディスト。だが話されるその内容にディストは次々と表情を変えていく。






まず驚いたのはジェイドとルーク達が未来から戻って来たという事。とはいえ荒唐無稽なその言い分に呆れから来る驚きでは?とディストは返した。だが続き出て来たレプリカ大地計画が話に出て来た事。これはヴァンの最重要計画の要に当たり、もちろんイオンに気取られるような事はなかった為純粋にディストは驚いた。

そして語られていくジェイド達から聞いたであろう、ヴァンとモースと六神将との戦いの話。アリエッタに関してはアニスとのすれ違いから戦いに発展したとイオンの為にイオンの死を隠した内容で話されているが、それでも全員がルーク達と戦いディストを除き敗れ死んだと聞いた。脚色は一部あれど中身は紛れも無く真実味が強く、知り得るはずのないものが混ざっている。

そこでディストがルーク達の行動を振り返って見る程、更に合点がついてしまう。ルークは何も知らないレプリカだったはず、なのに何故アクゼリュスの救援などしていたのか?そこを冷静になった今ディストが考えていけば、不自然極まりない事であった。それが故にディストは一通り話を聞き終わる頃には、自然と過去に来たという話を受け入れる事が出来ていた。






「・・・それが僕の聞いた彼らの経緯です。ただルークという人とジェイド達の戻って来た時間が違った為に、トラブルがあったというか・・・とにかくルークという人と合流出来なかったそうなんです」
「トラブル?」
「・・・貴方の話にも出て来たジューダスという人物の存在です」
「ジューダス?彼が何を?」
ジューダスの名前が出てディストは何をしたのか、問い質す。ジューダスとルークに関係はディストから見ても、仲間と見て差し支えない物だった。そんな彼が何を?トラブル要因に見えないジューダスの何がトラブルなのか、ディストは身を乗り出さんばかりに首を前に出す。



「・・・以前の彼らの旅に、ジューダスという名前の人物は影も形も聞かなかったし見なかったそうなんです」
「・・・え?」
だからこそイオンから出て来た言葉が理解出来ず、ディストの思考は真っ白になってしまった。











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