救う者と救われるもの 第十六話
・・・神託の盾の本部の食堂で食事を終えたディスト、本来ならここで彼はすぐに自室へと直行する予定だった。
(・・・たまには外に出ますか、場を変えれば気が変わると言いますし・・・)
単なる気まぐれというか、それでも自らの疑問に答えを出したい。室内にずっと篭りっぱなしというのは、答えを出す妨げかも・・・ディストは今しばらく見ていなかった外を見る為に、そう考え浮遊椅子を教会の正門の方へ向けて行った・・・
「・・・ん?」
正門を通り、久方ぶりの日光を浴びながら散策と考えに突入していたディストはふと視界に入ったものに意識を向ける。
「あれは・・・」
思考に意識を向けていたディストがそれを中断してまで、目を向けた先にあったのは・・・
「・・・ディスト、ですか?」
「・・・ディスト?」
正面からやってきたディストに遅れて気付いたのは、怪訝な顔で確認を取ろうとしていたイオンとモースの二人だった。だがありえない取り合わせというか、二人だけがアニスを引き連れずにダアトにいる。これはディストがジューダス達から聞いた、モースはバチカルにほぼ軟禁状態だということが違う事になる。あのジューダスという人物の言葉は何より説得力が強いと、ディストは感じていてその言葉が嘘だとは思えなかった。
何があったのか?一先ずの思考をディストは本人達から聞くべく、意識を向ける。
「・・・お久しぶりですイオン様、モース様。今までどちらにおられたのですか?」
二人の前に行くと、ディストは丁寧に頭を下げた後で単刀直入に居場所を尋ねる。
「・・・僕たちはバチカルから戻って来たんです・・・ですがディスト。何故あなたはここに?・・・もしかして、ヴァン達もここに・・・?」
質問の答えはもらった、だがディストにイオンが警戒心をあらわに質問してくる。腹の探り合いに慣れていないイオンは、不安なのだろう。ヴァンがいたらと、声が震えている。だが今更ヴァンに協力しようにも無駄であり出来る心理ではないディストは、答えを聞きたいとなんでもないように不安を取り除く。
「いえ、ここに謡将や他の六神将はいません。ダアトにいるのは私だけです」
「・・・ふぅ、そうですか・・・」
小さいが確かな安堵の息が聞こえ、ディストはまた疑問が起こる。
少なくても自分達はイオンに危害を加えようとしていたが、ヴァンに関しては全く関わりがないようにしていた。故に露骨に警戒されるような事はないはずだが、イオンは六神将と言わずヴァンの行方を聞いた。これは少なからずヴァンを不審に思っている証拠だ。
更に言うなら不審なのはイオンだけでなく、モースだ。説得に揺れたというのは聞いたが、何故今の時点でモースを和平を結ぼうと尽力しているイオンとともにダアトに帰したのか?それに何故か表情が自分と同じように、クマやら何やら浮かんでいる。
ディストの久しぶりの疑問は尽きず、同時にそれはネビリム以外の事に関して関心を持つきっかけでもあった。その証明として、ディストは今までにない行動を取る。
「・・・導師、大詠師。もしかしてルークとジューダス、という人物に触発されましたか?」
「!・・・な、何故その名を・・・!?」
稚拙だが手段としてイオンに有効だったカマかけ。案の定動揺を見せたイオンにディストは更に畳み掛ける。
「とりあえず私はもうヴァン謡将に協力する気はありません、即ち貴方をさらう気もありません。私は彼らの事をお話いたしますので、導師が今までどのようにされていたのかお聞かせいただけませんか?出来れば話が漏れないようにどこかで・・・」
話の経過から考えてもルーク達と遭遇したとは考えにくい、なら何か別の要因が働いてモースとともにアニスを伴わずにダアトに戻って来たはず。そこでカマかけで動揺した六神将の自分が知らないはずの二人を引き合いに出し、ディストは密談の形を望む。
「・・・わかりました。僕の部屋に行きます、ついて来て下さい」
やはり知りたいという気持ちが強かったのか、少し間を空けてイオンはディストに真剣に了承する。そして教会へと足を運ぶイオンの後をモースとともにディストはついていった。
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(・・・たまには外に出ますか、場を変えれば気が変わると言いますし・・・)
単なる気まぐれというか、それでも自らの疑問に答えを出したい。室内にずっと篭りっぱなしというのは、答えを出す妨げかも・・・ディストは今しばらく見ていなかった外を見る為に、そう考え浮遊椅子を教会の正門の方へ向けて行った・・・
「・・・ん?」
正門を通り、久方ぶりの日光を浴びながら散策と考えに突入していたディストはふと視界に入ったものに意識を向ける。
「あれは・・・」
思考に意識を向けていたディストがそれを中断してまで、目を向けた先にあったのは・・・
「・・・ディスト、ですか?」
「・・・ディスト?」
正面からやってきたディストに遅れて気付いたのは、怪訝な顔で確認を取ろうとしていたイオンとモースの二人だった。だがありえない取り合わせというか、二人だけがアニスを引き連れずにダアトにいる。これはディストがジューダス達から聞いた、モースはバチカルにほぼ軟禁状態だということが違う事になる。あのジューダスという人物の言葉は何より説得力が強いと、ディストは感じていてその言葉が嘘だとは思えなかった。
何があったのか?一先ずの思考をディストは本人達から聞くべく、意識を向ける。
「・・・お久しぶりですイオン様、モース様。今までどちらにおられたのですか?」
二人の前に行くと、ディストは丁寧に頭を下げた後で単刀直入に居場所を尋ねる。
「・・・僕たちはバチカルから戻って来たんです・・・ですがディスト。何故あなたはここに?・・・もしかして、ヴァン達もここに・・・?」
質問の答えはもらった、だがディストにイオンが警戒心をあらわに質問してくる。腹の探り合いに慣れていないイオンは、不安なのだろう。ヴァンがいたらと、声が震えている。だが今更ヴァンに協力しようにも無駄であり出来る心理ではないディストは、答えを聞きたいとなんでもないように不安を取り除く。
「いえ、ここに謡将や他の六神将はいません。ダアトにいるのは私だけです」
「・・・ふぅ、そうですか・・・」
小さいが確かな安堵の息が聞こえ、ディストはまた疑問が起こる。
少なくても自分達はイオンに危害を加えようとしていたが、ヴァンに関しては全く関わりがないようにしていた。故に露骨に警戒されるような事はないはずだが、イオンは六神将と言わずヴァンの行方を聞いた。これは少なからずヴァンを不審に思っている証拠だ。
更に言うなら不審なのはイオンだけでなく、モースだ。説得に揺れたというのは聞いたが、何故今の時点でモースを和平を結ぼうと尽力しているイオンとともにダアトに帰したのか?それに何故か表情が自分と同じように、クマやら何やら浮かんでいる。
ディストの久しぶりの疑問は尽きず、同時にそれはネビリム以外の事に関して関心を持つきっかけでもあった。その証明として、ディストは今までにない行動を取る。
「・・・導師、大詠師。もしかしてルークとジューダス、という人物に触発されましたか?」
「!・・・な、何故その名を・・・!?」
稚拙だが手段としてイオンに有効だったカマかけ。案の定動揺を見せたイオンにディストは更に畳み掛ける。
「とりあえず私はもうヴァン謡将に協力する気はありません、即ち貴方をさらう気もありません。私は彼らの事をお話いたしますので、導師が今までどのようにされていたのかお聞かせいただけませんか?出来れば話が漏れないようにどこかで・・・」
話の経過から考えてもルーク達と遭遇したとは考えにくい、なら何か別の要因が働いてモースとともにアニスを伴わずにダアトに戻って来たはず。そこでカマかけで動揺した六神将の自分が知らないはずの二人を引き合いに出し、ディストは密談の形を望む。
「・・・わかりました。僕の部屋に行きます、ついて来て下さい」
やはり知りたいという気持ちが強かったのか、少し間を空けてイオンはディストに真剣に了承する。そして教会へと足を運ぶイオンの後をモースとともにディストはついていった。
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