救う者と救われるもの 第十六話

・・・問い掛けに誰もが沈黙をする。ジューダスも答えを待つ事に痺れを切らしたのか、自らその雰囲気を壊す。
「・・・ノエル、出発してくれ。次の目的地はケテルブルクだ」
「あっ・・・はい」
ノエルも再び声をかけられた事で、返事を返すと操縦桿に向かい手をかける。
「・・・今の話は何故ディストにああ話したのかという僕からの説明だ。これから僕らは残り三つのセフィロトを回らなくてはならんのだ、今の話はもう気にするな。今はケテルブルクに行く事を考えればいい」
それでも尚ルーク達四人の間に残った空気の重さを消そうと、ジューダスは何事も無いように表情を戻し四人に言葉をかける。それに反応したのはアリエッタとフローリアンで、はいと頷くとまだぎこちないながらも気持ちを切り替えようとしている。シンクは何も返しはしないし、ただ沈黙を貫いている。彼の心境としては素直にジューダスの言葉を流せなかったのだろう、腕を組んで考え事をしているようになった。
だが心境として一番穏やかではないのはやはりルークだった。





ケテルブルクに向かう為、ダアト近隣の平野から飛び立ったアルビオールでルークは傍から見れば難しい事を考えているのが丸分かりな厳しい表情になっている。



(・・・異邦人・・・か。やっぱりこの世界もジューダスにとって見れば異邦なんだよな・・・)
例え自分達の為に行動してくれているとはいえ、ジューダスはこの状況に違和感を感じながら行動している。そう思うと、ルークは心が苦しく感じていく。
(でも・・・ジューダスがいくら異邦人って自分で感じていても、やっぱりジューダスは生きているんだよな・・・これから、ジューダスならどうするんだろう?・・・けどジューダスに答えは聞けない・・・なんか、答えが出て来たら全部終わりそうだ・・・)
ジューダスから異邦人としてこれからどうする?などと問いてその答えを聞いたら今まで築き上げてきた物全てが音を立てて崩れ去る、そんなイメージがルークには根拠も何もないが浮かび上がる。
(・・・俺は嫌だ、そんなの。ジューダスが今ここにいるのは確かなんだ、それを異邦人だからって理由で終わらせたくない)
沸々と出てくるのは理屈を差し置いた、ジューダスとの繋がりを切らしたくないという想い。
(・・・ジューダス、全部終わったらお前は何をしたいのかっていうのは、怖いから今は聞けない。けど俺はジューダスを異邦人で終わらせないように、色々と考えてみせる。それが偶然でもジューダスをこの世界に連れて来た俺の責任だから・・・)
強い決意がルークの胸に産まれる。ジューダスは仲間だ、失いたくはない。異邦人だと言うのなら、その違和感をどうにかする。ルークがジューダスに対する意を新たにした。








だが互いにズレが生じている二人。ルークは異次元空間に戻ろうとするジューダスの決意を知らず、ジューダスは自らを想い未来を作ろうとしているルークの決意を知らない。



・・・見解と決意のズレ。この二つがどういう結末を生み出すのか?・・・それは誰も知らない。



正しく命運が左右されるアルビオールの航路は、ただ速度を速めながらケテルブルクへと向かっていった・・・






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