救う者と救われるもの 第十六話

・・・ジューダスは今までシンク達と出会うまでの経緯を余す事なく、四人に話した。ルークが未来からヴァン達と戦い預言を少しでも変えて、死ぬ寸前にローレライに過去に戻してもらった事。



「・・・それって僕らはどうなったの?」
シンクの声にルークは顔を伏せ、ジューダスはありのままの事実を話した。嘘に意味はない、ジューダスの判断から出された答えにシンクはそう・・・と複雑そうにただそう言い、アリエッタはルーク達と敵対し死んだという事実に泣きそうになりながらもルークに抱き着いた。今の縁は真実の物、アリエッタにとってこの話は酷でもあったが今目の前にいるルークはただ優しい。フローリアンもアリエッタを心配し、その背を優しく抱き寄せたルークの手の上に重ねた。
この話を聞いたシンクもアリエッタもフローリアンも同様の想いを抱いていた。この時がある事を感謝、言葉が違えど三人は確かに同じだった。
シンクは自らの結末から変われなかったのだと、内心では複雑でたまらなくなる。アリエッタは自分の本当に大切な事を知らずに死んだ事に、悲しくなる。フローリアンは二人の事を知る事がなかった事に、寂しくなる。三人共にこの時があること、それがルークとジューダスの二人からだと改めて知り言葉にせずとも感謝の意があった。



ノエルは何か反応するでもなくただ、真剣にジューダスの話を聞く・・・そしてルークの事を話し終わり、ジューダスは自らが異世界の人間であり神により一回蘇りその神を倒した後でルークの時空転移に巻き込まれたという事を明かした。



「・・・ずいぶんと話が飛ぶね」
「でも・・・ジューダス、嘘ついてない、ですよね?」
「あぁ、なんならローレライにも聞けばいい」
「いや、いいよ。そういう嘘はあんたはつくはずないし、ローレライって出すって事は証拠もあるんだろ?ならそこまで必要以上に疑わないさ」
最初の席にアリエッタ達が戻りデフォルトの状態で話は進む。シンクはやはり信じられないという感じだが、はっきり言い切るジューダスにあっさり肩をすくめて引き下がる。
「では・・・話をするぞ。僕がディストにああ言った理由をな」
本題へ切り出す、空気が重くなる。下を向いて顔が見えないジューダスの声に、全員が身と気を引き締める。



「・・・僕は蘇り、かつて共に旅をした仲間と会う機会があった。その時に僕とそいつらには十八年分の年齢の差があった。死んだ人間に生きている人間と同じ人生を歩むなど出来るはずがない、何せ死んだのだからな・・・僕は彼らとの再会の傍ら、彼らとの関わりを避け出来るだけ顔を見せないよう声も出来る限り抑えていた」
「どうして・・・ですか?ジューダスさんは、その人達との再会を望んでいなかった訳じゃないんですよね?」
ノエルの質問に、ジューダスの顔が更に沈んでいく。だが断腸の思いで決心したのか、重く声が響く。
「・・・・・・確かに望まなかった訳ではない。だが僕は覚悟を持ってあいつらと決別し、死んだ。そこで神の思う通りに過去の決意を覆せば・・・僕は僕自信を殺していた。ただ一人だけを守ると誓った僕を、その誓いまでもな」
・・・誰も何も言えない。覚悟をひたすらに決めたジューダスの行動を肯定も否定も出来ない・・・そもそも決意を持って生き返った経験などジューダスを除き、あるはずがない。経験がない人間に肯定も否定も出来る権利などあるはずがなかった。
「・・・あいつらなら僕の事を知ったとしても、受け入れただろう。そしてディストの言ったネビリムという人物が蘇ったとしたら、ジェイド達も戸惑いながらも受け入れただろう。だがその戸惑いがズレを生み、意識に差を出していく。それが僕の言った過ごした時の差に繋がる・・・現にあいつらの暮らしを見て、僕の心の中にあったのは時に置き残された疎外感だった。それを見た僕は間違いなく異邦人なんだと思えてしまった、理屈抜きでな・・・恐らくネビリムも蘇ったなら僕と同じように思うだろうな、自分を異邦人だと。僕は新たな道を選んだが、ネビリムにはその存在を待ち望んだディストがいる。奴が心変わりしない限り、ネビリムは居場所の気持ち悪さに悩み続けるだろう。下手に好意を持っているだけに、無下に扱えずズルズル行ってしまうだろう・・・僕は独善ではあるが、それを止めたいと思った。だから奴に僕の経験を元にあぁ話したんだ」
ふぅと一息つかせたジューダスは顔を上げる。その瞳には悲しさが宿り、ルーク達はただその瞳を見るしか出来ない。
「これでいいか?」
瞳を吸い寄せられるように見ていたルーク達はただ頷くばかり。その初めて見せたジューダスの弱さという人らしい感情に、全員が何も言えずただジューダスを凝視することを止めれなかった。









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