救う者と救われるもの 第十六話

「・・・戻るぞ、四人共・・・後はディストの心次第、僕たちはこれ以上奴の為に時間は使えんのだからな・・・」
(ジューダス・・・)
儚げに入口を見て向かうその横顔に、ルークはただ何も言えずジューダスを見送ってしまう。そしてルークだけでなく強制的に会話を終えられたシンク達も数瞬程、ルークと同じように止まっていた。
そんな中で1番最初に静止状態から立ち直ったのはシンクで、アリエッタとフローリアンの二人の背中をポンと叩き行く事を行動で促す。二人もはっとしたように視線を動かすと歩行速度の早いシンクの後を無言で慌てて追い掛けて行く。
(・・・ディスト・・・ごめん、俺行かなくちゃ)
最後にルークが二人の後を追おうとすると、意気消沈させてうつむいているディストが視界に入る。ルークはディストをほって置けない衝動にかられるが、今はセフィロトに行くのが先だと思い直すと会釈程度の短さではあるが頭を下げ、シンクの部屋を後にしていった・・・






・・・そして五人はダアトから出て来て外に待機していたアルビオールの元に乗り込む。各々が各座席に座り込む中、ノエルが後ろを笑顔で振り向く。
「お疲れ様です皆さ・・・どうしたんですか?皆さん?何か・・・あったんですか?」
ノエルが五人全員の顔を見比べ、違った表情を見せている事に疑問を向ける。アリエッタは心配をしているかのようにただジューダスに人形を強く抱きしめながら視線を送り、フローリアンはジューダスに遠慮がちな視線を時々探るように送り、シンクは表情は見えないが怪訝な物を見るかのように強く視線を送り、ルークはジューダスこそ見ていないが何か難しい事を考えているような表情。ルークを除いた三人から視線を向けられたジューダスというと、ノエルの前に戻った時にはいつもの表情になっていた。
「いや、なんでもない。次はロニール雪山だ、アルビオールを頼む」
「ジューダス」
いつもの口調で次の目的地への飛行を頼もうとしたジューダスにルークからの呼び声がかかる。
「なんだ、ルーク?」
「・・・ジューダスが嫌なら無理して言わなくてもいい。だから聞くけど、どうしてディストにあんな風にあんな事を言ったんだ?」
その質問にジューダスの眉が寄る。
「・・・何故それを聞きたい?」
「アリエッタもそれ、聞きたい、です。だってあの時ジューダス、とっても辛そうだったから・・・」
自然に少し不機嫌になった声色にアリエッタがルークの加勢をしてくれたかのように声をかける。
「ねぇ、この際だから話してよ。僕も気になるんだ、あんたがらしくなくああまで言った理由がね」
「・・・僕もジューダスの事、知りたい」
続いてシンクが体を乗り出し聞く気満々な姿勢に対し、フローリアンも遠慮がちにうつむきながらもジューダスを下から見つめて聞きたいという。
「・・・話して面白いという話ではないし、楽しくなるものでもない。それでも聞くか?」
四人にそれぞれの姿勢でせがまれ、ジューダスは意を決したのか前置きを四人に向ける。
「「「「ああ(構わないよ)(はい、です)(うん!)」」」」
聞く覚悟は出来ていると前置きに速攻で頷く四人。ジューダスは少しふぅと目を閉じて息を吐くと、ノエルを見る。
「聞いた通りだ。少しアルビオールを動かすのは待っていてくれ」
「はい。・・・それと、私も聞いてよろしいでしょうか?」
「・・・あぁ、好きにしろ」



ジューダスはノエルの要望に曖昧ながら寛容な答えを返す。ノエルはその答えに体ごとルーク達を向き、真摯な姿勢を見せる。ノエルが体勢を整え終わるとジューダスは下を向きゆっくり目をつむり、静かに語り出す。
「まずはシンク、前にアクゼリュスで話した色々聞きたい事とやら。恐らく僕らの成り立ちを聞けばその疑問にも答えられるはずだ。まずはそこから話そう・・・」
アクゼリュスから今にいたるまで、ルーク達はシンク達三人に今こうやってこうしている経緯を話してはいない。ノエルもいるため最初から話す必要があると感じたジューダスは、互いの事情から話し出した・・・








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