救う者と救われるもの 第十六話
(え・・・!?)
初めて聞くジューダスの弱い声に、ルークは思わずジューダスの顔を見る。そのルークの視界に映ったジューダスの顔は彼が今まで見せた事がない、強い哀愁が漂っていた。
「大切な者だけを追い求めるのは止めろ、ディスト・・・」
「・・・なっ、なんですか一体!?見ず知らずのあなたにそこまで関係ないじゃないですか!それに何故私がネビリム先生の復活を望んでいる事を知っている!?」
弱いが確かな訴えになっているジューダスの声に、ディストの焦りが募る。その声はネビリムの事を匂わせているからこそ、動揺の色も強かった。
「無くしたものを追い求め、それで尚過去だけを取り戻そうとする。それがどれだけ苦しく、虚しい事か・・・僕は知った。知ったからこそ僕は新たな選択をした」
「・・・?」
自らの身を傷つけているかのような、そんな悲痛な感情がこもっている。それを感じ取ったのはこの部屋にいる人間全員、ディストもただならぬ雰囲気に声を止める。
「例え時が幾年経った先に貴様の求めている者が再び戻って来たとしても、得られるものはこんなはずじゃないという困惑と否定だ。あるいは求めている者からの叱咤もついてくる。大方馬鹿な事を、という嘆きだろう」
「・・・何故、そんな風に言えるんですか!?ネビリム先生なら私の事を誉めてくれます!」
「それは本当にネビリムという人物が望んだ事なのか?」
劣勢になりつつも、反論に転じたディストの声がジューダスの核心の一声に音だけでなく動作までも止まる。だがルークは徐々に染まりつつあるジューダスの悲哀を点してきた瞳を、聞こえてくる言葉を聞きながらただ立ち尽くして見るしか出来なかった。
「万が一だがネビリムは喜ぶかもしれん。だが数十年もの単位で変わっていった人の流れ、そんな中で昔と同じようになどと無理だ。そして時が経つ程、苛まれる事になる。自分だけが昔と変わらず、周りは時が経っただけの生き方を見つけて歩んでいる事に・・・どんなに時が過ぎようともネビリムを思い続けたお前とて、今は神託の盾の六神将だ。昔のお前にはどうあがいても戻る事は出来ん、生き方を見つけてその時を過ごした分のネビリムとの隔たりは確実に出来ているんだ・・・分かるだろう?昔のまま変わらない物ではないんだ、人の歩んできた道のりというものは」
「そ、それでも・・・」
「いい加減にしろ!」
ネビリムを諦め切れる様子を見せないディストが及び腰になりながら声を出そうとするが、ジューダスからのいきなりの怒声に肩を揺らしディストは萎縮する。だがそんな怒声すらも悲しい響きが強いと、ルークは感じていた。
「お前はそれでもいいだろう、ネビリムに会えればな。だが生き返ったネビリムは戸惑い、苦悩するだろう。自分の存在意義や自らの在り方にな・・・お前は再び生き返った大切な者に強いたいのか?自らの思いをわがままに大切な者にぶつけ、自分の願いを叶えて欲しいと言うのか?自らの為だけに馬鹿な事をしたのかと、怒られ泣かれて悲しませあげくに傷つけたとしても・・・」
「っ・・・・・・!」
長い沈黙が部屋の中に訪れる。ジューダスの言葉は何よりも重く、確かな物がそこにある。だからこそディストも何も言えるはずもなく、呆然としてしまっていた。
「・・・ディスト、これだけは覚えておけ。意志をねじまげてまで強制した生はもはや生ではない。ネビリムの転生に成功したとしてもその意志がお前に賛同しないようなら、お前はネビリムを知らなかった事になる。だからレプリカ研究は止めて思い返してみろ、記憶を。少しの間だけでもな・・・」
沈黙の中、口を開いたジューダスの言葉はディストに向けられる。その言葉を聞いたディストは力無く首をうなだれさせる。ジューダスの顔に映っていた悲哀の様相がより一層強くなった、ルークはそう思いジューダスを心配そうに見つめる。
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初めて聞くジューダスの弱い声に、ルークは思わずジューダスの顔を見る。そのルークの視界に映ったジューダスの顔は彼が今まで見せた事がない、強い哀愁が漂っていた。
「大切な者だけを追い求めるのは止めろ、ディスト・・・」
「・・・なっ、なんですか一体!?見ず知らずのあなたにそこまで関係ないじゃないですか!それに何故私がネビリム先生の復活を望んでいる事を知っている!?」
弱いが確かな訴えになっているジューダスの声に、ディストの焦りが募る。その声はネビリムの事を匂わせているからこそ、動揺の色も強かった。
「無くしたものを追い求め、それで尚過去だけを取り戻そうとする。それがどれだけ苦しく、虚しい事か・・・僕は知った。知ったからこそ僕は新たな選択をした」
「・・・?」
自らの身を傷つけているかのような、そんな悲痛な感情がこもっている。それを感じ取ったのはこの部屋にいる人間全員、ディストもただならぬ雰囲気に声を止める。
「例え時が幾年経った先に貴様の求めている者が再び戻って来たとしても、得られるものはこんなはずじゃないという困惑と否定だ。あるいは求めている者からの叱咤もついてくる。大方馬鹿な事を、という嘆きだろう」
「・・・何故、そんな風に言えるんですか!?ネビリム先生なら私の事を誉めてくれます!」
「それは本当にネビリムという人物が望んだ事なのか?」
劣勢になりつつも、反論に転じたディストの声がジューダスの核心の一声に音だけでなく動作までも止まる。だがルークは徐々に染まりつつあるジューダスの悲哀を点してきた瞳を、聞こえてくる言葉を聞きながらただ立ち尽くして見るしか出来なかった。
「万が一だがネビリムは喜ぶかもしれん。だが数十年もの単位で変わっていった人の流れ、そんな中で昔と同じようになどと無理だ。そして時が経つ程、苛まれる事になる。自分だけが昔と変わらず、周りは時が経っただけの生き方を見つけて歩んでいる事に・・・どんなに時が過ぎようともネビリムを思い続けたお前とて、今は神託の盾の六神将だ。昔のお前にはどうあがいても戻る事は出来ん、生き方を見つけてその時を過ごした分のネビリムとの隔たりは確実に出来ているんだ・・・分かるだろう?昔のまま変わらない物ではないんだ、人の歩んできた道のりというものは」
「そ、それでも・・・」
「いい加減にしろ!」
ネビリムを諦め切れる様子を見せないディストが及び腰になりながら声を出そうとするが、ジューダスからのいきなりの怒声に肩を揺らしディストは萎縮する。だがそんな怒声すらも悲しい響きが強いと、ルークは感じていた。
「お前はそれでもいいだろう、ネビリムに会えればな。だが生き返ったネビリムは戸惑い、苦悩するだろう。自分の存在意義や自らの在り方にな・・・お前は再び生き返った大切な者に強いたいのか?自らの思いをわがままに大切な者にぶつけ、自分の願いを叶えて欲しいと言うのか?自らの為だけに馬鹿な事をしたのかと、怒られ泣かれて悲しませあげくに傷つけたとしても・・・」
「っ・・・・・・!」
長い沈黙が部屋の中に訪れる。ジューダスの言葉は何よりも重く、確かな物がそこにある。だからこそディストも何も言えるはずもなく、呆然としてしまっていた。
「・・・ディスト、これだけは覚えておけ。意志をねじまげてまで強制した生はもはや生ではない。ネビリムの転生に成功したとしてもその意志がお前に賛同しないようなら、お前はネビリムを知らなかった事になる。だからレプリカ研究は止めて思い返してみろ、記憶を。少しの間だけでもな・・・」
沈黙の中、口を開いたジューダスの言葉はディストに向けられる。その言葉を聞いたディストは力無く首をうなだれさせる。ジューダスの顔に映っていた悲哀の様相がより一層強くなった、ルークはそう思いジューダスを心配そうに見つめる。
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