救う者と救われるもの 第十六話
道中先頭を歩くシンク達六神将三人に神託の盾兵士が敬礼をしていく。そんな光景を三人の後ろから見ながら、ルーク達は一つのドアの前に立つ。
「ここが僕の部屋だよ。入って」
部屋の主のシンクを先頭にルーク達は室内に入っていく。その部屋は以前見た一般教団員の部屋よりも幾分か広い。だがその部屋には簡素な木製机と、部屋の角に設置されたベッドくらいしか置かれていない。部屋の主のシンクとして見れば、余計な装飾は好まない故だからだろう。
「・・・さぁ聞かせていただきましょうか。わざわざ彼らをダアトまで連れて来た理由を」
室内にそれぞれ近くもないが遠くもない位置に全員がつくと、ディストが本題に入るように言ってくる。
「・・・ジューダス。あんたが話す?」
シンクはジューダスに顔を向け、指示を仰ぐ。
「いや、お前が話してくれシンク。ディストには別段隠す必要もない」
「わかったよ」
大してディストをそこまで警戒していないのか、それとも何らかの目論見があるのか。いつもの調子で告げられた言葉にシンクは首を縦に振る。
「実はね・・・」
最初はさして強い興味を持たず、アクゼリュス到着までを普通の顔で聞いていたディスト。だがフローリアンの存在、アリエッタが被験者イオンの死亡の事実を知り自分が今のイオンを生まれさせた事、シンクが六神将から離れるという話を聞きディストの表情は驚きのまま固まって行った。
「・・・という訳で、僕らは今セフィロトを回ってるんだよ。けど暇だからって言ってここに戻って来てるんじゃないよ、死神。僕らが驚いたじゃないか」
「・・・わっ!私は死神ではありません!薔薇です、薔~薇!いやそれよりもシンク!あなたそんなにフランクでしたか!?」
死神という単語に固まっていたディストも、ようやく復活してあわあわしながらシンクに反論する。だがディストも死神云々より冗談色の強い、非難めかせた口調に強く声をあげる。
「実際そうだったからそう言ってるだけじゃない。僕たち本当に驚いたんだからさ」
やれやれと首を横に振り、両手を肩辺りまで水平にシンクは上げる。
だが今までのシンクと動作は同じでも、感じる印象は圧倒的に違う。前はチクチク突いてくるようなトゲが言葉の一つ一つにあったが、今は同じ台詞でもトゲがない。ディストはそう思い、言葉に詰まる。
「まぁこれで事情は説明し終わったけど、ジューダス。このまま終わっていいの?」
「いや、後は僕から言わせてもらう」
反論が返って来ないことで、シンクはジューダスに話を振る。するとジューダスは今度は自分の番だとディストに視線を強く送る。そしてその視線を強く保ったまま、話し出す。
「ディスト、今の話を聞いてわかっただろう。僕たちは後三つセフィロトを回れば外殻大地の降下を済ませる事が出来る。だがそれを止めようと出来るヴァン達は遠く離れたベルケンドの地だ。今からではどうあがいたところで奴らの手は僕らには届かん。お前はそこまで聞いて奴らにこの情報を是が非でも伝えようと思うか?ましてやお前だけで僕たちを止めようと思うか?」
「・・・いえ、思いませんね」
元々六神将にヴァンへの忠誠で入った訳ではないディストは思わないと一言。自分はレプリカ研究、ヴァン達はレプリカ技術提供の代わりにその研究場所の提供を自分に。そんな取引だったが故にヴァンに忠誠心を持っていないディストは、レプリカ大地計画が頓挫しようと別に研究が進めばどうでもいい事。敢えて得られる物のない火中に飛び込むような無駄な事はしたくない。ディストは理論的にも戦力差でこれは止める事が出来ないと理解し、手を引く事を選択した。
「それはよかった・・・だが、もう一つお前には止めて欲しい事がある」
(ジューダス・・・?)
ディストの返事によかったと返した後、微細な声質の変化にルークはジューダスを横目で見る。だが大きな変化はジューダスの横顔にはない。気のせいかと思いつつも続きの言葉をルーク含め、一同が待つとその言葉は届いて来た。
「もう・・・いなくなった者の影を追うのは止めろ・・・」
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「ここが僕の部屋だよ。入って」
部屋の主のシンクを先頭にルーク達は室内に入っていく。その部屋は以前見た一般教団員の部屋よりも幾分か広い。だがその部屋には簡素な木製机と、部屋の角に設置されたベッドくらいしか置かれていない。部屋の主のシンクとして見れば、余計な装飾は好まない故だからだろう。
「・・・さぁ聞かせていただきましょうか。わざわざ彼らをダアトまで連れて来た理由を」
室内にそれぞれ近くもないが遠くもない位置に全員がつくと、ディストが本題に入るように言ってくる。
「・・・ジューダス。あんたが話す?」
シンクはジューダスに顔を向け、指示を仰ぐ。
「いや、お前が話してくれシンク。ディストには別段隠す必要もない」
「わかったよ」
大してディストをそこまで警戒していないのか、それとも何らかの目論見があるのか。いつもの調子で告げられた言葉にシンクは首を縦に振る。
「実はね・・・」
最初はさして強い興味を持たず、アクゼリュス到着までを普通の顔で聞いていたディスト。だがフローリアンの存在、アリエッタが被験者イオンの死亡の事実を知り自分が今のイオンを生まれさせた事、シンクが六神将から離れるという話を聞きディストの表情は驚きのまま固まって行った。
「・・・という訳で、僕らは今セフィロトを回ってるんだよ。けど暇だからって言ってここに戻って来てるんじゃないよ、死神。僕らが驚いたじゃないか」
「・・・わっ!私は死神ではありません!薔薇です、薔~薇!いやそれよりもシンク!あなたそんなにフランクでしたか!?」
死神という単語に固まっていたディストも、ようやく復活してあわあわしながらシンクに反論する。だがディストも死神云々より冗談色の強い、非難めかせた口調に強く声をあげる。
「実際そうだったからそう言ってるだけじゃない。僕たち本当に驚いたんだからさ」
やれやれと首を横に振り、両手を肩辺りまで水平にシンクは上げる。
だが今までのシンクと動作は同じでも、感じる印象は圧倒的に違う。前はチクチク突いてくるようなトゲが言葉の一つ一つにあったが、今は同じ台詞でもトゲがない。ディストはそう思い、言葉に詰まる。
「まぁこれで事情は説明し終わったけど、ジューダス。このまま終わっていいの?」
「いや、後は僕から言わせてもらう」
反論が返って来ないことで、シンクはジューダスに話を振る。するとジューダスは今度は自分の番だとディストに視線を強く送る。そしてその視線を強く保ったまま、話し出す。
「ディスト、今の話を聞いてわかっただろう。僕たちは後三つセフィロトを回れば外殻大地の降下を済ませる事が出来る。だがそれを止めようと出来るヴァン達は遠く離れたベルケンドの地だ。今からではどうあがいたところで奴らの手は僕らには届かん。お前はそこまで聞いて奴らにこの情報を是が非でも伝えようと思うか?ましてやお前だけで僕たちを止めようと思うか?」
「・・・いえ、思いませんね」
元々六神将にヴァンへの忠誠で入った訳ではないディストは思わないと一言。自分はレプリカ研究、ヴァン達はレプリカ技術提供の代わりにその研究場所の提供を自分に。そんな取引だったが故にヴァンに忠誠心を持っていないディストは、レプリカ大地計画が頓挫しようと別に研究が進めばどうでもいい事。敢えて得られる物のない火中に飛び込むような無駄な事はしたくない。ディストは理論的にも戦力差でこれは止める事が出来ないと理解し、手を引く事を選択した。
「それはよかった・・・だが、もう一つお前には止めて欲しい事がある」
(ジューダス・・・?)
ディストの返事によかったと返した後、微細な声質の変化にルークはジューダスを横目で見る。だが大きな変化はジューダスの横顔にはない。気のせいかと思いつつも続きの言葉をルーク含め、一同が待つとその言葉は届いて来た。
「もう・・・いなくなった者の影を追うのは止めろ・・・」
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