救う者と救われるもの 第十六話

・・・そしてアルビオールがダアトに近い平地に着陸し、ノエルを留守番に残しルーク達はダアトへと足を運んでいった。




特に敵対している人間もダアトにはいない、ルーク達は策略によりベルケンドにいるであろうヴァンを気にする必要もない。同じくリグレット達六神将はヴァンの指示を仰ぐべく、ベルケンドにて立ち往生しているだろう。だがヴァンに指示を仰ごうにもジューダスの陛下への頼みで、ヴァンに会うには一応面会許可をもらうようにしてある。バチカルには預言の為に拘束していたとはいえ、罪人扱いの身分で投獄されていたのだ。アクゼリュス派遣は無実の証明だと対外的に示しをつかせる為の見せかけ、預言の為に派遣するとは言っても身分は表向きだけは罪人候補。だからこそジューダスはその仮染めの罪人の身分を利用し、見張り付きの状況で時間制限ありの本当の罪人扱いでしか面会出来ないようお膳立てしてもらった。もちろん常に監視が付き、手紙など読もうにも出そうにも内容は一度兵士の目を通すようにしてある。六神将に口だしを出来る権限があるわけもなく、大義名分は十分に伴っている。必然六神将が行動を起こそうにもヴァンからの指示がない以上、現状維持くらいしかない。せいぜいまだバチカルでイオン奪還を目論んでるであろう、漆黒の翼のイオンをさらったという報告が入り次第セフィロトに向かうくらい。




そんな状況でヴァンも六神将もアクゼリュスやバチカルとは程遠いダアトに来る理由がない、ジューダスは目論見通り行っていると思いつつザレッホ火山に続く隠し部屋の譜陣の前にたどり着く。ちなみにアルビオールで火口につけて火口からセフィロトに向かう選択肢もあったが、それはルークと二人で行く場合だった。だが今はフローリアンがいる。戦闘面で戦えないフローリアンを魔物と対峙するような状況に陥らせたくはない。それに火口から行けばそれなりに時間がかかる。体力の面でも不安が残るフローリアンや、アリエッタに長時間火山の中活動するのは少し心情的にもはばかられる物だった為、ジューダスはやむなく火口からのセフィロト行きを変更した。





「・・・よし、ここも終わった。早く出よう、皆」
譜陣を抜け足早にセフィロトまでたどり着き、ルークは汗を拭いながら操作が終わったと制御板から後ろに首を向ける。するとルークの目にフローリアンが辛そうにしている姿が目に入る。
「・・・大丈夫か、フローリアン?やっぱりここ、来ない方がよかったんじゃないのか・・・?」
「うん・・・でももう終わりなんだよね?なら大丈夫だよ、僕・・・」
明らかに無理をしている、ルークの目に羽織った法衣を力いっぱいにぎりしめて、青白くした顔が映る。
(やっぱり無理してたんだな・・・)
「・・・戻ろうか」
ルークは言葉多くフローリアンを気遣うより、三人に目配せをして戻ろうと言う。三人も無言で首を縦に振り入口に向かう。



フローリアンが体調を良くしていない理由は一つ、それは火口に落とされた時の記憶が揺り起こされているからだ。実際譜陣から出て火山の風景が見えた時、フローリアンは今のような状態になった。フローリアン本人に理由を聞けば昔を思い出したとの事。その言葉にまた譜陣の前でルーク以外の誰かと待つかと、ジューダスがフローリアンに聞いた。するとフローリアンは「僕、皆と一緒にいたい・・・我慢するから、僕も連れてって・・・」と、ルークの腕を掴み青い顔のまま願い出た。そんな顔で行くと言うフローリアンを四人が無下に出来るはずもなく、フローリアンを連れていく事になった。



「・・・フローリアン、もう無理はするなよ?」
三人が少しだけ前を行く中、そんな状態のフローリアンに近寄り注意を促す。するとフローリアンはルークの上着の腰辺りを掴む。
「・・・だって、ルーク達と一緒にいたかったんだもん。それなら僕、無理なんかじゃないよ」
その言葉に不覚にもルークは感動を覚える。背伸びしようとして苦手な物を平気だと言う子供を見ているような錯覚みたいな物だが、実際姿が十四歳なので忘れがちだがフローリアンはイオンやシンクとは違いまだ二人に比べても人生経験が少ない。そんなフローリアンの小さな成長を目の当たりにして笑みがこぼれそうなルークだが、更に続くフローリアンの声に遮られる。
「ここ、抜けるまで・・・ルーク、掴んでいていい・・・?」
「・・・あぁ!」
やっぱりまだこういう所は子供だな。不安げな表情で見上げてくるフローリアンにそう思いながら、笑顔で返す。少し明るくなったフローリアンの顔を見ると、ルークは前を向き三人の後をフローリアンと一緒に歩いていった。






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