救う者と救われるもの 第十六話

試験飛行を終えたアルビオールは以前のようにノエルをパイロットにして、ルーク達の足として活躍することとなった。そして今アルビオールの目指す先はアブソーブゲートとラジエイトゲートを除いた二つのセフィロトの内の一つ、ダアトにあるザレッホ火山だ。





「・・・思うんだけど、フローリアンはまだダアトに入っちゃいけない気がするんだけど」
アルビオールに備え付けられた座席に各々座っていたルーク達、そんな中シンクは難しい顔になりながら後部座席から前に座るルーク達に声をかける。その声にルークとジューダスは後ろのシンクに振り向く。
「どうしてなんだ?シンク」
「僕はダアトでは仮面を被っているから別にイオンと間違えられる事はないけど、フローリアンは変装しても話は別だよ。寧ろあの法衣姿ならフローリアンが声を出したらイオンがお忍びで帰って来たって話が出ちゃうんじゃないの?」
「・・・そこまで長居する気もないし、声は適当にごまかせばどうとでもなる。だが・・・確かに一理ないこともないな」
「えー!?じゃあまた僕お留守番なのー!?」
ジューダスのシンクへの意見に頷きを見せる姿を見て、フローリアンは座席の上部に両手をつき体重をかけて前のめりになりながら膨れっ面で不満を表す。
「そうとは言っていない。だからこれから行く場所では法衣を来て、素直に大人しくしていて欲しいんだ。あまり声も大きくしないこと、それを守ってくれるというならついて来るのは構わん」
「なんだ、そうなんだー!なら僕大人しくしてるよ!」
「よかった、ですね。フローリアン」
「うん!」
二度ある事は三度あると、また待機をさせられるかもしれないと思っていたフローリアンだが、ついてきていいと聞き満面の笑みに一瞬で変わる。コロコロ変わるその表情にアリエッタがつられて笑顔になる。
「仲がいいんですね、皆さん」
更にノエルもつられフフッ、とちらっとだけ後ろを見ながら笑みをこぼす。まだシェリダンからダアトに行くまでの短い時間ではあるが、ノエルはすでにルーク達の雰囲気に馴染んでいる。とはいえルーク達はノエルにとってはギンジを助けた恩人、ルークも以前から知ってる分にノエルの行動に異論を挟む気はない。仲が良くなる速度が速いのは当然だった。



「・・・いいのかい?」
「・・・そこまでたいした問題ではない。それに何度も置いていけば僕やお前にねだりついてくるぞ」
「・・・それもそれできついね・・・」
笑いあうメンツを横目にシンクがジューダスに耳打ちの形で話す。その会話が聞こえたルークは渇いた笑い声を二人に聞こえないように抑えてあげる。その笑いは自らに降り懸かる苦労に対しての気持ちが半分、そんな柄にもない話し合いをする二人がおかしくてが半分づつこもっていた。



確かに募る幸福への道筋、ルークが想う未来への形は核を少しづつ成していっている。
「・・・あ、見えました。そろそろ着きますよ、皆さん」
理念実現に不可欠な場所、ダアトの到着を告げる声が前を向いたノエルから聞こえてくる。その声にルークは強く真っ直ぐ前を見据え直し、ダアトに向かう心構えを態度で現していった。




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