救う者と救われるもの 第十五話
ジューダスは掌の指輪をにぎりしめ、宿の中のルークがいる部屋の前に立ち、ノックすると今度はルークの返事を待たずに無造作に開け放つ。
「・・・・・・ジューダス・・・どうだった・・・・・・?」
様子からしてベッドから動いてなかったのか、腰をかけて頭を下げた状態から泣きそうな顔で神妙に聞いてくる。その顔にジューダスは淡々と告げる。
「問題はないそうだ。障気中和の時にはローレライが力を使うという。危険はないとのことだ」
「・・・ホント・・・なのか?ローレライ・・・」
『・・・あぁ』
ジューダスの返答にルークは希望に満ちた瞳で指輪を見るが、どこかすっきりしない声色の返事で肯定する。だがそうだと知るとルークは声色の変化に気付けず、途端に膝の上で手を組み頭を下げる。
「・・・俺・・・生きれるのか・・・」
その声に込められたルークの思いは信じられない、複雑ではあるが嬉しいという気持ちが涙声に現れている。その声にジューダスはルークの横に立ち、指輪をベッドの枕元に置く。
「しばらく僕は街を歩いてくる」
返答は期待しない、指輪を置いたジューダスはドアの前にまた戻り開け放つと出ていく直前にそう言い残して行った。
(ジューダス・・・そなたはもう罪人ではない。過去に何があろうと、それはもう死により償われたはずだ。例え罪が死んでも失われない物だとしても、それはそなた自身が過去に向き合った事で帳消しになったはずだ。そうでなくともそなたはこのオールドラントを救おうと尽力してくれている。その行為に過去など関係ない、そなたは今確かに生きているのだ。れっきとした真っ当な人間としてな・・・)
ルークがベッドで体を震わせる中、ローレライは考える。先程の会話を思い返し、ジューダスの気持ちは分からないでもない。だがどうしてもローレライにはジューダスに生きていてもらいたいという想いが捨て切る事が出来なかった。
「これでいい、これでいいんだ・・・」
ジューダスは誰もいない町外れで一人壁に体を預け、天を仰ぐ。生きたくない訳ではない、だがこれはジューダスの考えというより意地に近い。元々意地固な性格のジューダスは自ら決めた事を曲げるという事は必要じゃなかったら、ほとんどなかった。だがその決定事項を自らの生きる事への欲で覆すというのは、彼からすれば自らへの裏切りに外ならなかった。『エミリオ・カトレット』・『リオン・マグナス』の二つの名の次の名で生きてきた『ジューダス』という名に対しての。
「生きてもいい、とは言われそうだがな・・・」
ジューダスと呼び名を考えたカイルを想えば、確実に曇りない真っすぐな瞳で答えられるであろう言葉を思い浮かべ苦笑する。それが出来ないからこそ自分なのだと、ジューダスは確信している。
「・・・戻るか」
一人でいる事に思考が生死に関わる事が言ってしまう、自分の中では決意の意地が揺れないようにジューダスは宿に戻ろうと足を向ける。その表情が一瞬だけ悲しみに変わっていた事を自身が気付いていない、無自覚に生きたいと願っているように・・・
全ての終わりは刻々と確実に近づく
だが終わりには悲しみも付き纏う
時代の幕引きは裏切る者の別れに繋がるのか?
next story
.
「・・・・・・ジューダス・・・どうだった・・・・・・?」
様子からしてベッドから動いてなかったのか、腰をかけて頭を下げた状態から泣きそうな顔で神妙に聞いてくる。その顔にジューダスは淡々と告げる。
「問題はないそうだ。障気中和の時にはローレライが力を使うという。危険はないとのことだ」
「・・・ホント・・・なのか?ローレライ・・・」
『・・・あぁ』
ジューダスの返答にルークは希望に満ちた瞳で指輪を見るが、どこかすっきりしない声色の返事で肯定する。だがそうだと知るとルークは声色の変化に気付けず、途端に膝の上で手を組み頭を下げる。
「・・・俺・・・生きれるのか・・・」
その声に込められたルークの思いは信じられない、複雑ではあるが嬉しいという気持ちが涙声に現れている。その声にジューダスはルークの横に立ち、指輪をベッドの枕元に置く。
「しばらく僕は街を歩いてくる」
返答は期待しない、指輪を置いたジューダスはドアの前にまた戻り開け放つと出ていく直前にそう言い残して行った。
(ジューダス・・・そなたはもう罪人ではない。過去に何があろうと、それはもう死により償われたはずだ。例え罪が死んでも失われない物だとしても、それはそなた自身が過去に向き合った事で帳消しになったはずだ。そうでなくともそなたはこのオールドラントを救おうと尽力してくれている。その行為に過去など関係ない、そなたは今確かに生きているのだ。れっきとした真っ当な人間としてな・・・)
ルークがベッドで体を震わせる中、ローレライは考える。先程の会話を思い返し、ジューダスの気持ちは分からないでもない。だがどうしてもローレライにはジューダスに生きていてもらいたいという想いが捨て切る事が出来なかった。
「これでいい、これでいいんだ・・・」
ジューダスは誰もいない町外れで一人壁に体を預け、天を仰ぐ。生きたくない訳ではない、だがこれはジューダスの考えというより意地に近い。元々意地固な性格のジューダスは自ら決めた事を曲げるという事は必要じゃなかったら、ほとんどなかった。だがその決定事項を自らの生きる事への欲で覆すというのは、彼からすれば自らへの裏切りに外ならなかった。『エミリオ・カトレット』・『リオン・マグナス』の二つの名の次の名で生きてきた『ジューダス』という名に対しての。
「生きてもいい、とは言われそうだがな・・・」
ジューダスと呼び名を考えたカイルを想えば、確実に曇りない真っすぐな瞳で答えられるであろう言葉を思い浮かべ苦笑する。それが出来ないからこそ自分なのだと、ジューダスは確信している。
「・・・戻るか」
一人でいる事に思考が生死に関わる事が言ってしまう、自分の中では決意の意地が揺れないようにジューダスは宿に戻ろうと足を向ける。その表情が一瞬だけ悲しみに変わっていた事を自身が気付いていない、無自覚に生きたいと願っているように・・・
全ての終わりは刻々と確実に近づく
だが終わりには悲しみも付き纏う
時代の幕引きは裏切る者の別れに繋がるのか?
next story
.