救う者と救われるもの 第十五話
「・・・ローレライ、知っているだろう。僕はこの世界の人間ではないという事を」
『・・・あぁ』
「僕はこのオールドラントの在り方をルークから知り、僕はルークに協力すると宣言した。そしてそう決心した大きな理由は三つに分かれる。一つはヴァン・グランツの企みを止める為、それはお前も聞いてただろう。二つめはそうしようとするルークを放っておく気になれなかったからだ」
前置き、ローレライはジューダスの話し口が三つめに繋がっていると気付く。ジューダスの話し方はわかりやすさを追求しているかのように、聞きやすい。本音を話しているのはその表情を見ればすぐにわかる・・・だからこそ三つめの前になんとも言えない歪められた顔と、遠くを見る細められた瞳がローレライには物悲しかった。
「・・・三つめは僕を再び時空間に戻してもらうためだ」
『・・・何?』
だからこそローレライは出て来た言葉が信じる事が出来なかった。
「・・・元々僕は向こうでは既に死んだ身だ。それが神の為に蘇り、全てが終わった時に僕は生きているのか死んでいるはっきり分からないような時空間に飛んだ。本来なら人から認知されることもなく終焉を遂げるはずだった、僕は」
『だが・・・そなたはあえてそこに戻りたいと言う。真意はなんだ、そなたの・・・』
ますます理由がわからなくなるローレライ。ジューダスの言っている事はまるで・・・
「・・・僕は死にたい訳ではない。ただ・・・僕は死んでいた人間だ。一度蘇りまがりなりにも充実した時間を過ごせただけでも果報なんだ・・・僕は・・・偶然とはいえ、二回も蘇った。命あるものとしては有り得ない事だ。だから僕は今度こそ全てを終えた後、あの空間で全てを終えようと決めた。僕の『ジューダス』という人生を」
死、ではない。自らの終幕はあの孤独の空間で引く。ジューダスの瞳は遠く、空を向く。ローレライはそんなジューダスに焦燥の念を覚える。
『・・・何もあの場で終焉を迎えようとせずともいいだろう。全てが終わればルーク達はジューダスに近くにいてもらうよう、願い出るはずだ。偶然から産まれた物とは言え、この状況はジューダスに告げているのではないか?生きろ、と・・・?』
ローレライに浮かんだ物はルーク達が悲しみ、ジューダスを想うその姿。そしてローレライ自身が思った事は惜しい、の一言だ。ルーク達だけでなくローレライもジューダスの事を気にかけているのは事実、好意に値する人物をむざむざ失う事をローレライは避けようとする。
だがジューダスは意志を強く持った目で、指輪を見下ろす。
「例えそうだとしても、僕はこれ以上幸せになる気はない。カイル達との旅で僕は救われた。自己満足であろうとも充足した時を過ごせた。そして今、僕は再びルーク達との旅で充足している。罪人には過ぎたものだ」
『・・・ジューダス』
覆しようがない。ローレライはそう思ってしまい、説得の口が止まる。本気の口調だといつの間にか柔らかくなっている口元に理解が出来てしまう、不意に諦めがこもった後追いのジューダスの名が出る程に。
「それにこの世界に僕は長居をするべきではない。世界の歩みを決めるのはルーク達、この世界の住民だ。僕が手助けするのは最初からヴァン達の企みを止める事と、預言の停止の二つだけだ・・・世界は死人に変えられるべきではない、生きた人間によって変えられるべきだ。だから僕は消える・・・だがそれを拒否したり、今の会話内容をルーク達にばらすような事があれば僕はその時点でルーク達から離れる」
『・・・・・・』
充実した表情から引き締められた中で哀悼を燈した瞳がついた矛盾の表情に、ローレライも感じ取る。ジューダスも世界の為にとは言っているが、本心からすればルーク達から離れる事を快く思っている訳ではないのだと。
「・・・戻るぞ」
世界の自立を促す為に自らの存在は必要ない、そうジューダスが帰還の言葉に含めて指輪に向けてかけた。ローレライは自らを犠牲にするジューダスの言葉に何も言えず沈黙のまま、路地から表通りを連れられて行った。
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『・・・あぁ』
「僕はこのオールドラントの在り方をルークから知り、僕はルークに協力すると宣言した。そしてそう決心した大きな理由は三つに分かれる。一つはヴァン・グランツの企みを止める為、それはお前も聞いてただろう。二つめはそうしようとするルークを放っておく気になれなかったからだ」
前置き、ローレライはジューダスの話し口が三つめに繋がっていると気付く。ジューダスの話し方はわかりやすさを追求しているかのように、聞きやすい。本音を話しているのはその表情を見ればすぐにわかる・・・だからこそ三つめの前になんとも言えない歪められた顔と、遠くを見る細められた瞳がローレライには物悲しかった。
「・・・三つめは僕を再び時空間に戻してもらうためだ」
『・・・何?』
だからこそローレライは出て来た言葉が信じる事が出来なかった。
「・・・元々僕は向こうでは既に死んだ身だ。それが神の為に蘇り、全てが終わった時に僕は生きているのか死んでいるはっきり分からないような時空間に飛んだ。本来なら人から認知されることもなく終焉を遂げるはずだった、僕は」
『だが・・・そなたはあえてそこに戻りたいと言う。真意はなんだ、そなたの・・・』
ますます理由がわからなくなるローレライ。ジューダスの言っている事はまるで・・・
「・・・僕は死にたい訳ではない。ただ・・・僕は死んでいた人間だ。一度蘇りまがりなりにも充実した時間を過ごせただけでも果報なんだ・・・僕は・・・偶然とはいえ、二回も蘇った。命あるものとしては有り得ない事だ。だから僕は今度こそ全てを終えた後、あの空間で全てを終えようと決めた。僕の『ジューダス』という人生を」
死、ではない。自らの終幕はあの孤独の空間で引く。ジューダスの瞳は遠く、空を向く。ローレライはそんなジューダスに焦燥の念を覚える。
『・・・何もあの場で終焉を迎えようとせずともいいだろう。全てが終わればルーク達はジューダスに近くにいてもらうよう、願い出るはずだ。偶然から産まれた物とは言え、この状況はジューダスに告げているのではないか?生きろ、と・・・?』
ローレライに浮かんだ物はルーク達が悲しみ、ジューダスを想うその姿。そしてローレライ自身が思った事は惜しい、の一言だ。ルーク達だけでなくローレライもジューダスの事を気にかけているのは事実、好意に値する人物をむざむざ失う事をローレライは避けようとする。
だがジューダスは意志を強く持った目で、指輪を見下ろす。
「例えそうだとしても、僕はこれ以上幸せになる気はない。カイル達との旅で僕は救われた。自己満足であろうとも充足した時を過ごせた。そして今、僕は再びルーク達との旅で充足している。罪人には過ぎたものだ」
『・・・ジューダス』
覆しようがない。ローレライはそう思ってしまい、説得の口が止まる。本気の口調だといつの間にか柔らかくなっている口元に理解が出来てしまう、不意に諦めがこもった後追いのジューダスの名が出る程に。
「それにこの世界に僕は長居をするべきではない。世界の歩みを決めるのはルーク達、この世界の住民だ。僕が手助けするのは最初からヴァン達の企みを止める事と、預言の停止の二つだけだ・・・世界は死人に変えられるべきではない、生きた人間によって変えられるべきだ。だから僕は消える・・・だがそれを拒否したり、今の会話内容をルーク達にばらすような事があれば僕はその時点でルーク達から離れる」
『・・・・・・』
充実した表情から引き締められた中で哀悼を燈した瞳がついた矛盾の表情に、ローレライも感じ取る。ジューダスも世界の為にとは言っているが、本心からすればルーク達から離れる事を快く思っている訳ではないのだと。
「・・・戻るぞ」
世界の自立を促す為に自らの存在は必要ない、そうジューダスが帰還の言葉に含めて指輪に向けてかけた。ローレライは自らを犠牲にするジューダスの言葉に何も言えず沈黙のまま、路地から表通りを連れられて行った。
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