救う者と救われるもの 第十五話

・・・結局その後、ごまかしというスキルが皆無に等しい二人が出した言い訳は「呼びに行くのにギンジを助けた時の疲れできつかった」というこの五人の中でも体力派の二人には苦しいシンクの声で収められた。アリエッタとフローリアンはその声に渋々理解を示し、ジューダスはバチカルでの仕返しだと言われ自らに飛び火しかねない展開を考え口を挟んで来る事はなかった。








(助かったぁ~・・・)
シェリダンの宿のベッドで仰向けになりながらもルークは先程の修羅場を思い返し、ホッと一息つく。
(・・・でも・・・ジューダスがいてくれたからこうシンク達とも仲良くやれてるんだよな・・・)
しかしルークは思い出す。殺伐ではないこの好意から来る怒りの感情のやり取り、それもジューダスのおかげだと。自らの為にこの改革に巻き込んだ事については悪いとルークは思っている。だが・・・
(・・・ずっと一緒にいたいなぁ、ジューダスと)
左手を天井に掲げて指輪を見つつ、ルークはジューダスとの時間を思い軽く柔いだ笑みを浮かべる。
もし望めるのなら、自分は限りなく幸せになれる。ティア達との繋がりはもう出来なくても、自分は一人ではないと思える。
未だティア達がルークを求めてこの時に戻って来たと知らないルークは、この心地良さを共用できるジューダスとの関係を心では熱望していた。



‘トントン’
「入るぞ、ルーク」
(へっ!?)
物思いにふけっていたルークの耳に扉をノックする音と同時に、ジューダスの声が届いて来た。
「あっ、う、うん。どうぞ」
途端にルークはガバッとベッドから起き上がり、腰をかける体勢になりながら入室の声に答える。扉がルークの声に反応したように開かれると、そこにはいつもと変わらないジューダスが入室してきた。
「報告だが、アルビオール二号機のテスト飛行は明日の朝に始まる。上手くいけば明日の昼にはアルビオールを渡せるそうだ」
「うん、わかった」
その報告にルークも頷いて返す。時間にそう余裕がないと言っていたジューダスであったが、そこまでイエモン達を急かす理由はない。更に言えばイエモン達はギンジを助けて来たルーク達を前同様いたく気にいってくれた。そのイエモン達は何も言わずとも急いでくれる、それだけで十分だった。



「それともう一つ頼みがある。ルーク、その指輪を貸してくれ」
「・・・えっ?」
だが続いた言葉にルークは目をパチクリと大きく開く。
「少しローレライに聞きたい事があるんだ」
「ローレライに・・・?でもなんで俺と一緒じゃ駄目なんだ?」
ルークが疑問に思ったのはそこだ。ジューダスの話し方は最初からルークとは関係ない、預かり知らぬ所で物事を起こそうとしていたようにルークからすれば感じ取れた。そして何故にローレライと?その疑問の意図を探れないルークの目は聞きたいと尚語る。
「・・・障気の中和の件についてだ」
「・・・え?」
すると返って来たのは重々しい顔付きでの言葉、そして障気の文字にルークも動揺を見せる。
「いいか?以前はタルタロスで一時的にではあるが、障気の中和に成功したのは分かるだろう?だがそれは一時しのぎにしかならなかった。ヴァンがプラネットストームの動きを強め、タルタロスを壊したからな。それを踏まえ本当に障気を消したいというのであれば、超振動での中和が理想だ。だがそれは一万人以上の第七音素術士、もしくはレプリカの命が必要になる・・・そしてお前、ルークも再び生死をかけて超振動を使わねば話にならないんだ」
「!!!!!」
「絶望するな、ルーク。僕が確認したいのはローレライがルークの負担と、第七音素術士一万人分の第七音素を負えるのかという事だ・・・もしローレライがそう出来るというのであればそれに越した事はない。だがそう出来ないと言われれば僕はタルタロスでの障気押し込みを別方面から進める為に考え直そうと思う。以前のような命が失われる場面、僕は避けるべきだと思うがどうだルーク?」
「それは・・・避けられるなら避けたいよ・・・」
ルークの脳裏に今も焼き付いて離れないあのレムの塔でのレプリカの人達の顔に、ルークは顔を落とす。経緯はどうあっても産まれて来た人達を犠牲にするやり方はルークの心情としてはどうしても避けたい物だった。
「だからこそだ。僕はローレライに、全てを聞く。だが物事はそうそう上手くいかんかもしれん・・・僕は先に一人でローレライからの返答を聞く。もしかすれば・・・ルーク、お前にも覚悟が必要な話になるかもしれないからな」
そのジューダスの全てを左右するかもしれない重要性を持った言葉にルークは何も言えず、ただ下を向いたまま頷いて指輪を外して掌に乗せジューダスに向ける。



・・・そんなルークを見て、ジューダスの瞳には悲しみが宿っていた。


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