救う者と救われるもの 第十五話

「ねぇ、ルーク。僕と二人でいいだろ?」
「うん、俺はそれでいいけど・・・」
続いてルークに確認を取るシンクに、ルークはジューダスを気遣う視線を向けてくる。
「・・・行ってこい、ルーク」
反論の目を見つけるにも何も反論しようがない、それにここでシンクの思惑に乗ってやらなければチクチクその事をついてくるに違いない。ジューダスは自ら諦めと共に折れ、ルークに二人で行けという。その瞬間仮面で隠れているシンクの顔に、盛大に口元に笑みが表れた。
「じゃあ行こうよ、ルーク・・・二人もジューダスと仲良くしなよ?人一人連れて帰るんだから少し時間かかるからね、ゆっくりしていていいよ」
滅多に見られないシンクの満面の笑みからの優しげな口調に、アリエッタとフローリアンも疑いを見せる事なく嬉しそうにコクりと首を縦に振る。むしろ待っていましたと言わんばかりに二人はジューダスに近寄り、両脇から袖口を引っ張りキラキラした目を向けている。アリエッタはともかくジューダスより多少背が高いフローリアンに詰め寄られるその姿は、多少不釣り合いに見えなくはないが仕草が子供そのものな分不自然ではない。
「・・・では二人とも、ギンジを頼むぞ」
行くと決まったルーク達に両腕を抱かれる体勢に入られたジューダスが、真面目な表情のままでルーク達にギンジの事を任せる。
「わかってるよ?じゃあ行こうか、ルーク」
「あぁ」
ジューダスに返事を返す際に機嫌のいい笑みが皮肉げに口元がつりあがる。だがシンクはルークに振り向きざまにそうしたのでジューダスはその表情を見る事なく、フレスベルグの足に捕まって行くルーク達をジューダス達は見送った。









「・・・ねぇ、ルーク」
「何?シンク」
空を飛びながらギンジのアルビオールの元に向かう途中で、シンクがルークに話しかけて来た。
「どうせだからギンジ助けたら、シェリダンの裏側からあいつら三人に内緒で街に入らない?」
「・・・へ?どうしてなんだ?」
「だって僕にバチカルであの二人のお守りをジューダスはろくに話しもせずに押し付けたんだよ?少なくても僕以上の時間、あいつらの面倒を見てもらわないと割に合わないよ」
「・・・いいのかな、ジューダスなんか怒りそうな気がするけど」
「適当に裏から入った方が早かったって言っとけばいいんだよ。軽い仕返し程度、イタズラ程度なんだからあんたも軽い気持ち程度で付き合えばいいんだから首を縦に振りなよ」
そこまで会話を繋げ、ルークは内心では驚きでいっぱいだった。シンクが何か楽しみをあらわにするようにイタズラなどという言葉を口にすることに。以前ではシンクがこんなに明るく、イタズラの相談を持ち掛けて来る事など想像もつかなかった。元々は相入れない敵味方だったからそれは当然なのだが。
「うん、わかった」
ついついその変化に嬉しくなったルークは勢いそのままに、平然とした声色で返す。ジューダスの怒りと自分で言った事をごっそり忘れ去ってしまう程、ルークはシンクの気持ちの変化を大切にしたのだ。
「話が分かるじゃないか。じゃあ僕らも早くギンジを助けてゆっくりしようよ。アルビオールを手に入れる為にも早くしないといけないんだからさ」
「うん、そうしよう」
イタズラ発言から一転シンクの表情が真面目に引き締められ、ルークも自然と前を向いてギンジを助けようと意識を集中する。









「ルーク達、大丈夫だよね?」
「心配はいらん、大丈夫だ。ルーク達なら」
「そうです。だから信じてアリエッタ達と待つ、です。だから一緒に話そ?ジューダスもいる、ですよ」
あぁ来たか。ジューダスはアリエッタから話題に振られ、少し顔を暗くする。別に話題を振られれば話をしないでもないジューダスであるが、この二人はジューダスの話を聞きたがるだろう。二人は弁が立つ方ではなく、喋りが上手いシンクに自然と話題が集中する形になっていたとシェリダンに着く前にシンクから聞いた。長時間真面目な会話ならジューダスは持つが、雑談といった方面に関してはジューダスはあまり長く持つような柄ではない。
(早く戻ってこい・・・)
シンクの企みなど知らないジューダスはただただルーク達が早く戻って来るように願いながら、アリエッタ達と顔を付き合わせた。








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