救う者と救われるもの 第十五話

「ルークが来ていたって・・・それ、陛下が言っていたんですか・・・?」
「えぇ、そうです」
信じられない、ティアはジェイドにそう表情に出しながら確認を取る。
「それで陛下は今までの我々の現状と、ルーク達のバチカルでの様子を併せて話をしたいそうなのです。とりあえずはルーク達の話を聞くためにも城に行きましょう」
淡々と陛下と話して来た内容を告げジェイドは扉を再び開け、行こうと促す。その言葉にルークの行方を知りたいと思っている四人は頷き、ジェイドを先頭に部屋を後にしていった。







そしてティア達が通されたのは謁見の間・・・ではなく、陛下の私室であった。そこには陛下とナタリアの姿、そこで陛下は部屋に入って来た五人を見て取るとふんわりと柔らかく笑いかけて来た。
「おぉ、来たか。導師もご苦労であったな」
「いいえ。それはいいのですが・・・ジェイドが言っていた、ルークという人がここに来てキムラスカの貴族の人達を説得したというのは本当なんですか?」
陛下の労いに、イオンはそれほどでもないと言いつつルークの話題を口にする。直接会っていないながらも、ティア始めとする五人の熱意にほだされたイオンもルークの行方を相当に気にしているようになった。
「うむ、本当だ。アクゼリュスが・・・魔界に降下したという事をアルマンダイン伯爵から手紙で知らされた時、ルーク達はあらかじめこちらに戦争を止めるように来る予定だったらしくな。臣下を説得するためにここに来た」
「そうですか・・・」
「・・・陛下。つかぬ事をお聞きしますが、彼の隣にジューダスという人物はいましたか?」
答えを聞いたイオンが納得の声を上げると、今度はジェイドの質問の声があがる。
「うむ、いることはいたが・・・そういえば導師達は知っているのか?ジューダス以外に六神将のシンクとアリエッタ、それにフローリアンがルークとともにいることを」
「・・・えぇっ!?」
だが返って来た言葉にアニスの驚きの声が室内に響き渡る。しかし驚いているのはアニスだけではなく、ティア達も同様で目を大きく見張っている。その様子を見て陛下は眉を寄せる。
「・・・アルマンダインから聞かなかったのか?」
「・・・いえ、私達はルークの行方を聞いた後ですぐにグランコクマに向かったものですから、詳しく様子を聞かずに・・・」
あぁそれでかと首をウンウンと縦に振って納得する陛下に対し、ナタリア達は首を横にひねり何故だという顔になる。それを見た陛下は何かを思い出したようで顔をはっと上げ、机の引き出しを開けて手紙を手に持つとナタリアにそれを手渡す。
「その手紙はアクゼリュスでの経過を聞いたアルマンダインがわしに送ってくれた物だ。シンクとアリエッタはその時に六神将から離反し、フローリアンはその際に救い上げてきたとの事なのだ」
「ちょっと待ってください、陛下。二人はまだ離反っていうのはわかるんですが、そのフローリアンっていう人の救い上げてきたっていうのはどういう事なんですか・・・?」
ただ一人未来での結末を知らないイオンはフローリアンの存在の事を疑問に上げる。だが他の五人からすればシンクとアリエッタの離反という事実も信じられない物だった。特にシンク、シンクが六神将から離れて尚且つルーク達と共に行動。彼の思考を最期まで聞いて来たティア達からすればその言葉は信じる事が出来なかった。
そしてそれに加えフローリアンの存在があるという。どうやってフローリアンを地核から引き上げてきたのか、その手段がわからない。
二人の不可能とも言える同行に、六人の疑念は尽きる事はなく陛下を訝しんだ瞳で見つめる。注目を浴びた陛下はゴホンと一つ咳ばらいをして、場の空気を張り詰めた物へ一新させるとおもむろに切り出した。



「フローリアンはローレライの力を借りて、ルークが地核から引き上げて来た・・・との事だ」







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