救う者と救われるもの 第十五話

・・・徐々に変わり行くオールドラントの命運、そして命運の行方を握る全ての者達の意思。





その命運を握る一角とも言えるティア達はバチカルへと再びグランコクマから、ケセドニアを経由して港に到着した。









・・・再びバチカルの地をこのような形で踏むとは、そう船から降りたティア達はバチカルの中心に向かいながらそう思っていた。



「大佐ぁ、ここはナタリアに頼んで内緒で陛下に書状を届けてもらうんですかぁ?」
「えぇ、必要以上に我々はバチカルにいることが出来ないのでそれが妥当かと。ですが私はピオニー陛下の名代としてインゴベルト陛下の元へナタリアと共に行かせていただきます。頼めますかナタリア?」
「分かりましたわ!」
港から街に続く昇降機の中、アニスからの声にジェイドが肯定しナタリアに繋ぐ。ナタリアも使命感に燃え、手を握りながら声を高くする。そして昇降機がガシャンと上に上がりきったという音を上げ、入口の扉を開かせる。
「では行って参りますわ!皆さん!」
善は急げと、勢いよく更に上に昇る昇降機に駆けていくナタリア。その後をジェイドが軽く一礼してナタリアの後を追う。それを見届けると、ティア達が全員微妙な表情になる。
「・・・これでピオニー陛下からの書状は大丈夫だと思うけど・・・問題はルークだわ・・・」
「あぁ・・・どこにいるんだ、ルーク・・・」
ティアとガイの声にアニスとイオンも顔を落とす。



ルークにただ追い付きたいだけの気持ちならとうの前にアルマンダイン伯爵に指摘された時から消え去っている。彼らにとって肝心なのはセフィロトに続く、パッセージリング操作の事についてだ。ヴァンにリングを操作させないようにする、ジェイドがその解決策を考えたのはルークかアッシュによる超振動でヴァンよりも先に超振動で指示を書き込む事。そうすればヴァンにはどうあがいてもリング操作は出来ない。だがアッシュは今六神将にいる。だから現実的に協力を申し出る事が出来る立場にいるのはルーク。

だがルークは行方知れず、ティアとイオンの封呪解除に対する意気込みが強いというのに。そしてヴァンの先駆けだけでなく、パッセージリング操作は限界が近いリングにも必要な事なのだ。ティア達が考え込む事も無理がない事だった。



「・・・とりあえずは宿でお二人を待ちましょう」
イオンが淀んでいた雰囲気になっていた中、宿に行く事を促す。ティア達もコクッと首を振り、宿に足も重く向かい行く。現状打破は出来ないのか、ありありと見える悩みの様子に加え、溜息を吐きながら。







宿に入るなり四人全員ルークの行き先、目的を推測しようと会話を重ねた。だがあまりにも少ない情報に、どれもが核心を得られない。進まない、四人がこれからの指針にどうすればいいのかと焦りを知らず知らず感じ出していた。
そんな時、宿の扉が唐突にガチャッと音を立てて開く。
「旦那・・・」
「・・・暗いですねぇ、皆さん」
「仕方ないですよぅ・・・」
「・・・でもどうしたんですか大佐、一人で。ナタリアはどうして?」
扉から現れたジェイドと会話する中、暗いティアからのナタリアの存在への指摘が入る。
「そのことですが、今から城に来てはいただけないでしょうか?」
「どういう事ですか?ジェイド」
「インゴベルト陛下から四人を呼んで来てはくれないかと頼まれたんです。キムラスカがマルクトとの真の同盟に国全体で応じるというのをあなたたちにも知っていただきたいと。ナタリアは城に残ってもらい、私が連絡役としてここに来たんです」
「国全体で・・・?どういう事なんですか、大佐」
あくまで秘密裏に和平を結ぶ為に来た、そのはずなのに国全体で?何がなんだかわからない、ティアは四人の代表として質問する。だが帰って来た返事は予想だにしないものだった。
「陛下の話ではキムラスカの貴族達は既に説得済みだとの事です・・・ルーク達によって」
「「「「・・・え?」」」」
四人の呆気に取られる声が宿の一室に渇いて響く。明らかに信じられないといった感じにだ。











2/14ページ
スキ