救う者と救われるもの 第十四話

(・・・ここは・・・ユリアシティか?)
光に包まれたモースの目の前に現れた映像、それはユリアシティの広場。そこに前触れもなくモースの視界にダークブラウンの長髪の女性が現れた。その女性に誰かに似ているという思いをモースは持った、だがそれ以上に暗く青白い表情の女性に似ている云々ではなく何事かと片隅にそれを追いやる。するとその女性の隣に同じように突然ローレライが現れる。
突然現れた女性とローレライが辺りを確認し、誰もいないことを確認すると女性は口を開く。



「・・・ローレライ、やはり私は間違えていたのかしら・・・?」
『・・・間違えてはいない、ただどこかで掛け違いが起きたのだ。預言という形で危機を知らせようとした事で人は結論を急ぎ早まりすぎたのだ、ユリアよ』
(ユリアだとっ!?)
一言一言の重さを感じる話し方に何だと思っていたが、ユリアと名前を聞いた瞬間モースが驚きをあらわにする。
誰かに似ているとはモースは思っていた。顔のパーツ及び髪の毛の色は確かに血の繋がりを、グランツ兄妹を思わせる作りだ。寧ろグランツ兄妹がユリアと呼ばれた女性に似ているというべきだろう。
この人物がユリアなのか、モースは否定出来ない繋がりに息を呑みゆっくり二人の様子を伺う。



「世界は預言・・・星の記憶の通り、進んでしまっている・・・」
『あぁ・・・また譜石を巡って戦争が起きている・・・』
「何故・・・何故なの・・・?どうして戦争を止めようとしないの・・・争いを止めようとしないの・・・?・・・こんな事にならないようにするために譜石を作ったのに・・・」
ユリアと呼ばれた女性の悲痛な声に涙がつぅと同時に流れ落ちる。ユリアは顔を手で覆い、絶え絶えながらもまだ声は続く。
「死んでもいい命なんて・・・っない!争わなくてもいいなら争わないように道を探すのが人じゃないっ!なのになんで・・・なんで他の人を殺すのが自分の幸せだからって人を殺せるのっ!?譜石には人を幸せにするための力なんてない・・・もっといい未来を目指して欲しい、手を取り合って生きて欲しいから譜石を作ったのに・・・」
縋るように涙を見せながらユリアはローレライを見上げる。
「ローレライ・・・ねぇ、どうしたらいいの・・・?」
ティアとは違い成人の域は越えているであろうユリアのぐしゃぐしゃの泣き顔に、本当に思い詰めているのが分かる。なりふり構わず表情を気にもしていない心からの訴えに、モースは自分の心の中に無自覚の揺らぎが生じた。それはユリアの必死さに引き込まれているモースにはまだ気付けていない。
『今更預言の内容をそなたが全世界に伝えたとしても、嘘だと一蹴されるだろう・・・もはや時が第七譜石を白日の元に明かしてくれるのを待つしか出来ん。ユリア・・・辛いであろうが、待つのだ』
辛抱の時だ、そう告げられユリアは下を向きまた手で顔を覆う。そこでユリアとローレライの二人は姿を消した。






「・・・」
一人残されたモースの無言の時が少し続く。その表情はあまり一般に馴染みがないが、真剣に何かを考えているようであった。
『どうであったか?モースよ』
そこにローレライが姿を表す。
「あれがユリア・・・だと言いたいのだろう?貴様は?」
『そうだ。今のやり取りを見て・・・どう思った・・・?』
改めてモースにかしこまって質問をする。せめてすぐに変化と言わずとも、何かを感じていて欲しい。そんな願望を込めたローレライの声。するとモースはローレライに勢いよく声をかけてきた。







11/14ページ
スキ