救う者と救われるもの 第二話

「・・・うん・・・?・・・俺は・・・生きている!?」
『・・・目覚めたかアッシュよ』
「な・・・お前はローレライ!?」
『いかにも。アッシュよ、無事に大爆発を終えたようだな』
「大爆発だと?あれはレプリカがオリジナルをのっとって吸収する現象の筈・・・」
『お前は事実を誤解している。大爆発はオリジナルがレプリカを吸収して再構築する現象だ』
「何!?」
『本来ならお前は死んでいた。だが大爆発によりルークの体をのっとった事でお前の命は助かったのだ』
「ということは俺はアイツの命を奪ってしまったという事なのか・・・?」
沈痛な面持ちでローレライに確認をとるアッシュ。
『放っておけば間違いなくそうなっていた』
「・・・どういう事だ?という事は生きているのか、あいつは?」
『あのままでは大爆発がなくても間違いなくルークは音素乖離により死んでいた。それ故、消滅を防ぐためにルークの魂を過去へと送った』
「過去へ・・・」
『故にお前はルークの命を奪った訳ではない、気にしなくていい』
「・・・」
ローレライの言葉に何か難しい顔で考え込むアッシュ。その表情には真剣さが漂っていて、迂濶に話しかける事が出来る様な雰囲気ではない。



『・・・それではアッシュ、お前を地上へと戻す』
アッシュが何かを考え終わるのを待っていたローレライだったが、何時まで経っても変化が無いので自ら語りかける。
「・・・何?」
『お前が大爆発を終えるまでこの譜石帯で様子を見ていた。そしてお前が目覚めた今、地上に戻さねばなるまい。お前は人なのだからな』
そう言われ、周りを見渡すと自分が譜石の上に乗っていて、より空に近い位置にいるのがアッシュにもわかった。
『それでは地上にお前を・・・』
「待てローレライ!!」
『・・・何だ?』
突然のアッシュの制止。何事かとローレライはアッシュをいぶかしんでいる。
「・・・俺をアイツと同じ時間に送れ」
『・・・どういう事だ?アッシュ』
「もう一度だけ言うローレライ、俺をアイツと同じ時間に送れ」
『我が聞いているのはそういうことではない、何故過去に戻りたいのかという事を聞いているのだ』
ローレライの言葉に苦い顔になるアッシュ。あまり言いたくないと言うのが態度から丸分かりだ。



「・・・ローレライ、お前はアイツを助けたいと思った、だから過去に送った・・・違うか?」
苦々しい顔をしながらもローレライに答えを求めるアッシュ。
『ああ、そうだ』
「・・・俺も同じだ、アイツを助けたい。だから過去に送れと言ったんだ」
アッシュの答えに音素集合体である筈のローレライが、人さながらの驚きに満ち溢れた表情をしている。
『・・・お前はルークを憎んでいたのではなかったのか?』
「・・・憎んでいた。だが俺はエルドラントでルークと決着をつけたとき、そういった今までのしがらみから解放された。他ならぬルーク自身の手で・・・だから今度は俺が過去に戻り、ルークを助ける番だ」
ルークを屑と呼び、レプリカとさげすんだアッシュはもうここにはいない。ローレライはアッシュの変わりように安心し、これなら過去に送り出せると確信していた。
『よかろう、だが今もルークを待ち続けている者達がいる。その者達に事情を説明してから行くがよい。知らぬまま待ち続けるのはあまりにも哀れだ』
「なっ・・・」
アッシュの言葉を待たずにアッシュを自らの第七音素で包み込んだローレライ。そしてローレライはかつてのルークの仲間が集まっているタタル渓谷へとアッシュを送り出した。





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