救う者と救われるもの 第十四話

・・・数十秒後、陛下は部屋の扉をそっと開けてルーク達を見てきた。
「ルークよ、すぐに主立った貴族達は集まるであろう。そなた達も別室に待機しておいてくれ。モースは会議が始まった時点でそなたの姿を見ればわしの言葉など聞かず、すぐさまアクゼリュスへの派遣を口にするだろう。そうなってしまえば取り付くしまもなくなる。まずはわしがモース以下の臣達に話をする。そなたとジューダスは私が呼んだら部屋に入って来て全てを明かしてくれ」
「はい、わかりました」
モースの発言を先にさせれば陛下以外は確実にモースになびくだろう。預言を出されればその勢いを覆すのは難しくなる。ルークはモースの出鼻をくじこうと先を行こうとする陛下の言葉に感謝しながら了承の返事を返した。
「わしも会議場近くの一室で待つことにする。三人はここにいてくれても構わん。ゆっくりしてくれ」
そう言うと、陛下は扉を閉めて姿を消した。
「・・・ルーク・・・僕らは一緒についていっちゃいけないの?」
するとフローリアンがねぇ?と悲しそうに上目使いでルークの服の襟を掴み訴えてくる。うぅっとその瞳に見つめられたルークはジューダスに助けを視線で気まずそうに求める。
「・・・フローリアン。これから集まる人物達にする話は僕たちにとって必要な事だ。だが何人もそこにいても話は進まん。それに楽しい話でもない。だから話が終わるまでの間は二人と共に待っていてくれ」
ジューダスにしてはかみ砕いた表現でフローリアンを説得する。モースとシンク達の関係を説明するのはフローリアンには多少難しく、面倒。だがそれを説明する余裕もそんなにないから自分達だけで大丈夫だとジューダスは優しく言う。
「・・・うん、わかった。シンク達と僕、一緒に待ってるよ」
やはりかみ砕いた説明はフローリアンに受け入れられる。だが寂しそうに瞳を伏せる様子にアリエッタがフローリアンの腕を引く。
「大丈夫、です。アリエッタ、いるから寂しくない、ですよ」
「・・・シンクもいる、よね?」
「・・・え?」
そこで自分?なんで?そう雰囲気だけで言いたげな戸惑いをシンクはフローリアンの問い掛けで見せる。
「・・・あぁ、シンクもいる。だからゆっくり待っていてくれ」
「ちょっと!?」
そしてジューダスが更に後押しをする。シンクは助けてよ、と最後の希望をルークに託そうと視線を送ろうとする。
「行くぞ、ルーク」
「え・・・あ・・・」
だがそんな希望もジューダスに連れ去られていく。そして二人が部屋を出て行った後シンクは両端にアリエッタとフローリアンが引っ付いてきているのに、置き去りにされていく感覚を味わった。



「・・・どうしたんだ?ジューダス・・・シンクを・・・その・・・あんな感じで置いていっちゃうなんて・・・」
「・・・いや、苦手なんだ。ああいった雰囲気が。シンクには悪いが、一緒にいてもらうんだから任せようと思ってしまってな」
申し訳ないと思っているのがジューダスの喋り方からよく分かる。
「・・・とりあえずはモース達の説得が先だ。シンクには後で謝らせてもらう。だから・・・気を引き締めろ、ルーク」
「・・・うん」
どこかごまかしているように、気まずそうに。ジューダスの言葉にルークは腑に落ちない物を感じながら通路を歩いて行った。










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