救う者と救われるもの 第十四話

・・・数日が経ちカイツールの港から場所は変わり、バチカルの陛下の私室。自らの部屋でインゴベルト陛下はアルマンダインの手紙を秘密裏に受け取り、頭を抱えていた。










「むぅ・・・来たるべき時が来たのか・・・」
アルマンダインからの手紙をにぎりしめながらも、陛下の心中には焦りが生じていた。
「情報制限はしてあるとは書いてある、ルークもアクゼリュスが魔界に落ちたという事を察知次第バチカルに戻ると書いてある。だが・・・いずれはアルマンダインからの手紙は何だったのだと下臣からの指摘が来るだろう。その時まで持つか・・・?」
アルマンダインからの手紙は最優先で内密に陛下に送られるようにはしてあるし、インゴベルト陛下もそれを自分の元へ誰よりも先に届けるように下に伝えてある。だが手紙が届いたとの情報自体は隠せるはずがない。誰かがそれを指摘すれば陛下は手紙の内容を国境付近の情報として提示しなければいけない。そしてその手紙を提出しないとアルマンダインからの直筆の物だという証拠にもならない、つまり嘘もつけない。だがまだルーク達が戻るまでは時間を取りたいと陛下は考える。
「どうしたものか・・・」
溜息と同時にどこまでごまかしきれるかと、机に臥したくなる・・・だが、そこに・・・



‘コンコン’
「失礼します、陛下」
丁寧なノックの後聞こえて来た兵士の声。ガチャッと開けられたドアに、陛下は悩むのは後だと兵士に振り向く。
「うむ、なんだ?」
「ルーク様が戻られました」
「・・・何!?それは本当か!?」
渡りに船、タイミングとしては正にピッタリだと陛下は嬉しくなり声を高くして兵士に問い掛ける。
「はっ、ですがルーク様はまず陛下に内密に話をされたいと申されています。どうされますか?」
「すぐに通せ!」
即答で勢いよく返す陛下に、兵士はは、はっ!と戸惑いながらも急いで部屋を出ていく。





「失礼します、伯父上」
今か今かと扉の前で立ち尽くして待ち構えていた陛下、その向こうからようやく待ち望んでいた声が聞こえて来た。
「おぉ待っていたぞ、ルーク!」
「お久しぶりです、陛下」
開け放たれたドアから入って来たルーク達に顔を安心で綻ばせ、笑顔で歓迎する。ルークはフードを取りながら同じように笑みを見せる。その同じようなフードコートを着た後ろの四人は部屋に入りきると、最後尾の人間が扉を閉める。その音に気付いた陛下はルークの後ろに視線をやる。
「アルマンダインからの手紙で大体の事情は把握している。そちらが六神将の・・・」
「アリエッタ、です」
「シンクと言います」
陛下の声に二人はフードを取り頭を下げる。シンクはそれと同時に持っていた仮面を手に持ち、顔を見られないように被る。
「・・・そして、そっちが・・・」
「はい、フローリアンです」
「フローリアンだよー・・・あっ、フローリアンです・・・」
自らの番に来て嬉しそうにフローリアンは自己紹介をフードを取ってするが、ジューダスがフードを取り厳しい視線を向けるとばつが悪そうに訂正で丁寧に名乗り直す。恐らく事前にフローリアンに失礼がないようにとジューダスが何か言っていたのだろう。
「三人が二人についてきたのは手紙で知った。そしてアクゼリュスが魔界に落ちたというのもつい先日、手紙に書かれていた・・・ジューダスよ、そなたはここに戦争を提言しているモース達を止める為に来たのだな?」
「はっ。早速で申し訳ないのですが、戦争を提言しているモースを始めとするキムラスカの重鎮をすぐに集めていただけないでしょうか?アクゼリュスが落ちた今、預言回避に無事に繋がる道は一刻を争います」
「うむ・・・すぐに集めよう」
事情が事情だけに無駄な時間を裂かせる訳にはいかない、陛下はジューダスの横を通りドアを開け廊下にいる兵士へ呼び出しの話の事を通すべく、ルーク達の姿を見せないように扉を閉めた。









5/14ページ
スキ