救う者と救われるもの 第十四話

・・・ピオニーとジェイド達が分かりあったそのころ、ルーク達はケセドニアにいた。










「・・・よし、食糧は買い終わった。外にいるルーク達の元へ戻るぞ」
「そうしようか」
「分かったよ!」
ケセドニアの路地の傍らに存在する露店の一角、ジューダスは以前バチカルに戻った時に使ったマントを纏っているシンクとフローリアンとともにいる。買物を終えたジューダスは二人に振り返り、変装道具がないため顔が割れないようにと外で待つ事にしたルークとアリエッタの元へ戻るという。二人も問い掛けに肯定で返し、ジューダスと共にキムラスカ側の出口へと歩いていく。



「順調だね。今の所は」
「まぁな」
フローリアンがらんらん気分で足取りも軽く先を行っている、そんな中でシンクはジューダスに話しかける。
「・・・シュレーの丘にタタル渓谷のセフィロトのリング操作は終わって次はザオ遺跡のリング・・・アリエッタが怪しいと思って僕が行動を起こしてなかったら僕はあんたらが何をしてるかも知らないままリグレット達の所に居たんだろうね・・・」
「・・・なんだいきなり、かしこまって」
ジューダスは何やら改まった様子になっているシンクに横に視線を向ける。
「・・・わからないのさ。少なくてもあんたらに会うまでは僕はあんたらのやろうとしていることを知れば、確実に僕はあんたらを否定して戦いを仕掛けてただろうから・・・けどフローリアンとアリエッタ、それにルークに会ってから世界が憎いって思ってた気持ちがなんか変わって来た感じがして・・・」
変装には邪魔だからと仮面を外したフード一枚向こうの素顔は暗い、そしてその声も。
「・・・あの時はこれでいいと思った。だけど後でゆっくり自分の中で考えたら僕は今も世界が嫌いなこと自体には変わりはない、だからあんたらの行動に身を委ねてもいいのかって考えたりもするんだ・・・」
嘘偽りなく本音で語っているのだろう、シンクは暗にどうしたらいいのかとジューダスに問い掛けて言葉を止める。だがジューダスは迷うでもなく、シンクに視線を向けずに前を向いて歩きながら答える。
「昔のお前なら迷う事はなかったのだろう。迷うという事は自らに選択肢が増えた、という事だ」
「・・・選択肢?」
「・・・僕の経験から言わせてもらうが、心を揺らす程の悩みを抱えた時は決断を迫られるその時まで悩む物だ。それこそ本当に最後になるまで・・・な」
ゆっくり閉じられるジューダスの瞳、フード越しに横顔を見ているとはいえシンクはその過去を想う表情に息を呑む。
「今すぐ決断が必要だというなら僕に答えはやれん。結局最後に答えを出すのは他の誰でもないお前自身だ。だがそうでないというならこのまま付いて来ても構わん。僕に断る権利はない」
「・・・やっぱりあんたに言ってよかったよ。ルーク達だったら確実に僕を止めようとしただろうし」
表情を変えずにいつもの口調のまま答えるジューダスに、シンクは心なしかホッとしたように口に軽い笑みを浮かべる。
「・・・遅いよ~、早くルーク達の所に戻ろうよ~!」
重い雰囲気から軽く軟らかくなってきた二人の間に先に行き過ぎたフローリアンが戻って来て二人の手をピョンピョン飛びながら引っ張る。
「・・・わかってるよ、すぐ行くから」
時折見える不機嫌な様子の顔がフードから見えて、シンクは仕方ないと表情を切り替えフローリアンに返事を返し、手を引かれながらジューダスと共に歩きだす。



(迷っている・・・とは言ったが捨てられんだろうな、シンクは)
ジューダスは彼なりにシンクに考えを表しはしたが、人への想いが心中に芽生えているシンクは三人が悲しむような決断を下せるはずはないと思っている。



だがそんな考えを持っているジューダスであったが、考えに集中するあまりフローリアンにシンク同様なすがままに手を引っ張られている姿は多少滑稽でもあった。







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