救う者と救われるもの 第十三話

「・・・陛下、落ち着いて下さい」
「ん・・・悪いな」
やたらはしゃいだ様子を見せるピオニーに、ジェイドは仕方ないといった感じに制止をかける。
「・・・まぁそういう事情があるんだったら是が非でも和平は結ばないといけないよな」
「はい、ですがそれは既にインゴベルト陛下から書状を受け取っていますので、後はどうにかキムラスカの陛下以外の人員の説得が済めば和平は成り立つでしょう」
「ふむ・・・ならどうするかな・・・?」
ジェイドの返答にピオニーは考え込むそぶりを見せる。だがそれもほんの数瞬で終わり、勢いよくピオニーはゼーゼマンに視線を向ける。
「紙をくれ。和平に対する返事を内密ではあるが、インゴベルト陛下に出す」
「はっ!」
その双眸に迷い無し、笑みを浮かべていた表情からキリッと瞳を引き締め向けられた視線にゼーゼマンはすぐに紙を渡そうと手に取り、ピオニーにそれを近づいて渡す。
それを受け取ると、ピオニーは紙に真剣に向かい合う。



「・・・なぁ、ジェイド。お前これからどうしたい?」
「・・・は・・・?」
ペンをスラスラと走らせるピオニー、その様子を辺りがしんと黙って見ているとペンを止めずにピオニーはその表情のままジェイドに問い掛ける。
「これからお前はお前の言う聖なる焔の光を追い掛けたいのか?」
「・・・はい」
「けど追いつけていない、だからお前はどうするべきか悩んでいる。そうじゃないのか?さっきの話からして」
「・・・はい」
ピオニーの問いに答えるジェイドの顔は決して明るいと言える物ではない。
「・・・よし、出来たぞ。ゼーゼマン、ジェイドにこれを渡せ」
「え・・・?」
ペンを止め、ピオニーはゼーゼマンにその書状を渡す。ゼーゼマンは書状を受け取り書簡の形にすると、ジェイドに近寄り手渡す。
「お前はどうするべきか迷っているんだろう?ならとりあえずの目的は俺がやる。お前の役目はバチカルに行き、事情を知る者として了解したと伝えて来てくれればいい。それから先はジェイド、ルークとやらの行方を追ってくれればいい」
「・・・つまり、それから先は私達の事後承諾で行動してよろしいと?」
「そうだ、世界の運命を担う英雄を補佐するためにな。だがそうするにはバチカルにいる他の臣下への牽制も必要だからだ。ナタリア王女も一緒に行ってもらえればこちらの意志が間違いでないと先方に認識してもらえる。ナタリア王女にまで行動を共にしてもらうのはこちらのわがままにもなるがな」
「いえ、それは違いますわ!バチカルに戻るのは必然の事、私が行くのも必然ですわ!」
「成程・・・そちらもジェイドやナタリア王女と同じ考えか?」
ピオニーの問い掛けに、ティア、アニス、ガイ、イオンも表情を晴れやかにしてコクりと首を縦に振る。そんな彼らに、ピオニーは口元を柔らかく緩めそこから顔全体に染み渡らせた笑みを見せる。
「よし!なら行ってこい!マルクトはお前らの活動を全面的に協力する。後の事は心配するな!」
「はい。ありがとうございます。・・・では行ってきます」
「おう!」
深々と頭を下げ、ジェイドはピオニーを背にして謁見の間を出ようと歩み出す。ピオニーもその後ろ姿に、右手を振ってジェイド達を送り出していった。







逸脱する心、それは歓迎すべき変化



全てはより良き終末を得る為に・・・





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