救う者と救われるもの 第十三話

・・・変わらないピオニーの満面の笑み、今の彼は本当にジェイド達がアクゼリュスの住民を救って来たのだと信じて疑わない。だがジェイドはすぐにその言葉を訂正にかかる。



「いえ、陛下。アクゼリュスの住民を救出したのは私達ではありません」
「ん・・・?どういう事だ?」
「とりあえずは和平に向けてインゴベルト陛下がピオニー陛下に向けて出された親書をご覧ください」
満面の笑みからジェイドへの疑問の顔をピオニーは向ける。その顔に、ジェイドは懐から書簡を取り出しゼーゼマンへと近寄り手渡す。ゼーゼマンも受け取ると、ピオニーへと近づき書簡を手渡す。
「・・・何々・・・?・・・!・・・こっ、これは・・・」
書簡を開き、じっくりと中を見ていくピオニー。ある程度間を空けると、ピオニーは表情を驚愕へと一気に変える。
「アクゼリュスに正規に人員を派遣すれば預言通りに行く事になり、アクゼリュスの住民は崩落とともに死ぬ事になる・・・だと・・・?」
「えぇ!?それはどういう事なんですか!?」
絶句するピオニーの言葉に、今度はイオンが声をあげる。
「『・・・だが私、インゴベルトはその預言の先に破滅しかないことを知り、そのことを知らせてくれた聖なる焔の光の言葉により秘密裏にアクゼリュスの住民を助けることにさせていただいた・・・和平は預言に詠まれてすらいない、だが敢えて私は宣言させていただこう。キムラスカとマルクトの永久不変のものへとするべく、こちらから言わせていただく。是非とも我がキムラスカと和平を結んでいただきたい』・・・これは本当なのか・・・導師・・・?」
イオンの声に反応する事が出来ずただ続きを動揺しながら読み上げていったピオニー、内容を全て読み終わったらしいピオニーはその表情のままイオンを向いて問い掛ける。
「・・・いえ、僕はそのような預言が詠まれている事など知りませんでした・・・けどインゴベルト陛下が知ったという預言・・・その聖なる焔の光って人がなんで知っていたんでしょうか・・・?」
イオンも戸惑いを隠せず、ピオニーの質問に手を顎にかけて何なのかと理由を詮索しようとする。



ひそひそと周りもどういう事だとざわついてくる中、ジェイドは足を一歩踏み出す。
「落ち着いて下さい皆さん。その聖なる焔の光という人物の言葉は本当です」
「・・・いきなり何を言い出すんだ、ジェイド?」
「その前に陛下、これから私は事実だけしか話しません。信じていただかなくては話になりませんので、陛下には私の言葉を信じていただきたいのです。よろしいですか?」
真面目・・・というよりは真剣さを全面顔に出してジェイドはピオニーを見据える。
「・・・いいだろう、信じる。だから早くお前の知る事を話してみろ」
ピオニーはその滅多に見られないジェイドの表情に、心して話を聞こうと顔を引き締める。なんだかんだで長い付き合い、ピオニーはジェイドがそういった表情をする時はいつもののらりくらりとした時とは違い嘘など吐かないと理解している。



一言一句聞き逃したくないという緊張感のあるピオニーの言葉に、マルクトの重臣や兵士以下の面々も緊張しながら沈黙する。そして彼から出て来た言葉は謁見の間を揺るがす事となった。











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