救う者と救われるもの 第十三話

「・・・何だと?それはどういう事だ?」
「はっ!レプリカがまだ戻ってこない今バチカルに謡将をずっと不当拘束で縛り付けるのは対外的に示しがつかないという事で、ベルケンドにてレプリカが戻り次第謡将を呼び出すから待てとインゴベルト陛下から申されたようです!モースから話を聞いた謡将がそうおっしゃっていました」
「・・・チッ、何だそんな事か・・・」
兵士の報告に何事かと緊迫した雰囲気でリグレットは接していたが、そのような理由でかと気を抜く。
「・・・だがまあちょうどいい。牢の中にいた閣下の為にも今までの経過を報告する義務がある。そのような事ならベルケンドからは出られんだろうが、我々が会いに行く事くらいは許されるはずだ」
だがそこは考え直しだと、リグレットは手を顎につけてヴァンの元へ行くべきだと独り言を呟く。それを聞いて複雑なのはアッシュであった。



(・・・どうするべきだ、俺は・・・?ヴァンがバチカルから出るだと・・・一体何があってそんな事態に・・・クソッ・・・)
進まない現状に加え、全く何が起こっているのか理解出来ない。そのことにアッシュは彼なりの最善を模索する。



・・・ジューダスの手紙は確かに予想以上の成果を発揮している。だがそれはアッシュにとって想定外過ぎ悩みの種になっていた。



(クッ・・・何も思いつかん・・・)
ルークと合流するべく動く、ジェイドと合流するべく動く。どちらもそうするにはあてのない選択肢。ルークは行方を誰も把握出来ていない。故に行き違いの可能性が高い。ジェイドは下手に接触しても自らが裏切っているとばらすだけ。更にインゴベルトの情報操作でモースにも出来るだけ情報が渡らないようにしてあり、モースの情報から今バチカルにジェイド達がいないと聞かされてないアッシュにはもしここから離れてジェイド達と合流しようとしたとしても、そうすることも出来なかった。その点ではいないことを知らなくてよかったと言えるだろう。
(・・・現状維持しかないのか・・・?)
歯を噛みながらも試行錯誤するアッシュに出た結論、それは何か行動する事ではなく六神将として活動すること。彼とて自らの置かれている立場は重々承知している。今までの考えも加えた彼の最善だと思える判断は静観であった。



「・・・よし、ならば我々は閣下の元へ向かうぞ」
「・・・」
考え終わったリグレットはラルゴとアッシュにベルケンドに行くという。その答えにアッシュは反論せず、黙ってその場に仏頂面で立ち尽くした。






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