救う者と救われるもの 第十三話

・・・馬車に乗りマルクトのグランコクマに向かうジェイド達。特にトラブルもなく馬車はマルクトへと向かって行ったが、バチカル近郊にいる六神将に、ある動きが見え始めて来ていた・・・











「・・・遅い・・・レプリカもそうだが、シンクやアリエッタも何故帰って来ない・・・?」
「「「・・・」」」
タルタロスのブリッジにリグレット、ラルゴ、ディスト、そしてアッシュは集合していた。だがその目的の内容はと言えばルーク達の行方が知れないと、リグレットがその理由を知りたいと三人に問い掛けるだけの物。だがラルゴとディストははっきりと答えられるはずもなく沈黙し、アッシュはルークだけでなく二人まで行方知れずだということが理解できずに考え込みこれまた不機嫌な顔で返事をしない。
「・・・漆黒の翼からも導師の奪還に成功したとの報告すらない・・・我々はいつまでここで立ち止まればいいのだ!?」
やり場のない怒りを込めた声、これでは何も出来ないとリグレットは訴えている。するとその声を受けてピクッと反応を示してディストが挙手をする。
「・・・何もやるべき事がない、というなら私はダアトに戻らせていただいてよろしいでしょうか?」
「・・・何?」
提案というよりは個人的な要望で発言しているような言い方に、リグレットは苛立ちながらディストを睨む。
「ホ、ホラ!ここに六神将が何人もいても何も進まないでしょう!?だから私はダアトに戻ってレプリカ研究に精を出した方があなたたちの為にもなるからそうした方がいいと申し上げているだけです!」
「・・・」
逃げるなと言っているようなリグレットの視線に、ディストは声を慌てさせながら互いの利益になるからと弁明する。
「・・・チッ、いいだろう。だがこちらから呼び出した時はすぐに来い。いいな?」
「わかっています。では私は早速ダアトに戻らせていただくので、これで失礼しますよ」
不承不承ながらも、リグレットは考えた後ディストの申し出を承諾する。了承と聞いたディストは顔を緩ませ、気まずい雰囲気から逃げようとリグレット達の視線を振り切って言葉もそこそこにブリッジを早々と出て行った。
「・・・いいのか?ディストを放っておいて」
「・・・仕方ないだろう。どうせ断ってもディストはしつこく戻せと言ってくる。それにあてもなくこのままタルタロスにすし詰めではディストの言う通り、癪だが何も進まん。それにたいした出来事も起こっていないんだ。ディストがいなくてもしばらくは私達だけでも十分だろう」
リグレットの疲れたような言葉を受けて、アッシュは一つの思いつきが生まれる。



(なら・・・俺も行く!!)
元々気の長い方ではないアッシュ、そんな彼が現在全く見えない現状をうやむやにしたまま事を進められて何も知らないまま終わらせようとする気はない。



自らもルークを探しに行こう、アッシュはリグレットにごり押ししてでもそれを言い出そうと前に出る・・・その瞬間、ブリッジの扉が開いた。
「失礼します!」
「・・・なんだ?」
ブリッジに入って来たのは神託の盾兵士。何やら重要な事があるという様子に、アッシュは出した足を止める。リグレットの問い掛けにアッシュもラルゴも兵士の言葉を待つ。すると兵士から出て来た言葉は彼らの想像になかったものだった。



「はっ!ヴァン謡将がバチカルの牢から出て、只今ベルケンドに向かう船にいるとの事です!」






6/12ページ
スキ