救う者と救われるもの 第十三話

「・・・アルマンダイン伯爵の言葉はとても身に染みました。ですが一つ聞きたいのですがルークに追い付く、というのは難しいのですか?せめていつここを出発されたのかを教えて欲しいのですけど・・・」
思い詰めた顔をしたナタリアがアルマンダインに畏まって質問をする。やはり一応追い付くかどうかを確かめてはみたいようだ。
「難しいですな。ここから離れてそう時間はたってはおりませんが、はっきりとはルーク様はどちらに行かれるかは明言されてはおりませんでした。下手に憶測を持って行動すればルーク様に追いつけないかと・・・」
「やはり・・・そうなのですね・・・」
予想はしていたことだがと、ナタリアは俯く。すると今度はジェイドが口を開く。
「時に・・・伯爵は何を悩まれていたのですか?アクゼリュスの住民を助けられたというのに、何やら浮かない表情で考え事をしていたようですが・・・」
その指摘に、アルマンダインは先程とは打って変わり眉をひそめる。
「・・・それはマルクトに誰を使者に出そうかと悩んでいたのです」
アルマンダインは懐から書簡を取り出し、ジェイド達に見せる。
「この書簡をピオニー陛下に届けたとして、その中身を信じていただけるかが問題なのです。中身が中身だけにピオニー陛下が信用してもいいと思える人物を送るべきだと思っているのですが・・・あいにく私以外に適任の人物がいないのです。ですが私はここを迂闊に動く事も出来ず、どうしようかと・・・」
書簡を片手に頭を抱えてアルマンダインは疲れた表情を見せる。余程悩んでいるようで、先程までのしゃきっとした雰囲気が全く感じられない。するとジェイドが顎に手を置いていた状態から手を離す。
「・・・では私達が陛下にその書簡をお渡ししましょう」
「「「「・・・え?」」」」
その発言に、イオンを除いた全員が呆気に取られて目を見開く。
「・・・よろしいのか?カーティス大佐」
「先程伯爵もおっしゃられたでしょう。彼に追い付く事だけを考えてはいけない、自らにやれる事をやるべきだと。ですから私のやれることはその書簡を無事に陛下に送る事、そう思ったからこそ私はその役目は負いたいのです」
役目を見つけた、そうジェイドの表情は語っていてティア達を見回す。
「これはあくまでも私の個人的意見です。ですが私はこれは必要な事だと認識しています。私はマルクトに戻りますが、皆さんはどうされますか?」
暗にジェイドは譲る気はない、駄目だと言おう物なら自分一人で戻ると言うと語っている。だがティア達は同じように表情を意に決させて迷いなく答える。
「私も・・・行きます」
「・・・旦那、俺も行くぜ」
「僕の役目は和平の仲介をすることです。僕に異論はありません」
「ですね!」
「私も行きますわ!」
皆が同じ想いを燈し、ジェイドの問いに自らもと答える。それを見てジェイドは一瞬軽く口元を緩め、表情を引き締め直すとアルマンダインに向き直る。
「・・・という訳です。私達に任せてはいただけないでしょうか?」
「・・・わかりました。こちらにとっても願ってもない願い出。こちらからもお願いいたす」
ジェイドの言葉にアルマンダインは即決で丁寧に頭を下げ、書簡を差し出す。
「・・・確かに」
それを受け取るとジェイドは懐に納める。手元から書簡がなくなった事を確認するとアルマンダインは頭を上げる。
「ではすぐに馬車を用意します。カイツールの国境まではその馬車にお乗りください」
「ありがとうございます」





・・・それからすぐに馬車の用意は整い、ジェイド達を乗せて馬車はカイツールへと走り去って行った。





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