救う者と救われるもの 第十三話

‘ブォー’
船の到着の汽笛の音が船に響く。それを聞いたジェイド達は表情を皆が皆引き締め、再開の時を心待ちに接岸を待った。






港が慌ただしい、その現状に船から降りたジェイド達は何だと訝しむ。すると基地の前で何やら腕を組み、悩んでいるように頭を何回も捻っているアルマンダインを発見する。
「・・・ちょうどいいですね。アルマンダイン伯爵に話を聞きましょう」
「そうだな」
現状を知るにはアルマンダインに聞く、ジェイドの問い掛けに皆が頷く。



「・・・アルマンダイン伯爵!」
「・・・っ!・・・ナタリア王女!?それに導師・・・死霊使いまで・・・」
考え事に集中していたらしく、アルマンダインはナタリアの声に慌てて振り向く。だが一行のメンツを見て、アルマンダインは何故だという驚きを見せる。
「ど、どうされたのですか?ナタリア王女・・・来ていただくことを知らせていただければお出迎えの準備をしていたのですが・・・?」
だがそれはあくまでも連絡無しにここに来たという驚きに見せるため、慌てて気転をきかせる。だがナタリアは勢いを止めず、アルマンダインに勢いよく詰め寄る。
「そんな事はどうでもいいのです!ルークはどこにいるのですか!?こちらに来ているのは分かっているのですよ!」
「・・・な、何をおっしゃられるのですか・・・!?ルーク様はケセドニアに戻られてここには・・・」
「隠し立てしないで下さい!」
そのような事はないと揺れながら答えるアルマンダインに、早く答えるようにと必死にナタリアは声をあげる。
「落ち着いて下さい。それではアルマンダイン伯爵も答えにくそうですよ?」
「・・・わかりましたわ」
ジェイドが場を収めるべきだと判断し、ナタリアをアルマンダインから引き離す。
「・・・失礼ですが伯爵。耳を貸していただいてよろしいでしょうか?」
「・・・耳?・・・いいでしょう」
ナタリアが下がりジェイドが何かあると言わんばかりに耳を出してくれと願い出す。何やら神妙にした態度にアルマンダインは何かあると、警戒しながらも耳をジェイドに向ける。ジェイドがそれを確認すると、アルマンダインに近づき耳打ちをする。



「我々も彼と同じように戻って来たのです」



「!?」
耳元で聞こえた言葉にアルマンダインはビクッと体を震わせる。
「私達は彼を助けたいと思いここまで来ました。彼はアクゼリュスにいるのではないのですか?教えてはいただけないでしょうか・・・?」
そして耳元からそっとジェイドは離れる。出来れば今すぐ答えを私達の前で言ってほしい、ジェイドの表情はその答えしか求めていないかのように強い意志を放っている。
「・・・残念ですが、ルーク様は既にここにはおられません。ルーク様はアクゼリュスの住民受け入れをマルクトに頼むように私に言われた後、ここを離れられました」
ジェイドの言葉は嘘ではないと態度から理解したアルマンダインは正直にここで起こった事実を明らかにする。だがアルマンダインの言葉に、一同は愕然とした表情になる。
「そんな・・・」
「また・・・追いつけなかったのか・・・俺達は・・・」
ティアとガイの言葉に呼応するようにジェイドを除き皆がうなだれる。その意気消沈した様子に、アルマンダインはあえて厳しい言葉を選ぶ。
「・・・皆様がどのような気持ちでここに来られたかは私は推し量る事くらいしか出来ません。ですがルーク様は自らの思いを叶える為に行動しておられるのです。そのように共に行動出来ないというだけで落胆をする有様、宿願を果たそうとしているルーク様に追い付く事だけを目的としたなら貴方方は逆にルーク様の足手まといになりますぞ?ルーク様を助け、そして人々の命を助ける事。それは遠く離れたこの地でも行える。そしてそれは自由に動ける貴方方も同様・・・違いますか?」
「「「「「「・・・!!」」」」」」
六人が六人、ハッと気付いたように表情を変える。助けたいと思った気持ちに偽りはない。だが追い付くという事だけを優先しては駄目なのだという事を。
「・・・ありがとうございます、アルマンダイン伯爵。気付かせていただいて・・・」
「いえ、過ぎた事を申し上げてしまいすみません」
すっきりした表情での謝意の言葉にアルマンダインはこれでいいと心で思う。彼らは捕われないで欲しい、これが全てだと。諭しを終えたアルマンダインの心中は申し訳ない表情とは裏腹に、満足感でいっぱいであった。





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