救う者と救われるもの 第十三話
「それではジェイド、お願いします」
「はい・・・私達の頼みはアクゼリュスに行く事なのですがそれで口裏を合わせていただきたいのです」
「口裏?」
「はい。その対象なのですが大詠師モース、及びに六神将のめくらましです」
「・・・ルークを追いかけていくために邪魔にならないように配慮するためのものか」
「その通りです」
「わかった・・・で、どのように言い訳を言えばいいのだ?」
「私は明日には導師を引き連れてバチカルを離れようと思っています。それでバチカルから私や導師の姿が見えなくなったという言葉を大詠師が口に陛下の所に来たら、こう言っていただきたいのです。『アクゼリュスに兵士を派遣するのをごまかしていたら死霊使いが文句を言ってきた。それでも尚まだと言っていたら散々嫌味を言われ、カイツールで待つから時が来たら手紙を寄越せと言って導師を連れて行った』、と」
「・・・それは構わないが、いいのか?自らの事をそのように悪く言って」
「今更別に気にしません。死霊使いという名を利用すれば大詠師もあぁ、と思うでしょう。それに今必要なのは名に縛られる事ではなく、世界を救うという実を取る事です。そうではないですか?陛下」
「・・・そうだな」
インゴベルトはジェイドの言葉に、しみじみルークを想い行動しているのだと感心をする。
「・・・それで導師はどのように言っているのだ?アクゼリュスに内密に行く事は」
「その前に一つ言わせていただきますが、導師には私達が過去に戻っている事は話してはいません。それを踏まえ、私達はアクゼリュスに妨害の手を入れられる前に内密に先に行かせてもらおうと陛下に上申しに行くと言ってきました」
「・・・何故、事情を説明していないのだ?」
「・・・下手に過去の事を説明すると、イオン様の最期を本人に言ってしまう事も有り得ると思いましたので・・・」
珍しく口を濁すジェイドに、ナタリアも俯き気まずそうになる。それを見たインゴベルトはルークの過去を思い返し、「すまない、続けてくれ」と先を促すように気まずさを払おうとジェイドに言う。
・・・ルークの腕の中で優しい笑みを浮かべ逝ったイオン。彼らとてイオンの死を受けて心を痛めなかった訳がない。そして今生きているイオンに死ぬ瞬間を看取ったなどと言えるはずがない。インゴベルトは自分の失言に、反省をしつつジェイドの続きを待つ。
「・・・それで陛下、導師もそうなのですがナタリア王女とガイとティアも含めアクゼリュスに行くのを協力してはいただけないでしょうか?」
「お願いです、お父様!」
「・・・うむ、わかった。三人には死霊使いの同行を命じたと言っておこう。明日行くのであろう?後始末はわしに任せて今日はもう休むがいい」
「ありがとうございます!お父様!」
「・・・無理な願いをお聞きいただき誠にありがとうございます。夜分遅く失礼しました」
丁寧に頭を下げ、ジェイドはナタリアに目を向け退出しようと合図する。
「失礼します、お父様」
それを見たナタリアも頭を下げ、ジェイドとともに部屋を後にしていった。
「・・・ナタリア達も戻って来た、か・・・」
二人の出て行った扉が閉まるのを確認すると、インゴベルトは早速机に向かう。
「・・・わしの役目はルーク達を無事につつがなく動けるように配慮すること。そのためならどんな苦労でも喜んで受けよう・・・」
自らの独断でジェイド達を誰にも知らせず送り出すのだ。陛下は何を考えているのだと、口々に言われるのが簡単に想像出来る。
だが陰口を叩かれ白い目で見られようと、ルークを助ける。その想いを胸に、ナタリア達をルークの支えのために送る。インゴベルトは迷いなど見せず、机の上の紙に話に出ていた物の手続きを承認したという文章を一心不乱に書いていった。
その翌日、ジェイド達はイオンも含めバチカルを出港した。インゴベルトの配慮もあり、モースに入る情報の制限のおかげで何事もなくケセドニアまでたどり着き、そこからまたトラブルもなくカイツールに行く船に乗れたのだ。
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「はい・・・私達の頼みはアクゼリュスに行く事なのですがそれで口裏を合わせていただきたいのです」
「口裏?」
「はい。その対象なのですが大詠師モース、及びに六神将のめくらましです」
「・・・ルークを追いかけていくために邪魔にならないように配慮するためのものか」
「その通りです」
「わかった・・・で、どのように言い訳を言えばいいのだ?」
「私は明日には導師を引き連れてバチカルを離れようと思っています。それでバチカルから私や導師の姿が見えなくなったという言葉を大詠師が口に陛下の所に来たら、こう言っていただきたいのです。『アクゼリュスに兵士を派遣するのをごまかしていたら死霊使いが文句を言ってきた。それでも尚まだと言っていたら散々嫌味を言われ、カイツールで待つから時が来たら手紙を寄越せと言って導師を連れて行った』、と」
「・・・それは構わないが、いいのか?自らの事をそのように悪く言って」
「今更別に気にしません。死霊使いという名を利用すれば大詠師もあぁ、と思うでしょう。それに今必要なのは名に縛られる事ではなく、世界を救うという実を取る事です。そうではないですか?陛下」
「・・・そうだな」
インゴベルトはジェイドの言葉に、しみじみルークを想い行動しているのだと感心をする。
「・・・それで導師はどのように言っているのだ?アクゼリュスに内密に行く事は」
「その前に一つ言わせていただきますが、導師には私達が過去に戻っている事は話してはいません。それを踏まえ、私達はアクゼリュスに妨害の手を入れられる前に内密に先に行かせてもらおうと陛下に上申しに行くと言ってきました」
「・・・何故、事情を説明していないのだ?」
「・・・下手に過去の事を説明すると、イオン様の最期を本人に言ってしまう事も有り得ると思いましたので・・・」
珍しく口を濁すジェイドに、ナタリアも俯き気まずそうになる。それを見たインゴベルトはルークの過去を思い返し、「すまない、続けてくれ」と先を促すように気まずさを払おうとジェイドに言う。
・・・ルークの腕の中で優しい笑みを浮かべ逝ったイオン。彼らとてイオンの死を受けて心を痛めなかった訳がない。そして今生きているイオンに死ぬ瞬間を看取ったなどと言えるはずがない。インゴベルトは自分の失言に、反省をしつつジェイドの続きを待つ。
「・・・それで陛下、導師もそうなのですがナタリア王女とガイとティアも含めアクゼリュスに行くのを協力してはいただけないでしょうか?」
「お願いです、お父様!」
「・・・うむ、わかった。三人には死霊使いの同行を命じたと言っておこう。明日行くのであろう?後始末はわしに任せて今日はもう休むがいい」
「ありがとうございます!お父様!」
「・・・無理な願いをお聞きいただき誠にありがとうございます。夜分遅く失礼しました」
丁寧に頭を下げ、ジェイドはナタリアに目を向け退出しようと合図する。
「失礼します、お父様」
それを見たナタリアも頭を下げ、ジェイドとともに部屋を後にしていった。
「・・・ナタリア達も戻って来た、か・・・」
二人の出て行った扉が閉まるのを確認すると、インゴベルトは早速机に向かう。
「・・・わしの役目はルーク達を無事につつがなく動けるように配慮すること。そのためならどんな苦労でも喜んで受けよう・・・」
自らの独断でジェイド達を誰にも知らせず送り出すのだ。陛下は何を考えているのだと、口々に言われるのが簡単に想像出来る。
だが陰口を叩かれ白い目で見られようと、ルークを助ける。その想いを胸に、ナタリア達をルークの支えのために送る。インゴベルトは迷いなど見せず、机の上の紙に話に出ていた物の手続きを承認したという文章を一心不乱に書いていった。
その翌日、ジェイド達はイオンも含めバチカルを出港した。インゴベルトの配慮もあり、モースに入る情報の制限のおかげで何事もなくケセドニアまでたどり着き、そこからまたトラブルもなくカイツールに行く船に乗れたのだ。
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