救う者と救われるもの 第十二話

「えっ・・・?」
「・・・いいのか?」
まさかシンクから自分達の望む答えを先にいただくことが出来た事に、二人は本気で呆気にとられる。
「言ったろ?僕はこいつらの為に行くって。こいつらがおまえらに協力したいって言って聞かないから僕もついていくんだ・・・それに今更僕は六神将の所に戻る気はない。下手にリグレット達に情報を伝えて、あんたらだけじゃなくフローリアンにまで被害に遭わせる訳にはいかないしね」
両手を広げ、やれやれといった感じで首をすくめるシンクの顔は皮肉げではあるがその言葉は思いやりを感じる。
「・・・いいだろう。ルーク、お前もそれでいいはずだ」
「・・・うん!」
二人はシンクの今までにない変化に、ジューダスは同行を許可し、ルークはジューダスの問い掛けに満面の笑みをシンクに向け・・・
「・・・うわっ!?」
勢いよく走りだし、熱い抱擁をシンクにお見舞いした。流石にそうくるとは思っていなかったシンクはなす術もなく、ルークに抱き着かれる。
「ちょっ、ちょっと・・・何をするのさ・・・!」
もがきながらシンクはルークに離せよと、批難を向ける。すると、ルークから声が聞こえてきた。
「よかった・・・シンク・・・よかった・・・」
「えっ・・・ちょっと・・・なんでそんな声をだすのさ、あんたが・・・」
その声はアリエッタとフローリアンにも負けないくらい、シンクを想った響きがこもっている。シンクは何故見ず知らずの自分にそのような声をあげるのかと、戸惑いの声を出す。
「・・・しばらくそうさせてやれ・・・それともお前がそうするのが嫌というなら、後で目の前でルークが泣いてもいいというなら僕が引きはがすが?」
暗にジューダスは出来る事ならそう言わないでくれと、断るのが難しい言い方をする。
「・・・分かったよ・・・けどなんでこうなってるのか、理由は聞かせてもらうからね」
シンクもやはり断る事が出来ず、ジューダスの言葉に応じる。だが表情は困惑といった感じだが、シンクは満更でもなさ気だ。
「・・・ああ・・・色々落ち着いてからだがな・・・」
その返事にジューダスは若干間を空けて、答え難そうながらも答え、それをごまかすかのように無言で目を閉じながら近くの壁に背を預ける。



返答に間が空いた理由、それはルークの事情を知らせるという事。偶然とはいえ、うまくいっている流れをジューダスは壊したくないが故に答える時を曖昧にしておこうと決めたのだ。






そして10分程も過ぎたところで、ルークはシンクから身を離す。
「「大丈夫(です、か)?ルーク」」
ルークが落ち着いた事に、アリエッタとフローリアンは心配したという声をかける。
「うん、大丈夫。ありがとう二人とも。それと、ごめんシンク」
二人に向けられた顔はふんわり軟い笑み、そしてシンクに向けられたのは申し訳なさそうな表情。
「・・・いいよ、別に。それよりこれからどうするの?」
「とりあえずもう一度この先にあるセフィロトの中に戻る。制御板を操作しにな」
シンクの疑問に壁に背を預ける状態からジューダスが四人に近づき、疑問に答える。
「・・・ま、色々聞きたい事はあるけど、今は後でにしておくよ・・・じゃあ、行こう」
喋りながらも、シンクはジューダスに弾かれた仮面を取りまた被る。
「シンク・・・もう仮面、必要ない、です」
その動作を見たアリエッタはシンクの仮面に手をかけながら外そうとする。だがシンクはアリエッタの手を取り、仮面から離れさせる。
「悪いけど・・・そんなアリエッタがいいって言っても回りにイオンそっくりな顔を見せる訳にはいかないんだ。それに下手に注目を浴びたくもないだろ?」
「ああ、だから仮面はしばらくの間は外してはいかん。だから理解してくれ、アリエッタ」
「・・・わかった、です」
シンクとジューダスの言葉にさみしげにアリエッタは了承を示す。
「・・・仮面を外す時はいずれくる。それまでの辛抱だ」
「・・・はい!」
その様子を見てジューダスが励ましの言葉をかける。言葉をかけた後は先に歩んでいったジューダスに嬉しそうに返事を返し、アリエッタも奥へと歩んでいった。






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