救う者と救われるもの 第十二話

「それでは戻るぞ。とりあえずアリエッタ達にもこのことを伝え、一緒に来てもらうように説得にな」
「え・・・説得?」
「ローレライが言っただろう、アリエッタに六神将から離れて欲しいと。だがシンクまでここに来た以上事情が変わった。下手にシンク達を自由にさせれば戻らない二人を探しに来た六神将が二人を捕らえ、情報を吐かせようとやっきになるかもしれん。それにフローリアンをカイツールに置いていく訳にもいかん。あいつはまだ目覚めたばかりで頼る者も少ない。それにシンクから離れるとなればフローリアンはいい顔をしないだろう。しばらく状況が落ち着くまでは三人と共に旅をするべきだ」
「あっ・・・そうか・・・そういう事なら三人一緒にしばらくはいたほうがいいかも・・・」
『・・・決まりだな。三人を説得に行くぞ』
「・・・そうだ、ローレライ。セフィロトのリングの連結を限界がきたら自動で切ったとしてもってジューダスが言ってたけど、実際にそんな事って出来るのか?」
『可能だ。条件を詳しく入力すれば大地の崩壊を招く事なく無事にアクゼリュスを魔界に自動的に下ろす事が出来る。ただそうするなら三人を説得した後すぐに制御板に行って条件を入力することだ。後数週間あると思われるが、楽観視して降下に巻き込まれないようにしたければな』
「・・・よしわかった」
『では我は先程同様指輪に宿りながらついていく事にする』
そういうと、ローレライはまた指輪に収まる。
『話だけならこの状態でも普通に可能だ。何か我の出てこなければいけないような用があれば出てくれと言ってくれ』
「わかった・・・では戻るぞ」
「うん」
指輪に戻ったローレライに返事を返すと、ルーク達はアリエッタ達の元へと戻っていった。






セフィロトへと続く扉の前まで戻ると、そこには先程までの慟哭に等しい声をあげていたシンクがなにやら泣き後の見える顔で意を決したように立っていた。



「・・・大丈夫なのか?シンク」
「・・・おかげさまですっかりこの通り、僕らしくない惨めな姿を晒したよ」
心配をするルークに、シンクは彼らしい毒のある態度で返す。だが以前に比べ、声のトーンに刺がなく軽い冗談を言っているかのように聞こえる。
「・・・この二人から話は聞いたよ。オリジナルが死んだっていうのを聞いたのも、こっちのフローリアンが助かったっていうのもあんたのやったことだって?ルーク」
「・・・そうなる、のかな?」
「なんで自信がないんだよ、あんたは」
フゥ、と頭を抱えるシンク。するとシンクの後ろにいた二人がシンクにちょっと軽く怒った程度の顔で近づく。
「駄目です、シンク。そんなこと言ったら」
「そうだよ!シンクの恩人でもあるんだから」
「・・・わかったよ」
何があったというのだろうか?二人はシンクを不承不承ながらも謝らせる言葉を出させている。
「・・・何があったんだ?アリエッタ、それにフローリアン・・・?」
「それはね「ちょっと待った!僕が話す!だからあんたは黙ってて!いいね!?」
あまりの剣幕にフローリアンはただコクりと首を縦に振る。ポカンと豹変振りの激しさにルーク達がその様子を見ていると、シンクはゴホンとわざとらしく大きな咳ばらいをして間を取り直すと、シンクは表情を真面目にして話し出す。
「・・・ま、あんまり言いたくないんだけどさ・・・フローリアンの言葉を聞いて・・・泣いた、だろ?僕・・・」
泣いたという部分は余程恥ずかしかったのか、やたら小声でルーク達の耳に届いてきた。
「それでさ・・・やたらこいつらの声が怖かった・・・何言ってるんだ、どうしてこんなこと平気で言えるのかって・・・でも僕に触れてきた体温が・・・今まで感じた事がないくらい暖かかったんだ・・・で、認めたくないけど、これが温もりなのかなって怖いって思う中でも感じたんだ。いや、それが怖いって気持ちも消していった・・・僕は正直、温もりなんて無意味だと考えもしなかった。・・・けど心地いいって、知ってしまったから・・・言いたくないけど・・・こいつらをほっとけないんだ。だからあんたらに頼みがある」



「僕もこいつらと一緒に連れて行ってくれ、頼む」







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