救う者と救われるもの 第十二話

「・・・ルーク、少しシンクが落ち着くまでここから離れるぞ。今後の方針についても多少変更しなければいけない事が出来た。ここで話しても気まずいだけだ」
「・・・あっ、わかった。行こう」
多少の間を空け、ジューダスは場を外そうとルークに促す。ルークもジューダスの言葉に了承を返し、肩を震わせているシンク達を見ながら退出していった。






二人がある程度離れた通路に位置をつけると、ジューダスがおもむろに切り出す。
「どういう事だ?ルーク。何故フローリアンがここにいる?」
『・・・それは我がルークに頼まれたからフローリアンを地核から連れて来たんだ』
そのジューダスの疑問の声に、ローレライがすぐさま指輪から出てきて質問に答える。
「・・・!・・・まさかお前がローレライ、なのか?」
『いかにも・・・多少事が起こりすぎて何やら混乱しているだろう。事情をまずは把握するために情報交換をするぞ』
「・・・ああ」
ローレライが現れた事に平静を保てていないジューダス、ローレライはそれを見て話し合いの時間を設ける事にした。






「・・・成程、そういう事か。上手くいったからよかったが、下手をすれば最悪の流れになるところだったな・・・」
「仕方ないんじゃないか?誰もあんな風になるなんて思ってもいなかったんだし・・・」
『あえて誰がどうだと言って責める事など出来ん。偶然が重なったが故の出来事だ、一連の流れはな』
「ああ、そうだ。だがこれ以上の揉め事はゴメンだ。今の僕らには必要外のトラブルは命取りになりかねん。だからこれからはより一層進行速度をあげていく」
「あげれるのか?ジューダス」
「指輪の力でセフィロト操作が出来る、というのを確認出来た時点でイオンとティアに協力を願い出に行く手間が省けた。その分は余裕が出来た」
『成程・・・』
「そこでローレライ、是非とも協力してもらいたい事がある」
『なんだ?』
「今は音譜帯に行かず、全てが終わるまで僕たちと行動を共にしてくれ」
『それは我もそうするつもりであったから別に構わん。だがジューダス、お前の言い方では我に何やらやらせようとしているようだが・・・?』
「ああ、その通りだ。そしてその役目はお前以外には果たせない」
『・・・詳しくは後で聞こう。とりあえずはこれからの行動方針を聞こう』
「まずはアルマンダイン伯爵にマルクトへの和平への橋渡しの書簡を出してもらうために港に戻る。それと・・・インゴベルト陛下にヴァンの釈放を命じさせる為の手紙もな」
「えっ!?どうしてなんだ!?バチカルに師匠がいたほうがいいんじゃあ・・・?」
「これからの僕たちはセフィロト巡りを目的に世界を回る。だが・・・アクゼリュスのパッセージリングは誰かの手を加えなくてもそう長くは持たんのだろう?ローレライ」
『・・・そうだ。もって数週間といったところだ』
「それを踏まえればまずセフィロトをいくつか回った時点で確実にアクゼリュスは崩落する。例え魔界にアクゼリュスを限界が来たら自動降下を設定するにして無事に下ろしても、確実にそれから一週間後にはアクゼリュスが無くなったと世界にはお触れが渡る。そうなればヴァンはバチカルに拘束される理由もなくなり、解放されたヴァンは明らかな異変を感じ取り何やら行動を開始するのが目に見えている。それこそなりふり構わない行動を起こすきっかけになりかねん。事情が変わったから最悪セフィロトを全て壊せば預言通りにはならない、とな。だからインゴベルト陛下にはこう言った内容の指令を出してくれと願う。‘アクゼリュス派遣まではベルケンドで待つように、事情が変われば即座に呼び出すから離れないように’、と。バチカルに不等拘束でいつまでも縛り付ける訳にもいかないからベルケンドで待て、とでも言えばモースもヴァンも従うだろう。そして奴に入って来る情報を制限させるようにすればヴァンの行動は必然遅れる事になり、僕たちはバチカルへとモースが戦争を提言しているときに悠々と戻れる、そこで僕たちは預言の通りに動こうとしているモース以下の戦争肯定派を止めるという訳だ」
「あ・・・!」
『・・・そういう事か』
ルークとローレライはジューダスの発案に感嘆した声をあげる。
「セフィロトをある程度まで回るまではこれでいいはずだ。異論があるなら今のうちに言ってくれ」
その言葉にルーク達は否定を返さず頷く。これでいい、二人はジューダスの発案に従うことを決めた。







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