救う者と救われるもの 第十二話

・・・露になったイオンと同じ顔、シンクは広くなった視界を見て止まってしまう。



(まずい・・・アリエッタに顔を見られた・・・どうする・・・?撤退?それは駄目だ。コイツがいるのにそんな簡単にいくはずがない。同じ理由でアリエッタを強制で連れていけるはずもない・・・それにどう説明するんだ?僕の顔の事を・・・?)
この流れはどう転んでも自らに有利な流れにはならない、シンクがどう切り抜けるべきかと混乱しながらも考えていると思考の対象のアリエッタからの声が届いてきた。



「・・・シンク・・・シンクもイオン様のレプリカ、だった、ですか・・・!?」
「・・・えっ!?」
愕然としながらも届いたアリエッタの声は自分も、というレプリカの存在を知っているもの。シンクは何故、と戸惑う。
「君も・・・僕と同じなの・・・?」
そこに更にフローリアンがシンクに近づきながら声をかける。
「・・・なっ、何だよ!?一体!!どういう事なんだよ、これは!?」
訳が分からない、シンクはこの状況に理解がついてくるはずもなく、近づいてきたフローリアンに不安げな面持ちの強がりで怒鳴りちらす。



「・・・正直僕も理解が出来ん。ルーク、この状況はどういう事なんだ?」
そのシンクの声にジューダスもフローリアンがいることに疑問を隠せず、ルークの隣に剣を納めて近寄り質問する。
「いや・・・俺もあまりわからないんだ・・・ただアリエッタがジューダスの所に誰か来てるっていうから急いで来たんだけど・・・まさかシンクが来て、こんな事になるなんて思ってなかったから・・・」
返事を返すルークの表情も暗さが見える。誰もが予想外の事態、ジューダスは誰も責める事など出来ないと「そうか」と返す。



「シンク・・・アリエッタ、知った、です。本当のイオン様、死んだって」
「なっ!?」
事情を知らないシンクにアリエッタは自らの言葉で説明をしようと、意を決して話を切り出す。だが、ストレートな話し方にシンクはペースを掴み直す事が出来ずに混乱しか出来ない。
「シンク、アリエッタ、知ったです。今のイオン様がレプリカのイオン様だって事も・・・今のイオン様以外はザレッホ火山に落ちた事・・・」
「なんで・・・なんで知ってるんだよ!!それにそこにいるのは間違いなくあの時火山に落ちたレプリカのイオンじゃないか!!・・・僕以外生きてるはずがない・・・レプリカのイオンは今のイオンを除いたら僕以外いるはずがないんだ・・・!」
知りたいことは色々あるが、シンクにはなによりフローリアンの存在が気にかかっていた。
「僕はルークに助けてもらったんだ。だから僕はここにいるんだよ」
フローリアンの言葉にシンクはパッとルークを見る。今までジューダスとアリエッタとフローリアンに注視していたが、ルークの存在があることにシンクは初めて注意を持っていく。
「シンク・・・シンクはどうして仮面で顔を隠して六神将、やってるですか?シンク・・・その・・・シンクも火山に落ちたんじゃ・・・ない、ですか?」
だがシンクはルークを見据える時間もなく、アリエッタからの言い出し難そうな声が先程より近い位置で耳に届く。それにふっとアリエッタに向き直ると、いつの間にか泣きそうな上目使いの表情のアリエッタにシンクは肩を掴まれていた。
「教えて下さい、です。シンク・・・」
「・・・いいよ、話してやる・・・」
事実は何故かは知らないがアリエッタは全て知ってしまっている、シンクはもう黙る必要もない、どうせならめちゃめちゃにしてやろうと半ば開き直りの形でアリエッタに話をすることにした。








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