救う者と救われるもの 第一話
「ここから南に向かえばカイツールに行ける。それじゃあな」
馬車がエンゲーブにたどり着き、三人は御者と別れを告げた。ちなみにジューダスは「急ぐ旅ではない。この村で僕は降りて歩いて首都に向かわせてもらう」と言い、馬車に乗ることを断った。
(さて・・・話を・・・っ・・・何だ?急に眠気が・・・)
エンゲーブに着き、ようやく話が出来ると思いルークに近付こうとしたジューダス。しかし、ジューダスに突然眠気が襲ってきた。
「・・・どうしたの?顔色が良くないわ」
ジューダスの異変を感じたティア。事実ジューダスの顔にはありありと疲れが見えている。
(くっ・・・認めたくはないが眠気がきつい・・・)「・・・馬車の中で眠っていないんだ。すまんが宿に向かわないか?」
いかにも辛いというのが伝わる程にきつそうなジューダス。
「そうね、とりあえず宿に向かいましょう」
体調が優れない人を放っては置けないと、ティアは宿に行くことに賛成した。しかし、ルークが浮かない顔をしたことに二人は気付いていない。
(やっぱり・・・)
ルークの過去の経験から今の時間には食糧盗難騒動があることを知っていた。
(宿はしばらくあかないんだよなぁ・・・)
辛そうな表情で立っているジューダスにどうにか出来ないかと、考えるルーク。すると辛そうにしている本人から言葉が出てきた。
「・・・すまんが僕は村外れで寝てくる」
「え?」
「夕刻になれば宿に向かう・・・」
そう言い残し、ジューダスは二人から離れて行った。
「彼・・・相当辛そうだったわね」
ティアの言葉にルークは不安になる。そこでルークは、
「なあティア、俺あの人の所に行ってくるよ。すっごく辛そうだったし、誰かいないと・・・」
付き添いを申し出た。
「そうね、じゃあお願い出来るかしら?」
「うん!!」
案に賛同したティア、その返事を聞いた瞬間ルークは嬉しそうに表情を綻ばせてジューダスの後を追った。
(ここらでいいか・・・)
村外れの手頃な木にもたれかかるジューダス。目を閉じればいっそ心地好い程に眠気がジューダスの意識を奪い去ろうとしていた。
(・・・久し振りに体を動かした反動なのかもな)
まだ僅かに残る意識で眠気の原因を探ってみると、ふと筋肉痛を思い出す。体をしばらく動かさず、久し振りに運動させると筋肉痛が起こりやすいというのを聞いた事がある。恐らくは似たような物ではないかとジューダスは推測した。
後少しで眠りに入るだろうと思われた瞬間、ジューダスは人の気配を感じた。
「・・・俺もここにいていい?」
「・・・好きにしろ」
その言葉を最後にジューダスは意識を手放した。
「俺・・・本当に生きているんだなぁ・・・」
ジューダスが熟睡している横で自分の手を握り開きして呟くルーク。
「・・・今更だけどやっと生きてるって実感が沸いてきちゃった」
微笑を浮かべるルーク。ローレライから過去に戻されて今に到るまで巻き込んでしまった隣の人物の事をずっと考えていた。少し状況が落ち着いた事で自分の事に気を回す余裕が出てきたようだ。
「今度は絶対助けてみせる、絶対に・・・」
自らが戻ってきた理由、前は助けられなかった人達を助ける・・・新たな決意に偽りなどない。
「みんな・・・俺、頑張るよ・・・」
握り拳を作り天を見上げ、ルークは本来の時間帯にいる仲間に健闘を誓った。
深淵に身を落とした英雄と運命を裏切った英雄は揃った
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馬車がエンゲーブにたどり着き、三人は御者と別れを告げた。ちなみにジューダスは「急ぐ旅ではない。この村で僕は降りて歩いて首都に向かわせてもらう」と言い、馬車に乗ることを断った。
(さて・・・話を・・・っ・・・何だ?急に眠気が・・・)
エンゲーブに着き、ようやく話が出来ると思いルークに近付こうとしたジューダス。しかし、ジューダスに突然眠気が襲ってきた。
「・・・どうしたの?顔色が良くないわ」
ジューダスの異変を感じたティア。事実ジューダスの顔にはありありと疲れが見えている。
(くっ・・・認めたくはないが眠気がきつい・・・)「・・・馬車の中で眠っていないんだ。すまんが宿に向かわないか?」
いかにも辛いというのが伝わる程にきつそうなジューダス。
「そうね、とりあえず宿に向かいましょう」
体調が優れない人を放っては置けないと、ティアは宿に行くことに賛成した。しかし、ルークが浮かない顔をしたことに二人は気付いていない。
(やっぱり・・・)
ルークの過去の経験から今の時間には食糧盗難騒動があることを知っていた。
(宿はしばらくあかないんだよなぁ・・・)
辛そうな表情で立っているジューダスにどうにか出来ないかと、考えるルーク。すると辛そうにしている本人から言葉が出てきた。
「・・・すまんが僕は村外れで寝てくる」
「え?」
「夕刻になれば宿に向かう・・・」
そう言い残し、ジューダスは二人から離れて行った。
「彼・・・相当辛そうだったわね」
ティアの言葉にルークは不安になる。そこでルークは、
「なあティア、俺あの人の所に行ってくるよ。すっごく辛そうだったし、誰かいないと・・・」
付き添いを申し出た。
「そうね、じゃあお願い出来るかしら?」
「うん!!」
案に賛同したティア、その返事を聞いた瞬間ルークは嬉しそうに表情を綻ばせてジューダスの後を追った。
(ここらでいいか・・・)
村外れの手頃な木にもたれかかるジューダス。目を閉じればいっそ心地好い程に眠気がジューダスの意識を奪い去ろうとしていた。
(・・・久し振りに体を動かした反動なのかもな)
まだ僅かに残る意識で眠気の原因を探ってみると、ふと筋肉痛を思い出す。体をしばらく動かさず、久し振りに運動させると筋肉痛が起こりやすいというのを聞いた事がある。恐らくは似たような物ではないかとジューダスは推測した。
後少しで眠りに入るだろうと思われた瞬間、ジューダスは人の気配を感じた。
「・・・俺もここにいていい?」
「・・・好きにしろ」
その言葉を最後にジューダスは意識を手放した。
「俺・・・本当に生きているんだなぁ・・・」
ジューダスが熟睡している横で自分の手を握り開きして呟くルーク。
「・・・今更だけどやっと生きてるって実感が沸いてきちゃった」
微笑を浮かべるルーク。ローレライから過去に戻されて今に到るまで巻き込んでしまった隣の人物の事をずっと考えていた。少し状況が落ち着いた事で自分の事に気を回す余裕が出てきたようだ。
「今度は絶対助けてみせる、絶対に・・・」
自らが戻ってきた理由、前は助けられなかった人達を助ける・・・新たな決意に偽りなどない。
「みんな・・・俺、頑張るよ・・・」
握り拳を作り天を見上げ、ルークは本来の時間帯にいる仲間に健闘を誓った。
深淵に身を落とした英雄と運命を裏切った英雄は揃った
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