救う者と救われるもの 第十二話
(え・・・?)
イオンの言葉にバッと頭をアリエッタが上げるとそこには笑みを浮かべたイオンではなく、ただ泣きそうなのを我慢しているイオンの姿があった。
「僕は預言が嫌いです。それはこの預言に浸りきった世界も同様、あなたに協力してはいますが預言を覆そうと預言に反旗を掲げて預言に囚われているあなたも多少マシ程度、ですが・・・アリエッタだけは僕は嫌いになれないんです・・・彼女には知らない事が辛い事になるとは思います。ですがそれでも彼女には僕の分まで生きて欲しいんです・・・」
そういうとイオンは顔が見えない程、深々と頭を下げる。
「お願いします、ヴァン。彼女を・・・アリエッタをよろしくお願いします・・・」
断腸の思いのイオンの一言は何よりもアリエッタを慈しんでいる、アリエッタは理屈抜きでイオンからの今までの流れの言葉は本当なのだと理解し、涙をぽろぽろ溢れ出させてくる。
(イオン様・・・!)
「・・・わかりました」
涙を流しながらもアリエッタが様子を見ていると、ヴァンが了承で返す。
「ありがとうございます・・・これで話も終わりでしょう?ヴァン、僕を一人にしてくれませんか?」
「はい、それでは失礼します。導師」
頭を下げたままのイオンの言葉にヴァンは礼を取り、部屋を退出していく。ドアが閉まり、足音が遠ざかって行ったのを二人が確認するとイオンから何か音が聞こえてきた。
「うっ・・・グスッ・・・死にたくない・・・死にたくないよぉ・・・」
・・・それは誰が聞いても分かる、啜り泣きの声。
(イオン様!大丈夫ですか・・・!?)
涙を見せながらもアリエッタはイオンに近づこうとする。するといきなり今までの風景がいきなりガラスが砕けるかのように、二人を残して何もない空間へと早変わりした。
「・・・一体何だったの?今の」
いきなり変わった雰囲気にフローリアンがしばしの静寂を破って発言する。するとその何もない空間に突然ローレライが現れた。
『理解したか、アリエッタ?今見せた物の意味が』
「・・・はい」
質問に暗い顔ながらもアリエッタははっきりと答える。
「・・・今のイオン様、イオン様と違う、です。今のイオン様、レプリカのイオン様、です。それはわかりました。けど・・・フローリアンはどうした、ですか?」
言葉足らずなアリエッタだが、言いたい事はローレライに伝わって来た。
『フローリアンも確かにレプリカのイオンだ。だが、フローリアンは今のイオンよりも昔のイオンに近い能力を持っていなかった・・・故にイオンとは違い、導師の代わりとしてフローリアンは存在することが出来なかったのだ』
「・・・じゃあ今までフローリアンはどこにいた、ですか?」
核心を聞きたいと目を向けるアリエッタ、その質問の答えに移る前にローレライは神妙な雰囲気になってアリエッタに問い掛ける。
『その前に聞くが、イオンはもう生きてはいないことは理解しているだろう。お前はこれからどうするのだ?』
「・・・確かにイオン様、もういないのは知って嫌だったです。けど、イオン様言ったです。自分の分まで生きて欲しいって。だからイオン様の分までアリエッタ、精一杯生きる、です・・・アリエッタ、事実を全部知りたいです。だから、教えて下さい」
暗い顔から決意に満ちた表情を見せてきたことにローレライはこれならいけるという核心を得た。
(導師よ・・・下手に事情を隠さず、アリエッタに事情を伝えればよかったな・・・アリエッタは強い子だ、悲しむとは思ったのだろうが乗り越える事は想像しなかったのか?)
大事にしていたが故に悲劇を作る羽目になった、もう少しアリエッタを強い子だと認識していたら結末も自ずと変わっただろうとローレライが思いながらアリエッタを見る。
『いいだろう。話そう、フローリアンの事を』
「「はい(うん)」」
このローレライの言葉にフローリアンも返事をする。知りたいという視線を二人分受けながらローレライは語りだす。
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イオンの言葉にバッと頭をアリエッタが上げるとそこには笑みを浮かべたイオンではなく、ただ泣きそうなのを我慢しているイオンの姿があった。
「僕は預言が嫌いです。それはこの預言に浸りきった世界も同様、あなたに協力してはいますが預言を覆そうと預言に反旗を掲げて預言に囚われているあなたも多少マシ程度、ですが・・・アリエッタだけは僕は嫌いになれないんです・・・彼女には知らない事が辛い事になるとは思います。ですがそれでも彼女には僕の分まで生きて欲しいんです・・・」
そういうとイオンは顔が見えない程、深々と頭を下げる。
「お願いします、ヴァン。彼女を・・・アリエッタをよろしくお願いします・・・」
断腸の思いのイオンの一言は何よりもアリエッタを慈しんでいる、アリエッタは理屈抜きでイオンからの今までの流れの言葉は本当なのだと理解し、涙をぽろぽろ溢れ出させてくる。
(イオン様・・・!)
「・・・わかりました」
涙を流しながらもアリエッタが様子を見ていると、ヴァンが了承で返す。
「ありがとうございます・・・これで話も終わりでしょう?ヴァン、僕を一人にしてくれませんか?」
「はい、それでは失礼します。導師」
頭を下げたままのイオンの言葉にヴァンは礼を取り、部屋を退出していく。ドアが閉まり、足音が遠ざかって行ったのを二人が確認するとイオンから何か音が聞こえてきた。
「うっ・・・グスッ・・・死にたくない・・・死にたくないよぉ・・・」
・・・それは誰が聞いても分かる、啜り泣きの声。
(イオン様!大丈夫ですか・・・!?)
涙を見せながらもアリエッタはイオンに近づこうとする。するといきなり今までの風景がいきなりガラスが砕けるかのように、二人を残して何もない空間へと早変わりした。
「・・・一体何だったの?今の」
いきなり変わった雰囲気にフローリアンがしばしの静寂を破って発言する。するとその何もない空間に突然ローレライが現れた。
『理解したか、アリエッタ?今見せた物の意味が』
「・・・はい」
質問に暗い顔ながらもアリエッタははっきりと答える。
「・・・今のイオン様、イオン様と違う、です。今のイオン様、レプリカのイオン様、です。それはわかりました。けど・・・フローリアンはどうした、ですか?」
言葉足らずなアリエッタだが、言いたい事はローレライに伝わって来た。
『フローリアンも確かにレプリカのイオンだ。だが、フローリアンは今のイオンよりも昔のイオンに近い能力を持っていなかった・・・故にイオンとは違い、導師の代わりとしてフローリアンは存在することが出来なかったのだ』
「・・・じゃあ今までフローリアンはどこにいた、ですか?」
核心を聞きたいと目を向けるアリエッタ、その質問の答えに移る前にローレライは神妙な雰囲気になってアリエッタに問い掛ける。
『その前に聞くが、イオンはもう生きてはいないことは理解しているだろう。お前はこれからどうするのだ?』
「・・・確かにイオン様、もういないのは知って嫌だったです。けど、イオン様言ったです。自分の分まで生きて欲しいって。だからイオン様の分までアリエッタ、精一杯生きる、です・・・アリエッタ、事実を全部知りたいです。だから、教えて下さい」
暗い顔から決意に満ちた表情を見せてきたことにローレライはこれならいけるという核心を得た。
(導師よ・・・下手に事情を隠さず、アリエッタに事情を伝えればよかったな・・・アリエッタは強い子だ、悲しむとは思ったのだろうが乗り越える事は想像しなかったのか?)
大事にしていたが故に悲劇を作る羽目になった、もう少しアリエッタを強い子だと認識していたら結末も自ずと変わっただろうとローレライが思いながらアリエッタを見る。
『いいだろう。話そう、フローリアンの事を』
「「はい(うん)」」
このローレライの言葉にフローリアンも返事をする。知りたいという視線を二人分受けながらローレライは語りだす。
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