救う者と救われるもの 第十一話

左手にかざされた指輪に、ローレライは自らの身を左手に被せる。
ほんの数秒、ローレライは無言になる。そしてローレライは指輪を探り終えたようで、ルークから離れるとおもむろに切り出す。



『・・・今ルークがこの場に来た理由、それは未来の我が仕掛けた事だ』
「・・・え?」
『未来の我が考えていたのはルークは以前と同じ流れを通り、アクゼリュスで住民救出を試みるとな』
「あ・・・うん、確かにそうしようかと思ってた・・・」
正直な所で言えばジューダスが自分に付いてくると言わなければルークは以前の流れの通りに進みつつ、その流れを徐々に変えていくつもりであった。
『そう考えていた未来の我はヴァン・グランツとの対峙する前にダアト式封呪をその指輪に解除させ、先にセフィロトにルークを行かせ我の解放をさせようとしていた』
「・・・していた?」
『嬉しい誤算・・・というべきか、ヴァン・グランツを警戒する必要が無くなったのだ。今この場には当の本人がいないからな』
「・・・っ!ジューダス・・・!」
ローレライの言う嬉しい誤算とは間違いなくジューダス、今この場にヴァンがいないのは紛れも無くジューダスが自分に進言してくれた事によるものだ。
『・・・正直我も驚いている。この指輪からもたらしてくれたものにはジューダスなる人物とのルークの旅の様子も見えた。だが、まさかここまで自らの考えを持って流れを覆してくれるとは思っていなかった。もちろん個人の力量もあるのだろうが、預言のない世界の考え方というのは素晴らしい物なのだな・・・』
ローレライでさえも舌を巻いてジューダスの思考に絶賛の言葉を送る。だがそれはルークとしても同じであった。



誰だって予定されていた楽な流れがあればそこから意図的に外れようとはしない。預言に少なからず頼る生活をしてきたルークも、以前を知っているという流れをくんで行動しようとしていた。それはすなわち、預言に従うのと同じ事。だがジューダスは違った。

流れを見て敢えて別の方向へと向かう事の出来る決断力、不安要素を出来るだけの廃除をという慎重さ。1番近い似たような思考回路の人物はジェイドであるが、決定的に違う要素はやはり預言に浸かった事があるかないかだ。ジェイドも過去に戻ってはきたが、預言に似た過去の経験を頼りにしていたジェイドはジューダスの思惑については来れなかった・・・牢屋に囚われている人間と足枷がない自由な人間、どちらが伸び伸び自由な発想が出来るかは一目瞭然だ。

・・・ルークは実に心強い味方を得ていたのだと、申し訳ないながらも改めて実感した。



『・・・話は戻るが、ジューダスなる人物のおかげでヴァン・グランツはこの場にはいない。だがヴァンの配下の六神将らしき人物がアクゼリュスに来ているのだろう?』
「あっ!?」
ローレライからの話題変換にルークはハッとする。
『はっきりと誰かは来たのかはわからんのだろう。今から我が鍵を渡す。だからセフィロトの前に来たらすぐに我を解放しろ』
「あっ、うん!わかった!・・・あっちょっと待った、ローレライ!」
早く戻ろうとしていたルークであったが、何かを突然思い出したかのようにローレライに制止をかける。
「ローレライ、ローレライは地核の中は移動出来るのか?」
『薮から棒にどうした、ルーク』
質問の意図がわからないローレライはルークに質問する。するとルークは悲痛な顔でローレライに向かい合う。






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