救う者と救われるもの 第一話

(何だこの二人の態度の違和感は・・・)
ジューダスは目の前に座っているルークとティアの反応の違いに疑問を持っていた。



男との会話の後、馬車に乗り色々と考えているとジューダスが見たこともない陸艦が馬車を追い掛ける場面に遭遇した。ジューダスは自分の世界でどれだけの時間がかかればあのような陸艦を作れるのかという事を考えていると、女の方が「間違えた・・・」と言っていたのに対し、うつ向いている女に対して男は申し訳なさそうな表情で女を盗みみていた。それを見たジューダスは違和感を感じていた。それが先程の冒頭部分に当たる。


(この反応から男はエンゲーブとやらに行くことは予想していたようだ。しかし、女はそれを間違えたと言っている。それを敢えて伝えなかったのは何故だ?・・・考えられる可能性はいくつかあるが、僕が異次元空間にいたことを知っているというのなら答えは一つ。・・・この男が過去に時空移動してきた、だからエンゲーブとやらに行く事も『知っていた』という事になる。見た限り、女は何も知らないようだが・・・)

知ってるからこその態度と知らないからこその態度、それが違和感の正体だと確信した。


(だが・・・この男は見た所時空移動を自力で起こせる様には見えん。隣の女は除外せざるをえんな。ならば・・・認めたくはないがやはりフォルトゥナが生きているという事か?自分の手駒として・・・いや、有り得んな。見ただけで分かる。こいつはスタンやカイル達と同類のお人好しだ。必要悪というのを認めるような割りきりかたが出来るとは思えん。・・・分からん)
思考の渦に陥るジューダス。元々ジューダスは直感で動くタイプではない。思考を常に張り巡らせ、自らの思考を確立させた上で発言や行動を起こすタイプだ。疑問を考えもせずに後に残すのは彼の性格からは有り得ない、有り得ないのだが・・・
(やはり直接こいつから聞かねば話にならんか)
人一人が出来る事には限りがある、自分が出来る事にも限りがある事をジューダスは熟知していた。


(こいつが何故過去に飛んだのか・・・そして何をしようとしているのか、答え次第では強硬手段もやむをえんか)
人の歴史を踏みにじるような事になるならば容赦はしない、ジューダスは男を見据えて静かに呟いた。




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