でも本当は…。
暖かくて優しい日差しが、誰も居ない教室に降りそぞく。
俺はその光景を静かに見ながら、隣を通りすぎる明日から始まる春休みに浮かれるクラスメイト達に。
心のなかだけで、
(休み中いいことあると良いね)とそう願いつつ、セピア色のブレザーの右ポケットに指をいれて…。
がそこそと音をたてるように、スマートフォンを探そうとしたら…。
「ねぇ?こんなところで何をしているの…君みたいな
可愛い子が一人で、誰も居ない教室みてるだけなんて…ほんと良くないなって思うんだ」と、
そう短い黒髪ときりっとした男らしい蒼目のいかにも寡黙
系武人がそう話かけてきたので。
俺は猫のようにつりあがった蒼色の目を大きくさせながら。
「気安く俺に話しかけるな…つうかお前だれだよ!!」
「おっと…見かけに反して中身は強いんだ…そうなんだね…てっきり中身も可愛い姫系かなと思っていたんだけど…でもこれはこれですごく可愛いな」とそいつはそう嬉しそうに笑いながら言ってくるので。
俺はさらにそっけない態度を、彼に見せつけるかのように。
「見た目で、判断すんなよ…そいうの俺嫌いなんだけど」
「っ…それは、ごめんね。
そいう風に言うべきじゃなかったね…そいうの一番わかってるのに、ほんとごめんね」
「なんだよ、そう謝るなよ…というか一番わかるのにって、あんたもそいう経験あるの?」
そうものすごく落ち込んだ顔をしながら、目の前にいる寡黙系武人が言うので。
俺はそんな彼に、こんないかにも強そうな人でも思うんだ…という謎の共感を覚えてしまい。
彼のきりっとした瞳をじっと見つめて、
「…あんたも俺と同じなの?」とそうさっき言った言葉と同じような言葉を再度告げれば。
「そうだよ、騎冬…。私も君と同じように見た目でね、この学校で誰よりも男らしいて思われていて…すごく嫌なんだ」
「…そうなんだ。俺とは逆なこと言われているんだな、みんなから…」
「そうなるね、でも私はね可愛いものと甘いものが大好きだし、むしろ好きな人をずっと遠くからみたり、ぬいぐるみの服を作ったりする事が好きだから…。何で?見た目と全然あってないよ?あと、姫氏原ってなんだよ?どこに姫があるんだよってよく言われるんだ」
そう彼は言いながら、俺の手をぎゅっとつかんで。
まるで訴えかけるように、いや…むしろ騎士に救いを求める姫のように。
「だから、ある意味私も君と同じ状況さ…」とそう俺に言うので。
俺はその言葉に、ある一つの決心を胸に抱き。
まるで、騎士のような立ち振舞いをしながら…。
「わかった、俺あんたのこと護る騎士になるっ!!だから、今日からあんたは俺の姫だ」
「えっ…騎冬それって…まさか」
「ああそうだ、これから三騎冬は同じ境遇の姫を護ることにした!!
だって、俺と同じ思いをする人は増やしたくないから」
俺はそう宣言するかのように言いながら、手をにぎる姫の手をさらにぎゅっとにぎりしめて。
「だから、宜しくな…姫、えっと…名前はなんだっけ…」
「そう言えば、まだ言っていなかったね。私は姫氏原紫士、
一つ下の学年に誰よりも美しくて愛らしい弟がいる事でも有名な姫氏原さ」
姫はそう言いながら、俺の指に挨拶程度の口づけを落とすので…。
俺はその行為を、じっと見つめたまま。
この不思議な出会いに、この世にいるのかすらわからない神に感謝をした…。
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