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「キルリア、いってくるね」




玄関で見送ってくれるキルリアに手を降って外へ出る。そのまま駅へと向かって電車に揺られながら目的地へと向かう。
両親と揉めて数年が経った。
カズキは高校へと進学をした。学校は主にポケモンの研究をしている高校。高校進学を認めた代わりに学校はポケモンの研究に力を入れている高校を選んだのだ。
両親はそれを渋々と受け入れカズキの努力も報われ無事に入学。
高校ではたくさんのポケモンが自由奔放に歩き回り研究室では様々なポケモンが生徒に囲まれて日々観察されている。
だが、ポケモンにストレスがかからないよう設備はポケモンの為に整っており生徒とポケモンは仲良く過ごしている。
そんな高校に通って2年。友達もできて充実した毎日を過ごしている。
少し変わったことといえば…



『いけっ!ガーディ!』


「わうぅ!」


入学祝いに学校から貰ったポケモン。
もふもふの毛にまんまるでも凛々しさがある瞳、炎タイプのガーディ。
学校に通ってる間にこのガーディに関して自分は研究をすることになっている。
キルリア以外のポケモンとはほぼほぼ接点なかったが今はポケモンに恐怖心はなく、このガーディも愛着を持っている。毎日自分の後ろを付いてきてじっと見つめるとわんっと返事をするのだ。
これをかわいい以外でなんと例えればいいのだろうか。



『よーしガーディ、今日も色々なお前を見せてくれよ?』



あぐらをかいてガーディをその中に入れる。
もふもふの毛を撫でながらブラッシングをする。ガーディはこれを喜んで気持ちよさそうに目を細める。大量の毛が抜けて大変だがこのガーディの表情を見ると苦労も苦にならない。
触れ合いながらガーディがどんな性質をしているか、どんな技を覚え、どんな生活をするのか、など調べることはたくさんある。
2年一緒にいるが世に出ているガーディの生態以外のことはなかなかわからない。
このガーディの性格などで誤差が起きる為、なかなか提出したレポートは先生には認められない日々。
悩まされるがガーディのことは好きだから積極的に研究に励もうと思う。



「わう!」


ブラッシング中に飛び掛って来るガーディ。
押し倒されて顔をぺろぺろ舐めてくる。笑ってガーディを剥ぐが鳴きながら尻尾を激しく振っている。
下へ下ろすと足にすりすりと体をこすりつけてぐるぐると回る。今日は格別ご機嫌が良さそうだ。甘えん坊モード全開で一時もそばから離れない。



『あはは、これじゃおもちゃ投げても飛びつきやしなさそうだな』



学校生活を癒やしてくれるガーディと戯れるカズキであった。
その後友達に呼ばれて教授の部屋へと移動すしていった。









「キルリア、風邪引いちゃうわよ」



キルリアが玄関手前の廊下に座り込んでいると母親がそっと羽織を肩にかけてくれた。
カズキの帰りを待つために廊下の端っこに足を抱えて座っているキルリアは表情が暗く母親を一瞥しては下を向いた。すごく寂しそうで今にも壊れそうなその表情に羽織をかけた母親は眉を下げてキルリアの頭を撫でる。
なぜキルリアがこんなところに座り込んで表情を曇らせているのかがわかっているからこそ少しばかりでも励まそうとしているのだ。



「カズキ、学校で研究するのが楽しいみたいね。実績こそ出てないものの色んなポケモンと触れ合うのが新鮮で今までで1番輝いて見えるわ」


「キルゥ……。」



母親はキルリアの隣にしゃがんでキルリアの頭を撫でながら喋る。キルリアは鳴き声を発して返事をする。きっと言いたいことはわかっているんだろうとその返事から察して頭を撫で続ける。
最近のカズキの生き生きとした表情は見たことがないな、と感慨深く考え少しクスッと笑った。
キルリアは変わらずに俯いている。




「キルリアも、カズキのことが大好きならカズキの楽しんでいることを応援してくれたらカズキもきっと喜ぶと思うの。キルリアが寂しいのはわかるわ。お母さんもカズキの帰りがいつも遅くて心配するし寂しいもの。でもね疲れきったカズキのためにご飯を作ったりお風呂を沸かしたりするのは楽しいわ。」


「……。」


「カズキの為を思って待つのも私達家族の役割じゃないかしら」



母親の言葉に顔を上げたキルリアに母親はにっこり笑って頭を撫でていた手を差し出す。
うるうると涙を潤ませて母親の手に自分の手を重ねる。母親がキルリアの手を引っ張りながら立ち上がる。
引っ張られながら立ち上がったキルリアはもう片方の手で目元を擦って母親の手をぎゅっと握った。
先程よりも表情の暗さは無くなっている。
そのまま母親の気遣いで一緒に夕御飯を作り始めることにした。




過去の僕と、彼女(3)


過去の僕と、彼女(5)


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