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サーナイトと出会ったのはカズキがまだ5歳の頃だった。
小学校を目前にし楽しみが募っていた頃、両親がポケモンを連れて帰ってきた。
それが今のサーナイトであるラルトスだった。
ポケモンは両親と出かけていたときに何度か見かけたことがあるがカズキにはどれも怖くてすぐに両親の影に隠れていたため両親は家にポケモンを置くことはなかった。
だがこの日、何を思ったか両親はラルトスを入れたモンスターボールをカズキに渡して投げるように促した。


「これからきっとカズキの友達以上の存在になってくれるよ。」


『友達…以上?』



不思議な感じと不安な気持ちが入り混じりながらボールを投げる。
ぽーんと投げられたボールは1回床にバウンドしてからぱっくりと開く。
光に包まれながら出てきたラルトスに驚きを隠せずカズキはすぐさま両親の足元へと隠れた。
ボールか解き放たれたラルトスは初めて見た景色にきょろきょろと周りを見渡してからカズキの方へと視線を向ける。怖がりながらもラルトスからは視線を外せないカズキとラ ルトスとが目が合う。
おずおずと1歩ずつラルトスが近付く。両親もカズキをラルトスの方へと背中を押す。
緑色の髪の中から覗く大きな目は若干背の大きいカズキを見上げる。
手を伸ばせば届く距離へと近づいてラルトスは微笑む。
その笑顔を見たカズキもこの頃にはもう恐怖は無く、ゆっくりとラルトスの手を握って笑っていた。
両親はほっと一安心をしてカズキの頭とラルトスの頭を撫でた。









『ラルトス!俺の部屋また入っただろう!』


「ご、ごめんなさいマスター…」



カズキが小学校へ入って3年。
ラルトスとの仲は良かったが早めの反抗期へと入っていくカズキはたまにラルトスへ当たることが増えた。
カズキに怒られるラルトスはしゅんとして母親の元へと行って手伝いに専念しながらカズキの気が変わるのを待っていた。
せっせと小さい背を伸ばしてお皿を運んだり洗濯物を運んだり家中を走り回る。
カズキがしてくれなくなった手伝いをするラルトスに母親はよくカズキを叱っていたりしたがいつしか諦めていた。



「ごめんなさいね、ラルトス。いつも雑用ばかりさせちゃって」



ふるふると首を振ってきゅっと母親の手を握るラルトス。
一生懸命伝えようとするが母親の前では決して喋ることはなかった。それでも母親はラルトスのその必死さを理解してくれていた。
母親はいつも通り手伝いを終えたラルトスに大好物のおやつを渡す。
おやつをもらって喜びを隠せない様子のラルトスはリビングのソファの前に座ってソファに寄りかかりながらおやつを食べる。
その頃にカズキはリビングへと来て母親におやつをねだる。
大体こんな毎日がいつも続いている。
カズキはラルトスの向かい側に座っておやつを頬張る。
口の周りに食べカスをつけながら無我夢中で頬張るカズキにラルトスは食べかけのおやつをテーブルの隅っこに置いてカズキの方へと近寄る。
テーブルに置いてあるティッシュ箱からティッシュを取り出してカズキの口元を拭こうとした。その時、


『な、なにすんだよ!!!!!!』



ラルトスの手が近づいた時カズキは顔を赤らめて勢い良くラルトスの手を振り払った。
その衝撃でラルトスは軽く吹っ飛んで尻餅をつく。髪が少し乱れてそこから見えた瞳は酷く悲しげに見えた。
出会った時からカズキは口元を汚したながらよくご飯やおやつを食べていた。母親は家事に忙しくカズキのことはラルトスに任せるようにしていたためラルトスがいつもカズキの口元を拭きながら一緒にご飯を食べていた。
だからこそ今まで通り口元を拭こうとして拒絶されたのだ。ラルトスはひどく困惑していた。
急な怒鳴り声に母親はキッチンから飛び出すように出てきてその場を察した。


「カズキ!ラルトスに当たるのはいい加減にしなさい!あなたの食べ方が汚いからラルトスがいつも心配するのよ!」


『うっせえ!もう自分でできる!!』


言い合う2人にラルトスはぽろぽろ涙を流してカズキの前に立つ。そして頭を下げた。
母親はジトッとカズキの方を見て謝りなさいと口パクで伝える。
カズキは自分の口元をティッシュで拭きながら目を合わせずラルトスの頭を撫でた。










『ラルトスー、行くぞー』



ぽーんとボールが投げられラルトスはわたわたしながらボールをキャッチする。
カズキがあれから少し大きくなった頃、野球好きになってラルトスとキャッチボールをするようになった。
ラルトスは運動能力はあまり良いとは言えないが一生懸命カズキの相手をしていた。



「はっはっはっラルトスはあまり体力がなさそうだね」



ふたりの様子を父親は楽しそうに少し離れたところから眺める。
ボールを顔面でキャッチするラルトスとそれを見て笑うカズキ。まるで兄弟のように見える。



「ほんと、誰かに似たように運動が音痴よね」


にこにこ見ていた父親の隣に家事を終えた母親が嫌味を程々に座った。
照れながら頭を掻く父親。
おーい!と2人に向かってカズキは手を降った。
ラルトスがそんなカズキの隣へ近づこうとしたその時。
ラルトスが急に光りだす。


『うわっ?!ラルトス?!』


「おや…あれは」


「進化だわ…。」


ラルトスが光りだしてその光が消えたとき。
そこにはラルトスに似たポケモンがいた。
髪型が変わって目が見えるようになり、引きずるほどのスカートが短くなって足が見えるようになった。
きょとんとそのポケモンを見るカズキに目の前のポケモンはお構いなしに抱きつく。
父親が少し興奮気味に2人へと駆け寄ってきた。



「おめでとう、ラルトス。いやキルリアって呼ぶべきかな。」


『キルリア?』


「進化したんだよ。キルリアも大人へと近づいたってことかな」


スリスリとカズキのほっぺに自分のほっぺを擦り寄せるキルリアに困惑しながらも悪い気はしないカズキ。
これが初めて見たポケモンの進化だった。
その後はラルトスのときとは打って変わって運動神経が良くなりカズキのキャッチボール相手には不足しなくなったのであった。











『…キルリアおいで』


「どうしましたマスター?」


カズキが中学生に上がった頃。
キルリアは変わらずカズキのお守りをしながら母親の家事の手伝いや父親の趣味の相手をしたりしていた。
その頃にはカズキは反抗期を終えて家族仲も良くなった。カズキはキルリアが部屋に入っても怒ることはなくなり、キルリアはたまにカズキの部屋でまったり過ごすようになった。
それがきっかけでカズキはキルリアと話すことが多くなった。
その日もキルリアはカズキの部屋でカズキがよく読んでいる本を読んでいた。



『ここ、ここに座って』



そう言ったカズキはあぐらをかいて足元を指差す。
そんなカズキにキルリアはきょとんとしながらカズキの方へと近づいてうーんと少し悩んでいる。
キルリアがすぐに来ないことにちょっとムッとしながらカズキは手を伸ばしてキルリアを抱き寄せる。
急に引き寄せられキルリアは体制を崩してカズキのあぐらの上に正座をするように座った。
いつの間にかキルリアよりも大きくなったカズキ。
目線はいつだってカズキのほうが高く、体格も全然変わった。
キルリア抱き寄せるとすっぽりと包み込んでしまう。
ドキドキと胸が高まってどうしたらいいかわからなくなる。キルリアはこのときからカズキを意識し始めていた。されるがままにカズキの服をきゅっと握るとカズキはすっと身体を離した。



『うーん、キルリア足崩しなよ』



そう言ってカズキは軽々とキルリアを持ち上げる。
突然の出来事にキルリアは顔からぼっと火が出るように赤らめてじたばたもがいた。
足が少し開いたタイミングでまた降ろしてより足元も密着する形で座った。
カズキは寄りかかった身体を下半身だけ前にだしてキルリアが座りやすくする。
跨る形になったキルリアは照れすぎてカズキの胸に顔を押し付けて両手で服をギュッと掴む。
そんなキルリアを片手で抱きしめてもう片方で頭を撫でる。
そのまま時間だけが過ぎ、キルリアがチラッとカズキの方を見るとすやすやと眠っているカズキがいた。息をするたびに胸が少しだけ上下をする。その振動がとても心地良い。
だがなんの気まぐれかわからないが唐突にこんな密着するようなことをしてくることにキルリアは困惑が隠せずにいた。
そっと腕を伸ばす。
もうドキドキという鼓動しかキルリアの耳には聞こえないくらい。
無防備に眠っているカズキの頬に触れ、そっとなぞる。
愛しそうにカズキを見つめるキルリアはこの気持ちが何かを知りつつあった。







今の僕と、彼女

過去の僕と、彼女(2)

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