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「サーナイト、いるかしら」



夜中、カズキがぐっすりと眠っている時にカズキの部屋に母親が訪れた。
カズキのそばで眠っていたサーナイトは体を起こして母親の方へと向きなおる。
母親はカズキの方を見てサーナイトへ手招きをする。それを見てサーナイトはカズキの部屋を出た。
そのまま2人はリビングへと移動をして母親はソファへと腰掛け、サーナイトはその側へ正座をした。
事前に用意していたのかテーブルにはコーヒーとサーナイト用のポケモンのぎのみジュースが置いてあった。母親はそれをサーナイトへと差し出して自分もコーヒーに一口飲んだ。



「サーナイト、カズキの面倒をここまで見てくれてありがとね。あの子も立派に育ったわ」



「………。」



「最初ポケモンを怖がって家にポケモンを連れてくることをたくさん悩んでたのが嘘のように今では自分からポケモンの研究をしたいなんて言い出すんだからビックリしちゃったわ」



「………。」



「でもね……もっと予想外だったのはね、あなた達がポケモンとトレーナー以上の関係になりつつあることよ」



「………っ」



「あなた達がすごく信頼関係あることは良いことよ。羨ましいくらい。でもねポケモンとトレーナーはそれ以上にはなってはいけないの。カズキにもきっとこれから旅をして様々な出会いがあるでしょう。そうしたら人間の恋人ができるかもしれない。あとは…大体想像できるかしら…」



サーナイトはここまでの母親の話を聞いて何を言いたいかはわかっていた。
母親も何度も足を組み替えたり言葉を詰まらせたりしてだいぶ言葉を選んでいるのがわかる。
スカートをきゅっと掴んで下を向く。
カズキのことは好きだし触れ合ったりすると幸せな気持ちに包まれ、離れていると寂しくてすぐに会いたくなる。
これはポケモンではありえない感情なのはわかっている。
わかっているからこその戸惑いもある。
瞳を震わせて固まっていると母親はソファから降りてサーナイトの肩にゆっくりと手を置く。



「…いきなりカズキから離れろとは言わないわ。ただ、カズキのそばにいるポケモンであってほしいの。パートナーとしていてほしいの。それは、旅をしている間に少しずつでもいいから作っていってほしいの」



母親はそれだけ言って部屋をあとにした。
残されたサーナイトは瞳からポロポロと涙を流して蹲っていた。
静まり返った部屋の中にはサーナイトの噛み殺した泣き声だけがただただ悲しく響いた。




カーディガンと彼女(1)




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