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第3章

 ゴールド達がPCCの玄関をくぐると、頼もしい相棒が飛び込んできた。

「ピカチュウ~!」

ゴールドとクリスはその体を嬉しそうに抱き留めた。すっかり元気になったピカチュウは二人に会えなくてよほど寂しかったのか、頬ずりをして甘えている。

「おかえり。何か分かったか?」

エーフィとブラッキーを連れてマサキがロビーにやってきた。

「ただいま、マサキさん」
「色々分かりましたよ。まずフリーザーと三聖獣は……」

とクリスが説明しようとした時、そっと隣に視線を移した。案の定ゴールドの頭からすでに煙が出ている。
 だめだこりゃ、クリスは頭を抱えてゴールドの肩を叩いた。

「私が説明しておくから、ゴールドはピカチュウと散歩してきて」
「は、は~い」

回れ右すると、肩にピカチュウを乗せたままゴールドは再びコガネの街へ出た。


 ラジオ塔ハイジャック事件解決から一週間近くが経過し、元の活気づいた街並みにゴールドとピカチュウは嬉しさを隠せない。まるで初めて来た街のように、二人は楽しそうに練り歩いた。そんな時、聞き覚えのある声に呼び止められる。

「あ、ゴールド君!」

それは育て屋の若奥方だった。
買い物袋を持つ彼女は、街で二人の姿を見かけて思わず声をかけてしまったようだ。

「久しぶりね。また強くなったんじゃない?」
「いやあ、えへへ」

屈託ない賛美にゴールドとピカチュウは思わず照れ笑いを浮かべる。まるで親子か兄弟のような二人に、若奥方は更に笑みを深めるのだ。

「あ、そうそう。例の卵はどうだったかしら?」
「げっ!」
「無事に生まれた?」
「え、ええ、そりゃあもう……。元気いっぱいで。」

(そういえばウツギ博士にピチューの事報告するのすっかり忘れていた)
思わず視線をそらしたゴールドに若奥方は首を傾げる。

「どうしたの? ゴールドくん」
「い、いや! おいら用事を思い出したんで! さようならー!」

ゴールドはポケギアを片手にその場から逃げるように走っていった。


『――それで、私に届けるはずだった卵は孵り、そのピチューを君が預かっていると』

ポケギアから聞こえてくる声は思ったより穏やかだった。というより怒る気も失せているようだった。

『まったくもう。それならそうともっと早く連絡をくれれば良かったのに』
「ご、ごめんなさい。ウツギ博士……」

育て屋のロビーのソファでゴールドはポケギア越しに頭を下げた。
 久しぶりに話すウツギ博士だが、今回ゴールドが電話を掛けた事には理由がある。
 ゴールドはピチューとピカチュウに関する今までの事を全て話した。クリスと違って説明が苦手だと自負しているゴールドだが、ウツギ博士はそれを穏やかに聞いてくれた。
 全てを聞き終え、ウツギ博士は小さく唸る

『……難しい話だね。不思議なポケモンの卵、そこから生まれたピチューがピカチュウに進化し、未来でフリーザーや三聖獣と関わり、その情報を記憶して過去に送られて来る。そしてその子を君が受け取った、と』

なあ、博士。とゴールドは目を伏せる。

「ポケモンの卵を最初に発見したのはウツギ博士だよな? どうやって見つけたんだ?」
『え、突然どうしたんだい?』
「そういえばポケモンの卵って当たり前のことなのに、”不思議な卵”ってどういうことなんだろうって思ったんだ。それで、そもそもポケモンの卵っていつから“当たり前”になったんだろうってさ」
ゴールドの問いにウツギ博士は困ったように笑ってしまった。
『はは、そうだね。それもそうだ』
「博士?」
『いや、なに。卵の発見に関しては、私もいろいろあってね』

ゴールドはポケギア越しに、彼の複雑な心持ちを理解することはできなかった。首を傾げていると、ポケギアからいつもと変わらない優しいウツギ博士の声が帰ってきた。

『ゴールド。不思議な卵から孵ったと言っても、ピチューもピカチュウも君にとって大切な友達だ。そうだろう? 今まで通り接してあげてくれ』
「うん! ありがとな、ウツギ博士!」

ゴールドの元気な返事を聞き、ウツギ博士もポケギア越しから小さく笑う。ゴールドは博士との再会を約束し、通話を切った。
 育て屋を後にし、雲一つない青空に向かって大きく体を伸ばす。

「よーし! 見つけてやるぜ、三聖獣!」

肩にのるピカチュウも元気よく鳴き、それに応えた。
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