このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

その他

また、壁外調査がやってくる。
どれほどの巨人と遭遇するか、想像すらつかない。
だからこそ、出発を明日に控えた今はゆっくり身体を休めておかなければならない。
頭ではわかっているのだけれど。
ついさっき、幼なじみが部屋を抜け出す気配がした。

「……エレン、眠れないの?」

突然わたしが背後から声をかけたものだから、彼の肩がびくりと震えた。
部屋を抜け出したこと、気づいていないとでも思っていたみたい。

「な、なんだよミカサ……起きてたのかよ。」
「エレンこそ。寝なくてはいけないのに、どうして。」

なんでもいいだろ、とそっけない返事をされると思っていた。
わたしに心配されるのを、エレンはあまり良く思っていないみたいだから。

「……ちょっと、思い出してた。」
「なにを?」
「……最初の、壁外調査のこと。」

初めて女型の巨人と戦った日のこと、とわたしは解釈したけれど。
その表情を伺う限り、今のエレンはそうは思っていないみたい。
だとすれば、仲間を失なった日、だろうか。
わたし自身、詳しくは知らない。
でも、あの日リヴァイ班が壊滅だったのは周知の事実。

「あの日……オレが選択を間違ったから、リヴァイ班は……」
「それば違う。エレンのせいでは」
「そうなんだよ!だから、今度間違ったらオレは……」

固く握られた拳に、力が込められるのがわかった。
それだけ彼がわたしたち仲間のことを大事に思ってくれているのが、嬉しかった。

「……大丈夫。わたしは死なない。エレンも、わたしが守る。」

そっと彼の拳に、自分のそれを添えた。
この約束を違えるつもりもないし、そもそも守れる自信はある、と伝える代わりに。

「……お前にそんなこと言われちゃ、オレ立場ないじゃん。」
「でも、事実。」
「そうだとしても。女に守られるとか、カッコ悪い。」

そう苦笑するエレンの表情が、少しだけ和らいでいた。
緊張、少しは溶けたのだろうか。

「ミカサも、みんなも。オレが絶対守る。……先に言わせろ、ばか。」

それは、不意打ちだった。
軽く腕を引かれたかと思えば、彼の腕の中にすっぽり収められていて。
触れるだけの、キスをされた。

「エ、エレ……」
「ほら、もうそろそろ寝るぞ。寝坊したらリヴァイ兵長になにされるかわかんねーぞ。」

そっとわたしの手を引く彼は、いつになっても変わらない。
ふと、笑みがこぼれた。
エレンはわたしが守る。絶対に。
いつもと同じ決意をまた、胸に深く刻んだ。
4/14ページ
スキ