IDOLiSH7
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「ボクは絶対に認めないよ。」
それだけ吐き捨てて、事務所を飛び出した。
事の発端は、ほんの数十分前のこと。
次の仕事の打ち合わせをモモやおかりんと共に終えて、さぁ帰ろうというところで、
いつになくモモが神妙な面持ちで話がある、と切り出した。
「今まで黙っててごめん。」
そう短く前置きをして、ボクに頭を下げるモモ。
そして、そのまま絞り出すように、カノジョができました、と告げた。
「……は?」
状況も、言葉の意味も到底理解できるものではなくて、素っ頓狂を通り越して怒りを含んだ返事をしてしまった。
しかもよくよく話を聞いてみれば、どこの馬の骨ともわからないそのカノジョとやらとはしばらく前からすでに付き合い始めているし、
おかりんも相手の事務所も公認だいうじゃないか。
何も知らなかったのはボクだけだということが、余計に腹が立つ。
顔の広いモモのことだから、どこで出逢ったかまではどうでもいいけれど、
付き合うとかそんな大事なことをボクに相談のひとつもしないなんて。
隠し事を抱えながら、今の今まで何事もなかったように笑うなんて。
手にしていた打ち合わせの資料を、思わずぐしゃりと握った。
「ユキ、ごめん……。本当はもっと早くに話すつもりだったんだけど……」
「言い訳なんて聞きたくない。」
自分でも驚くほど冷たい声が出た。
芝居で使うことはあっても、まさかモモに対して使う日が来るなんて、誰が予想しただろう。
今は申し訳なさそうに歪む相方の顔を後目に、冒頭の言葉を投げつけて、
わざとうるさい音が出るようにドアを閉めた。
* * *
「……最悪。」
五線譜をぐしゃぐしゃに丸めて、壁にぶつける。
イライラして、曲を作ろうにもいい音なんて何ひとつ出てこない。
危うくギターすら投げそうになって、何とか踏みとどまった。
あれからモモとはもう一か月近くまともに話をしていない。
さすがに仕事中は、すっかり身にしみついてしまったから
今までと変わらず漫才染みたやりとりを見せられるけれど、
いざスタジオを出れば、お互い顔を見ることなく早々に帰路につく日々。
テレビをつければ、モモ熱愛報道であふれている。
件のカノジョは、最近人気の出てきた歌手で、お互いに真剣な交際をしています、というセリフは散々聞いた。
悪態をつくようにため息をつくと同時に、インターホンが鳴り響いた。
「ひどい顔だな。」
数センチドアを開けただけで、全てを察してしまうのは一人しかいない。
「……バン、何しに来たのさ。」
「お前が腐ってるだろうなと思って。」
余計なお世話だ、と眉根を寄せたところで全部お見通しなんだろう。
そうでなければわざわざバンが出てくるはずがない。
「聞いたよ、モモくんとのこと。」
やっぱりその話か。
触れてほしいような、触れられたくないような。
「本当にお前は素直じゃないな。」
「……うるさい。」
小言言うだけなら帰ってと不貞腐れると、そういうところがいけないんだと軽い手刀が降ってきた。
……分かってる。
今回のことは全部ボクがごめんって一言口にできれば終わる問だって。
でもそれができればここまで拗れていないのも事実で。
「大丈夫だよ。お前が思ってるよりもずっと、モモくんはお前のことも大事に思ってるから。」
「……知ってるよ。そんなことくらい。」
「ならいつまでも意地張るなよ。」
「それは……」
言い淀むと、もう一度手刀が振り下ろされた。
さっきよりも痛い。
「いい加減にしろ、ユキ。」
バンの眼差しから冗談が消えたのがわかったから、次の言葉が出なかった。
本当に、ボクはいつまでたってもバンには敵わないな。
「……わかった。話すよ、モモと。」
「やっと言ったな。ということだから、そろそろ出てきていいよ。」
「……は?」
なぜか突然背後に声をかけたかと思えば、少しな晴れたところからひょっこりモモが顔を出した。
いつの間に入って来たのだろう。
いや、きっと最初から聞いていたのだ。
そんなことにすら、ボクは気づいていなかった。
「……ユキ、ごめん……!!」
あの時と同じように、モモは深々と頭を下げる。
ともすれば地面にめり込むほどの土下座すらしそうだ。
「……頭、あげて。」
「でもっ……!」
「いいから。」
ゆっくりと顔が上がって、視線が交わるのはいつぶりだろうか。
ずっと一緒に歩いてきたのに、そんなことを考えてしまうなんて。
「謝るのはボクの方だよ、モモ。」
突然カノジョができたなんて言われて、びっくりしてしまった。
なんの相談も、素振りもなかったから。
ボクたちの関係はそんな儚いものだったのか、とか。
隠し事するなんて、とか。
それ以前に、モモがボクから離れていくんじゃないかということが、怖かった。
「だから……意地を、張って……ごめん。」
あんなにも喉の奥で閊えていた言葉は、案外すんなりと出てきた。
モモが今にも泣きそうな顔をしていたせいかもしれない。
そんな顔をさせるのがボクじゃだめだ。
「許して、とは言わない。ただ……これからもRe:valeでいてほしい。」
「そんなのっ……あたりまえだよ!!」
オレがいつ辞めるって言ったよ!
ユキが嫌だって言ったって、辞めてあげない!!
涙で声を震わせながら叫んだモモの言葉は、何よりも嬉しかった。
やっぱりモモは、世界で一番かっこいい。
お互いに瞳を潤ませながら向け合った笑顔は、今までで一番いい顔をしていたに違いない。
「今度ユキにもカノジョのこと紹介するよ。」
「え、会ったら小姑みたいにいじめるかもしれないけど、いい?」
「もー!!ユキったら!!そりゃないよー!」
今さら何を言っても遅いよ。
ボクのモモを託すんだから、それくらい覚悟の上でしょ?
それだけ吐き捨てて、事務所を飛び出した。
事の発端は、ほんの数十分前のこと。
次の仕事の打ち合わせをモモやおかりんと共に終えて、さぁ帰ろうというところで、
いつになくモモが神妙な面持ちで話がある、と切り出した。
「今まで黙っててごめん。」
そう短く前置きをして、ボクに頭を下げるモモ。
そして、そのまま絞り出すように、カノジョができました、と告げた。
「……は?」
状況も、言葉の意味も到底理解できるものではなくて、素っ頓狂を通り越して怒りを含んだ返事をしてしまった。
しかもよくよく話を聞いてみれば、どこの馬の骨ともわからないそのカノジョとやらとはしばらく前からすでに付き合い始めているし、
おかりんも相手の事務所も公認だいうじゃないか。
何も知らなかったのはボクだけだということが、余計に腹が立つ。
顔の広いモモのことだから、どこで出逢ったかまではどうでもいいけれど、
付き合うとかそんな大事なことをボクに相談のひとつもしないなんて。
隠し事を抱えながら、今の今まで何事もなかったように笑うなんて。
手にしていた打ち合わせの資料を、思わずぐしゃりと握った。
「ユキ、ごめん……。本当はもっと早くに話すつもりだったんだけど……」
「言い訳なんて聞きたくない。」
自分でも驚くほど冷たい声が出た。
芝居で使うことはあっても、まさかモモに対して使う日が来るなんて、誰が予想しただろう。
今は申し訳なさそうに歪む相方の顔を後目に、冒頭の言葉を投げつけて、
わざとうるさい音が出るようにドアを閉めた。
* * *
「……最悪。」
五線譜をぐしゃぐしゃに丸めて、壁にぶつける。
イライラして、曲を作ろうにもいい音なんて何ひとつ出てこない。
危うくギターすら投げそうになって、何とか踏みとどまった。
あれからモモとはもう一か月近くまともに話をしていない。
さすがに仕事中は、すっかり身にしみついてしまったから
今までと変わらず漫才染みたやりとりを見せられるけれど、
いざスタジオを出れば、お互い顔を見ることなく早々に帰路につく日々。
テレビをつければ、モモ熱愛報道であふれている。
件のカノジョは、最近人気の出てきた歌手で、お互いに真剣な交際をしています、というセリフは散々聞いた。
悪態をつくようにため息をつくと同時に、インターホンが鳴り響いた。
「ひどい顔だな。」
数センチドアを開けただけで、全てを察してしまうのは一人しかいない。
「……バン、何しに来たのさ。」
「お前が腐ってるだろうなと思って。」
余計なお世話だ、と眉根を寄せたところで全部お見通しなんだろう。
そうでなければわざわざバンが出てくるはずがない。
「聞いたよ、モモくんとのこと。」
やっぱりその話か。
触れてほしいような、触れられたくないような。
「本当にお前は素直じゃないな。」
「……うるさい。」
小言言うだけなら帰ってと不貞腐れると、そういうところがいけないんだと軽い手刀が降ってきた。
……分かってる。
今回のことは全部ボクがごめんって一言口にできれば終わる問だって。
でもそれができればここまで拗れていないのも事実で。
「大丈夫だよ。お前が思ってるよりもずっと、モモくんはお前のことも大事に思ってるから。」
「……知ってるよ。そんなことくらい。」
「ならいつまでも意地張るなよ。」
「それは……」
言い淀むと、もう一度手刀が振り下ろされた。
さっきよりも痛い。
「いい加減にしろ、ユキ。」
バンの眼差しから冗談が消えたのがわかったから、次の言葉が出なかった。
本当に、ボクはいつまでたってもバンには敵わないな。
「……わかった。話すよ、モモと。」
「やっと言ったな。ということだから、そろそろ出てきていいよ。」
「……は?」
なぜか突然背後に声をかけたかと思えば、少しな晴れたところからひょっこりモモが顔を出した。
いつの間に入って来たのだろう。
いや、きっと最初から聞いていたのだ。
そんなことにすら、ボクは気づいていなかった。
「……ユキ、ごめん……!!」
あの時と同じように、モモは深々と頭を下げる。
ともすれば地面にめり込むほどの土下座すらしそうだ。
「……頭、あげて。」
「でもっ……!」
「いいから。」
ゆっくりと顔が上がって、視線が交わるのはいつぶりだろうか。
ずっと一緒に歩いてきたのに、そんなことを考えてしまうなんて。
「謝るのはボクの方だよ、モモ。」
突然カノジョができたなんて言われて、びっくりしてしまった。
なんの相談も、素振りもなかったから。
ボクたちの関係はそんな儚いものだったのか、とか。
隠し事するなんて、とか。
それ以前に、モモがボクから離れていくんじゃないかということが、怖かった。
「だから……意地を、張って……ごめん。」
あんなにも喉の奥で閊えていた言葉は、案外すんなりと出てきた。
モモが今にも泣きそうな顔をしていたせいかもしれない。
そんな顔をさせるのがボクじゃだめだ。
「許して、とは言わない。ただ……これからもRe:valeでいてほしい。」
「そんなのっ……あたりまえだよ!!」
オレがいつ辞めるって言ったよ!
ユキが嫌だって言ったって、辞めてあげない!!
涙で声を震わせながら叫んだモモの言葉は、何よりも嬉しかった。
やっぱりモモは、世界で一番かっこいい。
お互いに瞳を潤ませながら向け合った笑顔は、今までで一番いい顔をしていたに違いない。
「今度ユキにもカノジョのこと紹介するよ。」
「え、会ったら小姑みたいにいじめるかもしれないけど、いい?」
「もー!!ユキったら!!そりゃないよー!」
今さら何を言っても遅いよ。
ボクのモモを託すんだから、それくらい覚悟の上でしょ?